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サラッと触れる、アール・デコ

 直線的で幾何学的なモチーフ(パターン)を見ると、アール・デコと捉えてしまう。
すっきりとしていて合理的な装飾様式だ。

 1925年に開催されたパリ万国装飾美術博覧会(正式名称は「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes)、省略してアール・デコ博といい、この略称にちなんで一般に「アール・デコ」と呼ばれるようになった。
またアール・デコは「1925年様式」と呼ばれることもある。

(Source:artnet)

 なんと言ってもアール・デコの特徴は抽象的な幾何学模様とコントラストの強い色使いにある。
アール・ヌーヴォーの優美で曲線的な植物や女性のフォルムに対し、アール・デコは自動車や船のフォルム、またそのパーツであるエンジンや歯車といった機械的なモチーフが見られる。

 前時代のアール・ヌーヴォーの装飾から戦後のモダンデザインへの移行(コストカットが要因の一つ)と共に大量生産のできるアール・デコがヨーロッパ、アメリカ(ニューヨーク)を中心に1910年代半ばから1930年代に流行した。


ファッションに見るアール・デコ

 女性の洋装が大胆に変わり、コルセットを排したドレスを発表したポール・ポワレが直線的なスタイルを真っ先にモードに取り入れた。

(Source:松岡正剛の千夜千冊 - 1528夜)

また、体の線を強調しないのがアール・デコ スタイルの認識となった。
過剰な装飾は排除され、機能的でシンプルなドレスが主流となり、基本的なスタイルはと言うと、直線的な筒型・ウエストを細くしない・通常より低い位置にあるウエストが特徴であった。
他には、パンプスのヒールにもアール・デコのモチーフが装飾されていた。
 1926年には、VOGUE誌にてココ・シャネルがファッション業界に衝撃を与えたリトルブラックドレスを発表し、20年代の「イット・ドレス」として一世風靡した。

(Source:Pinterest)

 黒い服=喪服という概念を払拭し、新しい社会(価値観)にフィットしたモードなデザインであり、今では黒いドレスは定番のものとなっている。


建築に見るアール・デコ

 1920年代当時、新時代として都市整備が大がかりにスタートしたニューヨーク(マンハッタン)では、超高層ビルを建てる技術を持ち、次々とビルが建っていった。
アール・デコ建築と言えば、ニューヨーク摩天楼のなかでも特徴的なクライスラー・ビルディングエンパイア・ステート・ビルディング等が見られる。

(Source:Historias de Nueva York)

 クライスラー・ビルディングはオフィスではあるが、内部までアール・デコの装飾が見られ、エレベーターの装飾は圧巻だ。

(Source:Pinterest)

また、日本ではフランス人デザイナーが設計した東京都庭園美術館や、垂直の直線を強調した伊勢丹がアール・デコ建築と言える。
伊勢丹がアール・デコを意識していたと思ってもいなかったので調べていて驚いた。いつも地下通路を通って伊勢丹に入るのがほとんどだったのだが、次に新宿に訪れる際には地上からその外観をじっくり見てみたいと思う。


インテリアに見るアール・デコ

 当時の家具はと言うと、大量生産を考え、合理性や機能性を重視したシンプルなデザインが特徴的だ。また、シンメトリーなデザインも特徴の一つで家具だけでなく照明等の調度品にもシンメトリーが徹底されていた。

(Source:Pinterest)

加えて、イスやソファには曲線を効果的に取り入れたデザインが見られる。

(Source:Pinterest)

 更に上質なアール・デコインテリアと言えば、ゴージャスさとエレガンスさが融合し煌びやかな幾何学的な模様が装飾され、富裕層の間で流行していた。
当時のインテリアデザインは、今日に継承され影響を受けていると言っても過言では無いだろう。


アートに見るアール・デコ

 アートと言っても今回はポスターに限って見ていこうと思う。
平面に描かれた当時のポスターは、簡潔さと合理性を目指した生産と消費を活性化させ、力強くスピード感や巨大な存在感が感じられる。
それらの中でも、アドルフ・ム−ラン・カッサンドルが手がけたポスターは目にした人もいるのではないだろうか。

(Source:viagem)

キュビスムのような幾何学形態を多用した彼のデザインはアール・デコの流行と相俟って相乗効果を生んでいたように思える。
また、タイポグラファーとしての一面もありPeignotやBifur等のタイポグラフィーの生みの親である。加えて、Yves Saint-Laurentのロゴも彼が作り出したのもだ。

(Source:Pinterest)


 そんなアール・デコの時代も、世界恐慌やル・コルビュジェ、ドイツのバウハウスが提唱する機能主義の活発な動き等も影響して、徐々に衰退していき過去の悪趣味な装飾と捉えられ評価されることもなくなってしまった。
しかし、1966年にパリで開催された「25年代展」以降、モダンデザイン批判やポスト・モダニズムの流れの中で再評価が進められてきた面もある。

 今日では、古き良きデザインとしての評価の方があるのでは?と個人的に思ってしまう、アール・デコというカルチャー。
映画・華麗なるギャッツビーの公開以降、アール・デコというデザインを再認識、注目された人もいるだろう。
 もしかしたら、近い未来でアール・デコが時代を彩る時がまた来るのかもしれない。。


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