フランスは環境金融先進国か

私が運営委員を務めている日本サステナブル投資フォーラムで、ESG投資についての世界的なオンラインメディアであるResponsible Investorの記事タイトルを7月より一部日本語訳しています。

特に気になったのはフランスのエネルギー転換法173条に関する記事です。同条は投資家にESG要因の投資への考慮、およびポートフォリオに属する企業が排出する温室効果ガスへの報告を求めています。特に後者については脱炭素経済への移行を推進するものとして、2015年の成立当時には大きな関心を呼び、日本でも有識者がベストプラクティスとして称賛するほどでした。

しかしそれから3年が経ち、その遵守状況が発表されましたが、その結果は惨憺たるものでした。48ある主要な金融機関の約半数が同条の求める要件を満たさない報告をしただけでなく、うち3社は一切の情報開示を行わなかったのです。同条はいわゆるコンプライ・オア・エクスプレイン型の規制で、同条の遵守を表明した企業はその要件を満たした開示をしなければならない一方、不遵守を表明した企業はそれがふさわしい理由を説明しなければなりません。

しかし温室効果ガスの削減が世界的な要求事項となる中、不遵守企業がそのスタンスを正当化する理由を挙げるのは至難の業です。それが先述の説明なしに一部、または全部の開示要件を満たさないという事態を招いたといえます。

同条の精神自体は素晴らしいものであることは言うまでもありませんが、その精神が実務者にどこまで伝わっていたのかには疑問が残ります。今後どのようにこの事態をテコ入れするのか、対応が注目されます。

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