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【イベント報告】北海道のオモシロい場の作り方~移住ドラフト会議の仕掛けとその後~

あけましておめでとうございます!
北海道移住ドラフト会議のクロイです。
さてはて、伝説の北海道移住ドラフト会議からはや2か月。その後どうなったのという話はもちろん、ドラフト会議の主催メンバーがみんな、コミュニティづくりやコミュニティスペースなど、ハード&ソフトな「場づくり」をしていたのもあって、ボランティアメンバーの一人だった山下航希くんがトークイベントを開催してくれました。詳細はコチラです。
このエントリーはそのトークセッションを一部抜き出して書き起こしています。
聴き手:山下航希
話し手:黒井理恵、柴田涼平
場所:World Living Room

<このnoteの目次>
・北海道移住ドラフト会議の価値とその後
・「場づくり」で大事な、継続とデザイン
・ゆるやかな、ちょっと開いた場をつくる
・なぜ、私たちは「場」をつくるのか
北海道移住ドラフト会議をまったく知らない方はこちらを見るといいかも
北海道移住ドラフト会議2018公式ウェブサイト
同上 faebookページ、 twitter
※北海道移住ドラフト会議の様子と記事 朝日新聞
※道東コネクトnote 北海道移住ドラフト会議2018レポート
※黒井振り返りnote 「北海道移住ドラフト会議終わりました。」

■北海道移住ドラフト会議の価値とその後

山下:北海道移住ドラフト会議はお二人にとって一体どんな場でしたか?

黒井:とても勉強になりました。私はイベントを設計するとき、自分の想いや成し遂げたいもの、参加者の気持ちに寄り添って、オーダーメイドで設計するんですが、北海道移住ドラフト会議は「移住ドラフト会議」という壮大なコントの「ハコ」の中でやるんですよね。
その「ハコ」の中でも特にすごいなと思ったのは、きちんとした場で(ホテルモントレエーデルホフの荘厳な会場で、アナウンサーのいい声で自分の名前が呼ばれるような)、企業や自治体から移住検討者が「選ばれる」という設計。日常生活や就職活動・転職の場面で個人が、あんなに劇的に「あなたに来てほしい!」と直接選ばれることってほとんどないじゃないですか。この設計がものすごい感動を生み出していました。

柴田:僕がすごいなと思ったのは、イベントの最中に「鹿児島移住ドラフト会議」のペーさん(「移住ドラフト会議」を始めた方)がみんなの前で話してくれたんですよ。

「いいですかみなさん。これは『壮大なコント』なんです。みなさんもそのコントの出演者です。ですので、指名選手が被った時には「お!」「おお~」「おおおお~!!!!」と指名が重なるごとに声を大きくさせていって、いいリアクションしてくださいね」

って。参加者に練習させるんですよ。なんなら「声が小さい!」とかいって。実行委員側がイベントに来てくれた人にコントを強要させるってないじゃないですか。普通に考えたらやばいんですよ。でもこれによって、全員でこのイベントを創っていきましょうという雰囲気ができていったんです。これは、ほんとうに新しいスタイルのイベント、というか「場」でしたね。

山下:移住ドラフト会議が10月末で、それから2か月経ちましたが、その後見えてきた成果はありますか?

黒井:イベント当日に生まれた、ボランティアも含めた主催者側と球団・選手の一体感がいまも効いています。ドラフト会議後は、「キャンプイン」といって指名選手が球団を訪れる機会を持っているんですが、それがどんどん進んでいますね。
おもしろいのは、浦河町のキャンプインになぜか札幌の企業の担当者が遊びに行ってたりとか、札幌にキャンプインしていた選手が帰りについでに大空町によってキャンプインしていたりとか、本当のドラフト会議だったら完全NGなんですけど(笑)、球団も選手もみんな仲間になっているんで、お互いに連絡取り合いながら、改めて会い直しているんですよね。球団、選手、主催者が見れる非公式のfacebookグループがあって、とても活発に情報交換されています。

柴田:「関係人口」っていう言葉はよく聞くけど、最近「強制関係人口」という言葉が出てきて。

黒井:「共生」?

柴田:いえ、Forceのほうの「強制」。北海道はそういうの大事なんじゃないかって。なんだかんだいって、そこそこ田舎だと、ムリクリでも、押しつけがましく「やろうよ!!」「来いよ!!」というのが必要じゃないかって。その強制から始まって、それが継続していくと「共生」に転換していくのかもっていう話です。

黒井:でも、それはデザインが必要だよね。だって、町内会とかの強制は機能してないじゃない。その強制をけん制して近づかない、入らない。移住ドラフト会議はこの「強制」がうまくデザインされているから入ってくるんだよね。

柴田:ドラフト会議は強制ですよね(笑)。 選手も指名されたら絶対関係を持たなきゃだし、球団も30人の選手の中から絶対選ばなきゃならない設計じゃないですか。なかなかの強制ですよ。強制的に選ばれ、選ぶ。でもそれがきっかけで、「標津町・・・昨日まで知らなかった町ですが、一度行ってみたいと思います!」とかなって、それが継続していっている。

※「強制関係人口」の参考:「関係人口の次。」藤本智士さんのnoteより

黒井:ドラフト会議は「楽しい」が前面に出たデザインだよね。私はこんな風に「楽しさ」を前面に押し出した遊びのある場はあんまりつくらないので、そんな意味でもとにかく勉強になりました。最初、ドラフト会議の企画運営に誘われたときに正直「こんな遊びなのか本気なのかわからない場って意味あるのかな」って思っていました。でも、こうして参加者全員のエネルギーを楽しさ、オモシロさからぐっと高めていって、そこから始まることもあるんだなと。

↑いろいろと強制させたメンバー
photo by Takuro Nakanishi
(ごめんなさい勝手に拝借しました)


■「場づくり」で大事な、継続とデザイン

山下:いま、少しドラフト会議の話題から「場」の話に移ってきたので、そのあたりの話を聴いてみたいと思うんですけど、お二人が場をつくるうえで気を付けている点はありますか。

黒井:「場」って言葉はとても漠然としているけど、おそらくイベントみたいな場(eg.北海道移住ドラフト会議)と、コミュニティとしての場(eg.黒井が運営するコミュニティスペース「なにいろかふぇ」)と大きくは二つあると思います。
私は「イベントの場」はコミュニティを持続させるためのツール・機能だと思っているんです。なので来た人がつながる、何かを生み出して次に進めるなど、その後も継続して続いていくことを意識していますね。
あと、「何のためにやるか」「なぜやるか」も大事です。なにいろかふぇはいろんなイベントがたちがっているんですが、名寄に住んでいる人が「自分がやりたい」というものを実現していくことに主眼を置いています。なにいろかふぇの目的は「街をよく知る」「自分の街を自分で楽しめる人になる」ということなので、これが実現できるイベントを行っています。

柴田:価値ってどうやったら生まれるんだろうって考えるんですが、価値って「4D(3次元+時間)」の世界から生まれるんだと思うんです。単発でやるような、時間という軸が加わらないものは無価値だなと。ハードでもソフトでも、継続していくことによって価値が生まれていく。
そしてデザインも大事です。そのためにはどんな人に来てほしいか、来た人がどう思って帰って欲しいかをとことん考えます。
例えば、ここのWayaは25歳女性、赤とかピンクの洋服を着ていて、大学時代にバックパッカーをしながら海外旅行した経験を持っていて、入社3年目で最近また旅行熱が燃え上がってきて・・・ともっともっと具体的に来る人をイメージして、その人のためにどんなことが提供できるかを考えています。価値を考え抜いて、デザイン設計をしっかり考え、丁寧に届けることが大事だと思っているからです。

黒井:誰に来てもらいたいか、どんな話をしたいかはトコトン考えるよね。今日も山下君と事前に打ち合わせしてるんですけど「テーマが広すぎる」ってダメだししてるんですよ。あなたは一体何が知りたいの?どんな人に来てもらいたくて、その人たちにどんな風になってもらいたいの?と。
今日は私が主催の場ではないんでやってませんけど、不特定多数の人が参加してくるイベントや場の時には、私はfacebookの「参加」の人の全員のプロフィールや投稿を見たりします。なるほど、こういうのに興味がありそうな人が多いから、テーマはもう少し絞っていこうかとか、イベントに慣れてる人が多そうだから対話時間長くしようかとか、公務員が多いからアイスブレイクを丁寧にしてロジカルな話をしようとか、調整するんです。結局、そこまでやらないと満足度が高まらないんですよ。
今回のテーマは「北海道のオモシロい場」でしたけど、私なら「北海道」っていうキーワードいれないかな。すでに北海道に住んでいる人たちが来るんだから、「北海道」っていうキーワードには別に惹かれないんじゃないかなと。でフタを開けてみると、今回は道外出身者が多いですよね。それがこの「北海道」っていうキーワードを入れた結果なのかもしれない。

柴田:僕、「場なんて作っても人なんてつながらない」っていうnoteを書いたことがあるんですよ。場なんてただのハコですから。どんなに内装がおしゃれでもそれだけじゃ人なんかつながらないんです。僕が場に必要だと思っているのは、ファシリテーター、共通項目、0から1を容易にする、空間の広さを考える、の4つ。
例えばこの人とあの人と僕がつながっていて、話をしながら二人の共通項目を引き出してあげて、対話の中でファシリテーションをする。ここのスペースも30人だと最初は狭く感じるかもしれないけど、時間がたって雰囲気が緩むと、この狭さが逆に心地よくなって、話やすくなったりするんです。人と人がつながる潤滑油のような役割を担えないなら、場を作っても仕方がないと思っています。

■ゆるやかな、ちょっと開いた場をつくる

黒井:場づくり、コミュニティづくり、まちづくり、っていう言葉ってまあ違和感ありますよね。面倒なんで使ってますけど。コミュニティは立ち上げる・作るものでなく、作られていくもの、立ち上がっていくものなんです。ただ、コミュニティが作られていくためには、ちょっとしたきっかけは必要なんです。それが「場」で、その場とファシリテーションのデザイン設計次第で人が集まり、また集まり方や集まる人が変わってくるんです。

柴田:自然発生していくコミュニティは新陳代謝も大事ですね。離れていく人を無理に引き留めて抑えていくとコミュニティはクローズドになっていきます。そうなると古くからいる人が「オレは昔からいるから」みたいな感じになって、新しい人が入りにくくなります。なので、クローズドではなく、緩やかなコミュニティづくりを大事にしていますね。

黒井:そうだね。私は「セミオープン」とか「セミクローズド」とか言ったりします。完全にクローズで囲ってしまうのでなく、ちょっと空いている場やコミュニティ。いつ来ても、いつ出てってもいいよ、と。で、自分ができることをできる範囲でできる限りやる。昔はがっちりしたコミュニティが良かったんですよね。人もたくさんいたし、クローズにすると仲間意識がぐっと醸成されますから。でも今は人が少なくなって、必然的に一人の人がいくつものコミュニティをまたがっていきます。そんな中で、「入ったら出られない」と思うと、入らなくなるんですね。

セミオープン・セミクローズドな
コミュニティ―のイメージ

柴田:時代の流れもありますよね。昔は終身雇用で抑え込むことで幸せな、豊かな生活を保障してきました。給与や年金、社会保障もしっかりしてて、という。でも今は、多くの人が基本的なものを満たされる豊かな社会になって、豊かさの基準が変わってきていると思います。
安定している、お金があるこということだけで幸せかというとそういうわけじゃない。人とのつながり、新しい発見、新しいスキルを得ていく人生が幸せだと思う人が増えています。そんな社会の中で、抑え込むのって理にかなっていないんです。抑え込むことでそこに来る人の幸せを担保できるならいいけど、それができないんだったら、やったらダメだと思います。


■なぜ、私たちは「場」をつくるのか

山下:そろそろ最後の質問にいきたいと思います。2人が場づくりという事業を通して成し遂げたいことはなんですか?

黒井:名寄でやっていることは、ストレートに言うと、より良い街を創りたいから。でもそういうと「他人のため?胡散臭い!」と言われることもあるので補足すると、やっぱり最終的には自分のためでしょうね。
私は60歳を過ぎて、今と同じように、名寄の街を舞台にいろいろやって、仕掛けて、楽しみたいと思っているんです。なので、同じ感覚を持っている人たちを増やしたい、一緒に遊べる仲間を増やしたいと思っています。その土壌づくりがなにいろかふぇという場を舞台にしたコミュニティづくりなんでしょうね。動いている人や動きたい人をつなげていく、動きたい人を動く人にシフトさせていく。動いている人がたくさんいる街は楽しい街じゃないですか。そういう人がたくさんいる街に住みたいと思っています。

一方で、「楽しいからやる」というのもちょっと違うんですよね。作りたい社会に向けて動いていく中で「楽しさは重要」だと思っていますが、それは「楽しいからやる」とは違うんですよ。街に関心のある人が増えたらいいと思っていますが、例えば私が過去にやった「総合計画のパブリックコメントを創るワークショップ」みたいなマジメなテーマだけだと人が来ない。「ボードゲームの会」みたいな楽しいところに人が集まってきて、そこに来た人たちにまちづくりとか総合計画とか防災のテーマのイベントをご案内する。マジメさと楽しさを融合させていくような、「意味のある楽しさ」を大事にしていきたいですね。

柴田:僕はやっぱり、人が育まれる場を創造し続けていきたいと思っています。だから、僕の中で場づくりは終わらないんです。
で、なんでそれが続けられるのかな?と考えると、そこは単純に世界中に、居場所と知り合いがいる場所、会える場所が増えたらうれしいからですかね。それと同じ想いを持った人たちが、僕たちの会社に関わってくれています。
いま、日本の自殺率の高さを考えると、その原因の一つは自分の居場所1~2つしかないことだったりするんじゃないかなと。例えば、会社と家と居場所が2つしかないと、会社がうまくいかないと、家の一つに引きこもってしまう。世界中にあるたくさんの居場所の中から、一つでも自分の居心地のいい居場所があれば、人生が続けられるんじゃないかと思っています。自分にも会社にとっても、居場所が増えていく、そんな社会になっていけばいいなと思っています。

山下:お二人とも、ありがとうございました!

ふーん、おもしろいじゃん。と思ったらサポートいただけるとうれしいです。生きていく励みにします。