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転身・転職成功者たちへ聞く、自分らしく働くということ #3東紗友美

転職・転身・独立を経験し、自分らしい生き方を選択した女性にフォーカスする本企画第三回目のゲスト、東紗友美さんは『映画ソムリエ』という無二の肩書きで活動する女性。

広告代理店の営業職からフリーランスへと転身したのが5年前。映画に教わり、映画に救われ、映画と共に歩む彼女の人生。一度は映画の道ではなく会社勤めを経験するも、引き寄せられるように映画の世界へ。 現在映画界で活躍する彼女の強みとなっているのは、フリーランス転身前後に『ドMツアー』たる独自の方法で自分の欠点を知ったことのよう。

今回は、映画ソムリエとしての道を築きあげる過程で彼女が得た、フリーランスとして生きるための多くの教訓を編集部の@elieinoueが伺いました。

◆Profile◆
東紗友美(@higashisayumi)/映画ソムリエ/30代
拠点:東京

4年間在籍した広告代理店を退職後、自身がつくり出した肩書き『映画ソムリエ』へと転身。現在はTVやラジオなどで映画紹介や雑誌やWEBサイトでの映画連載他、映画イベントへの登壇、MCとしても活動中。 

《『自分の道』を見つけるためには、好きだけでは足りない 》
ELIE(以下、E)
:東さんとLanderの関係は、Lander制作映画『ハイヒール~こだわりが生んだおとぎ話』の初日舞台挨拶でMCを務めてくださったところから。現在も映画ソムリエとして、映画に関わる様々な活動をされているとか。 

:私の人生は常に映画とともにあります。仕事だけでなく、趣味として映画ロケ地巡りにも行くので、本当に映画に溢れた人生なんです。

E:『4歳の時、両親にもらった最初のプレゼントが映画だった』とのことですが、それがきっかけで映画に魅了されたんですか?

:そうですね。その最初の映画で、映画を観た後の心が豊かになる感覚に出会いました。例えばブランドモノを買って心が豊かになる人もいますが、私の場合は映画だったわけです。私にとって映画は『人生の予行演習』。人の心や傷みを映画に教わり、色々な人生を疑似体験し、善悪含め映画を見終わった後に浮かび上がる感情を味わい、さまざまな『感情の旅』を映画が与えてくれたんです。

E:それほど好きだった映画ですが、最初は映画とは関連のない広告会社に就職されたんですね。

:もちろん映画に携わる仕事がいいと思っていましたが、映画コメンテーターって一体どうやってなるの?って疑問で。人生は長いので、映画への気持ちは忘れずに、書類や企画書作成、エクセルやパワポの使い方などを学んだ方が将来的に役立つだろうと思い、興味のあった広告会社にまずは就職をしたんです。

E:映画が大好きで映画業界に入ったわけですが、映画に携わる仕事ってたくさんありますよね。制作側や役者などに興味を持ったことはありましたか?

:ないですね。好きな事を仕事にしてその道で生きていきたいと思うなら、その好きな事との『関わり方』が大事だと思う。映画を作りたいのか、監督したいのか、PRしたいのか、はたまた出たいのか。一体自分は何が得意で、それをどうすれば活かせるのか、フリーランス転向・独立前にはそれらを見極めるべきだと思います。

『好きな事×得意分野=自分の進むべき道』

というのが私なりに導き出した方程式です。私の場合、物事のプラス面を見付けること、人と話す事が得意だから、それを活かして映画の良い面を多くの人と共有する、それが好きである映画との関わり方。今は、映画館に通う人を1人でも多く増やし、映画業界を盛り上げることのできる存在になることが夢です。もし私が北川景子さんのルックスだったとしても、演者を目指すことはなかったと思います(笑)!

E:好きという曖昧な思いだけでは、フリーランスとして生きていくには足りてないという事ですね。厳しい道は覚悟の上で、広告会社勤務からフリーランス転向まではどのような経緯だったのですか?

:会社員3年目の頃に、『ラジオで映画コーナーのパーソナリティをしないか』と声が掛かったのがきっかけでした。かつて女子大生レポーターとして映画の話をさせてもらっていた時に知り合った方からです。広告会社での営業の仕事もしながら、ラジオのパーソナリティも始めてみることに。それがとにかく楽しくて、この道で生きていきたいと思うようになったんです。道がいくつかあれば、どんな時もワクワクする方を選びたいじゃないですか!それが、人生を面白くする方法だと思いますし。フリーランス転身を目指して1年間は仕事を続けて貯金し、4年前に映画ソムリエとしてスタートしました。

《自分の欠点を知るための『ドMツアー』を決行》
E
:貯金していたということは、フリーランスに転身する上で、金銭面での不安があったから?

:そうですね。これから会社に守られず一人で生きていくために、貯金は必要だと思いました。それに、人ってお金がないと物事を卑屈に見てしまうから、収入が安定しないのは仕方なくても、手元に全然お金がないという状態は避けたかったんです。映画ソムリエとして収入が安定するようになったのはこの2年くらいですが、お金を頂けるとそれが徐々に自信へ繋がっていき、不安は消えました。

E:金銭面以外でも、転身前は不安が募るものです。転身において不安だったことを解消するため『自分の足りない部分をアンケート』したとのことですが、具体的にはどのような方法で誰に答えを求めたのですか?メンタルを強く保ち、覚悟を決めないと難しそう…。

:その頃、歳を重ねて怒られる事が少なくなってきたなと感じていました。それに、働きだしてから私自身が年上の人に対してでさえも、欠点が見えることがありました。となると、当時26歳の若く経験の浅い私に対して、目上の人から見える欠点って更にたくさんあるはずだと思ったんです。だから、尊敬できる人や上司、今後仕事をしたいと思う人たちに回答をを求めました。もし相手が何か思っていても、フリーランスになれば注意されることってもっとなくなるだろうし、長所・短所を早めに知って自分に力をつけるのが目的でした。その名も『ドMツアー』(笑)。今でも全てファイリングして保存してあります。想像通り、覚悟していてもとっても傷つきましたよ。でも、本当に私のために怒ってくれる人は、実はとても貴重な存在なんです!

E: どのような指摘をされましたか?

:とにかく映画の知識を増やすこと、さらに映画以外でも知性をつけること、でした。そのために『もっと勉強した方がいい!』と言われたんです。いい映画ソムリエを目指すために、映画を掘り下げる能力を養い、話に厚みがあり、聞きごたえがある人にならなければいけないと気づきました。尊敬できる目上の方々からの言葉だったので、すんなり受け入れられ、自分に必要なことだと思い勉強しました。

E:その素直さ、とっても大切ですね。指摘を受け、勉強を重ねて具体的にはどのように仕事で変化が見られましたか?

:トークショーをしていると、お客さんが話に惹きつけられ、ただ感想を述べるよりもついてきてくれるのを実感しました。キャストや監督、映画の舞台となった都市の歴史、コスチュームの特徴など、勉強して知性をつけることで出来る限り幅広い情報を提供できるよう心掛けるようになってから、以前よりも聞き応えのあるトークだねと褒めていただけるようになった気がします。 人間って三大欲求以外に『知的欲求』もとても強い生き物だと思うので、『情報』を発信できるように心掛けています。そのほうが私自身も勉強になりますしね!今も20分のトークショーのために5時間程の下調べをしています。一つのトークショーに魂を込め、映画の魅力を一人でも多くの人に届けたいと思って臨んでいます。

《経験も知識も全てをフリーランスとしての『武器』に 》
E
:知性をつけるって、職種にかかわらず人として成長する上で重要なことだと思います。東さんはどのような努力を続けていますか?

:1日1つ、雑学を知ることを心がけています。その時に、アウトプットの意識で『これをあの人に話す』という前提で取り組むと効果的だと思います。人に説明するって難しいですが、説明できるってことは深く理解できているということだと思うので。例えば、仕事の帰りに本屋に寄って立ち読みするのを習慣にするなど、小さなことでいいし、興味のある本を手に取ればいいんです。雑学は無駄になりません!

E:ここまでの話を伺っていると、フリーランスに転向してから映画ソムリエとして人として、着実にステップアップされているんだなという印象を受けます。フリーランス転向後、辛い思いをした経験はありましたか?

:一番辛かったのは、『映画好きを売りにしたタレント』と思われたこと。たくさんのことを教わり、色んな感情を経験させてくれた映画に感謝し、その映画の素晴らしさをを伝えたいという思いを持って真剣に仕事に取り組んでいるのに、そんな風に見られたことにとても傷つきました。

E:その経験から得たものとは?

:物は考えようです。学者風の人から講義のように話を聞くよりも、浮ついたイマドキの女性から、マニアックな話を聞く方が、ギャップがあって興味を引くこともあると思うんですよね。『映画を語るには未熟に見える。』そんなコンプレックスこそが魅力になると気づいてから、これまで以上に学ぶことが私には必要だと思い努力しました。 あと、プライベートなことですが、昔将来を考えて付き合っていた男性の浮気が発覚して破局したのも辛い経験でした。しかし恋愛コラムを書くようになって、書くことや発信することの楽しさを知ったので、最低な元カレも本当にいい経験をさせてくれた人だと、今ではとっても感謝しています(笑)。しかも、別れた翌日に一人で居酒屋で飲んでいたら、今の夫と出会ったんです!一見マイナスな経験も、無駄だと思える雑学でも、自分の捉え方次第で全てフリーランスの『武器』になるもの。そして私の場合、辛い時を救ってくれるのもいつも映画です。

《自分らしい道を歩むために、『ブレない自分』を養う》
E
:東さんのように、自分の意見を発信していくような職業の人は特に、さまざまな人生の経験が仕事に活かされやすいですよね。でもフリーランスだと、プライベートでの辛い経験によって気分が沈み、仕事に集中できないなんてこともおきがちです。自主的に仕事に取り組む自由がある分、自分の背中を押して仕事のモチベーションを上げるのも自分次第って、大変な事でもあります…。東さんのように何事も前向きに捉え、仕事に対して責任感を持てる人がフリーランスに向いているのかなと感じました。今後の目標や展望はありますか?

:人生に引退はないと思ってるので、これからも経験を重ねて、映画ソムリエとして映画の魅力をより多くの人に発信していきたいですね。女性は仕事だけでなく、結婚、出産などを経てライフステージが大きく変わっていくものなので、その人生の変化を楽しみたいです。以前観た映画を、結婚してから観ると違う視点が生まれたり、新しい感情を味えたりするので、今後の私の人生に起こる変化を、映画ソムリエとして仕事にも活かしていきたいですね。

E:映画の情報が知りたい時は、東さんのSNSやブログなどをチェックさせていただきますね。最後に、フリーランスへの転向を考えている方に、東さんからアドバイスをお願いします!

:私がフリーランスになって一番変わったのは、時間の使い方です。その経験を踏まえて、まずは『やらなくてもいい事を決めるべき』だとアドバイスしたいです!例えば、人の愚痴を言う時間って最も不要な時間なので、やらないと決めてます。時間が増えれば他のことに充てられる。しなくていいことを選択することは、とても大事だと思っています。 また、周りの目を気にして、自分の意見を変えて相手に合わせようとしたり、相手がどう思ってるのかって悩んだりする時間も不要だと思います。仕事上だけでなくても、人ってある事ない事言ったりするものだし、全員に好かれるなんて無理だと理解し、他人の目を気にして生きるのではなく、自分の目を基準に『ブレない自分』を養う事が、フリーランスに必要だと思います。『ブレない自分』を持てれば、自ずと自分らしい道が築いていけるのではないでしょうか。

《編集後記》
自分の好きと仕事の『関わり方』を考えた時、その答えを方程式で導いたり、尊敬する人から助言をもらうなど悩み事で留めずに、方程式には解が出るまで証明し、助言はいつでも見返せるようにファイリングするなど、物理的にも客観視していました。結果、市場と自分の仕事とのマッチングも図れるし、より自分の軸へ素直に向かっていくことができるんですね。毎日にあるマイナスの出来事を、東さんのようにプラスなモーメンタムへ発揮させるには、自分の軸を持つと強いのかもしれません。(by Mei from Dubai)

クリエイティブプロデューサーMutsumiのロサンゼルスでの活動を辛酸なめ子さんがnoteとハフポストで連載中です。そちらもよろしくおねがいします。 https://note.mu/nameko_la