わたしは頭が悪いから、と彼女は言った

中学の同窓会のとき、久しぶりに会った女の子の話。

田舎の公立中学校なので、荒れ放題の学校だった。当時の悪友はだいたいそのまま田舎に残り、早くに結婚して、地元で元気に暮らしていた。少なくとも、同窓会で会うメンバーは、皆楽しそうだった。

この場所に、同窓会に来ることができる、という時点で、相当にフィルターは掛かっているけれど。

卒業の頃にはすっかりグレていて、ほとんど話さなくなった友達も、長い年月の間にすっかり丸くなって素直さを取り戻しているようにみえた。

その女の子も、しばらくして不登校になったり、保健室に一日中いて、校内の誰とも連まないグレてしまった一人だった。

よくわかんないけど、いい大学行ったんでしょ、ということは皆知っている。けれど、いま主夫してる、というと、「マジ意味わかんねー」と笑いのネタになった。

でも、別になにも特別なことはない、みんなと一緒だよ、と子育ての話で盛り上がった。むしろ、みんなのほうが子育ての先輩で、いっぱい教えてもらったように思う。

彼ら彼女らの子どもは、ずっと大きかった。手のかかる時期を過ぎて、そうして今ここにいるのだった。
そうして話していると、ふと「君は、子どもを叩いたり、怒鳴ったりしないでしょ?」と訊かれた。

「君みたいに頭良かったらいいのに、わたしは頭が悪いから。すぐに感情的になるし、ほんと怒ってばっかりだから」と。

全然、そんなことない。

いくら頭が良くたって、感情的になるよ。怒鳴ることもある。

そんな自分が嫌だなぁと思うこともいっぱいだし、ダメなところばっかりだと子どもとぶつかるときにいつも思う。

彼女の表情はとても穏やかで、素朴な笑顔だった。いつも不機嫌そうにしていた昔の顔は無かった。もし、本当に子どもが嫌で嫌で仕方がなかったら、今も不機嫌な顔をしてるだろうし、きっとこの場所にはいなかったにちがいない。
子どもとちゃんと向き合って、ぶつかって、落ち込んで、そうやってちゃんと育ててきたから、こうやって今話せているんだと思う。

たぶん、彼女は大丈夫。
私も一緒だよ。そうやってダメだなぁと思えるならきっと、大丈夫。

頭がいいとか悪いとか、そんなの関係なく、みんな等しく子どもを育てるのに一生懸命に頑張っているんだから。


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