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小説 ほっといてくれ!

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いじめの標的にされていたボクは、ある一線を超えてしまうととてつもないチカラを発揮してしまう。だから、やめてほしいと言っても、みんなのいじめはエスカレートしていってしまう。もう、耐… もっと読む
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記事一覧

ほっといてくれ! 第1話

 ボクは小さい頃から、問題を抱えていた。その問題が原因で、友達ができない。ボク自身がおとなしい性格だから、いじめの標的にされることが多かった。でも、そうされることで発生するその問題のせいで、みんなボクから離れていった。だから、いつも一人きりだった。  両親はその問題を知っている。うまくコントロールして、その問題が出ないようにしなさいと言うのだけど、いじめられるとコントロールなんかできやしない。たぶん、大人になっても、コントロールすることなど、とうてい無理に決まっていると思っ

ほっといてくれ! 第2話

「そんなことないです。」 えっ?ボク、言葉にしたっけ? 「いえ、してないです。」 (わかるの?) (わかります。)  彼女は自分と同じような能力を持ったボクに、興味をもったみたいだった。ボクは滅多に人の心を読むことはしないけど、彼女は勝手にどんどん入ってくるらしい。だから、言葉に出していうのが苦手になったようだった。だけど、言葉にしなくても、この方が普通の速度で話ができている。 (傍からは黙ってるように見えていても、ボクたちにはこの方がいいね。) (ほんと、いいと思います

ほっといてくれ! 第3話

 結局、男女3人づつ6名のゼミになった。はじめからこのくらいの人数がいいと思っていたし、その通りになったのだ。だが、何を勘違いしたのか、ついていけなかった連中の一人が、ボクらのせいだと思い込んでいた。 (ゼミをやめたあの人、気をつけた方がいいわ。) (んっ?なんで?) (私たちのせいだと思ってる。) (そうなのか?困ったやつだな。) ボクは他人の気持ちをほとんど読めないから、そんなことわからないけど、彼女は自分になだれ込んできる気持ちをどうしようもないので、わかってしまう

ほっといてくれ! 第4話

 ボクは相変わらず、倉庫業務にいそしんでいた。ある時、先輩がパレットにダンボールを積んで、ラップもせずにフォークで運んでいた。あれ、危ないなと思ったところ、急にカーブしたもんだから、積荷のダンボールが落ちた。そりゃ落ちるだろ。 「竹内、何しとんや?こっち、来い。」 「へっ?」 なんで? 「お前のせいで、こんなんなったんや。」 「意味がわかりません。」 「だから、お前のせいだ。」 「ラップもまかないで、急カーブしたら、落ちるでしょ。」 「何言ってんだ?お前がやっただろ?」 は

ほっといてくれ! 第5話

 昼過ぎに、またあの刑事さんが来た。 「どう?わかった?」 「はい、この写真の人は、お付き合いしている女性の家にいます。」 「やはりね。」 「でも、その女性は2軒持ってますよ。」 「お、それは新情報だね。」 「こちらの住所の家の方です。」 「サンキュー、じゃ、約束の2万円。また、頼むわ。」 (あの人、これから頻繁に来るわよ、絶対。) (仕方ないね、これも仕事だしね。)  それから半月も立たずに、また、刑事さんが来た。 「この前はありがと。でね、今度はこの写真の女の子な

ほっといてくれ! 第6話

 久しぶりに近藤刑事が来た。いつもは一人だったのだが、今回は2人だ。 (上司よ。) (なんか、警察にこき使われるのかな?) 「こちらは木田巡査部長です。」 「はじめまして、竹内です。こちらは栗原です。」 「近藤クンから聞いたんだけど、なかなかいい調査をしてくれるとか・・・」 「一応、調査会社ですからね。」 「そこで相談なんだが、御社と警察で契約してほしいんだ。」 (やっぱり、そういうことだね。) (どうしようか?) (月に10件で30万円程度でいいんじゃない。) (だね

ほっといてくれ! 第7話

(あ、近藤刑事さんだ。) (何か事件かな?) (でもこれって・・・) 「こんにちわ。」 「ああ、近藤さん、いらっしゃい。」 「いい天気だね。」 「暑いくらいですよね。」 「外回りにはだんだんつらい時期になってきたよ。」 「で、今日のご用件は?」 (何も目ぼしいものないみたいよ。) (じゃ、何を?) (犯人を限定できる何か・・・) 「実は、捜査が行き詰ってて・・・」 「なんか歯切れが悪いですね。」 「有力な情報がないかを調べてほしいんだ。」 「じゃ、その事件の詳細を教えて

ほっといてくれ! 第8話

 突然、ドアを開ける音が聞こえた。 「お姉ちゃん、いる?」 まずい、聡子ちゃんだ。だが、この状況を隠すには、時間がなさ過ぎた。 「あっ、ごめん。」 見られた。 「って、やっぱり、恋人同士じゃないの。早く起きてよ。」  栗原さんも目を覚ました。 (ごめん、ボク、酔いつぶれたんだね。) (いいのよ。) ボクらは背中を向け合って、服を着た。 「もう、やっぱり、そういう関係だったのね。」 もうボクは覚悟を決めた。 (栗原さん、ごめんね。もし嫌じゃなかったら、ボク

ほっといてくれ! 第9話

 それからしばらくは、何事もなかった。ごく普通に仕事も入り、順調にこなしていった。小林さんからの案件もそんなに難しいものはなかったので、対応は簡単だった。 (最近は割と順調ね。) (うん、特に問題ないし、作業も簡単だしね。) (ずっと、こんなんだったら、いいのにね。) (今日は早めに店じまいして、飲みにいこうか?) (そうね、たまにはいいかもね。)  最近ボクらは、ふたりで食事をしに行くときは、個室を頼むようにしている。無言で黙々と食事をする様子は、他の人には違和感を与え

ほっといてくれ! 第10話

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ほっといてくれ! 第11話(終)

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