生きてると感じる

手のひらの上

硬い殻の中に納められた

柔らかい肉体

ヤドカリの持つ命の形

僕からしたら

ささやかな一生に

見えても

彼からした

特大な時間を

危険と隣り合わせで

生きていくのだから

過酷さで言ったら

僕なんかヤドカリの足元にも

及ばない

あぁ手のひらの上の臆病者が

そろりそろりと顔を出した

こちらを訝しげに伺い

逃げる様に動き出した

小さな足がこちょこちょ

動く仕草が伝わり

くすぐったい

ヤドカリにとっては

命の危機に瀕した

手のひらの上からの大脱走

僕の目にはバッチリ見えてる

逃走経路と焦りよう

逃げていく

走っていく

生きていたいのだ

恐れを抱き命を燃やして

生き延びる為に

ただいま指先まで全力疾走

指先にまで辿り着けば

あとは飛び出すだけ

ヤドカリは自らの重さと

強い意志を持って僕から

離れていった

ぽちゃんと海に飛び込んだ

ヤドカリは

今や住み慣れた海の世界

砂地を走る

生きていたいと望むままに

彼は自由を勝ちとったのだ

小さな命のとびっきり

熱い生き様を僕は

自らの手のひらの上で

見せてもらえたのは

ありがたいことだ

ヤドカリの様に

僕もまた一生懸命に

生きていかなければ！

殻に閉じこもっている

だけじゃ味わえない

命の昂り

生きてこそ味わえる

命のありがたみ

ヤドカリが教えてくれた

教訓だ