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ドイツ詩を訳してみる

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#歌曲

ひよこのるる訳詩目録

2018年11月以来発表してきたぼくの訳詩約70編の、作者別の目録です。もし気に入った作品を見つけたら、同じ作者や時代の他の作品も読んでみていただけたらとてもうれしいです。

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作曲家・ミュージシャン別の索引も用意しております。

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以下、作者の生年順に並べています。

Marcus Valerius Martialis/マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(ローマ)
c.40-c.

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ゲーテ「野ばら」(ドイツ詩を訳してみる 32)

Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), Heidenröslein (1771)

子供が見つけた
野に咲くばら、
まばゆい盛りの
野ばらに駆け寄り
うっとり見つめた。
ばら ばら まっか
野に咲くばら。

「おまえを摘んでやる
 野に咲くばら」
「あんたを刺してやる
 忘れられなくしてやる
 摘まれるのはいや」
ばら ばら まっか
野に咲くばら。

子供が

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ハイネ「ある若者が娘に恋をして…」(ドイツ詩を訳してみる 28)

Heinrich Heine, Ein Jüngling liebt ein Mädchen (1822)

ある若者が娘に恋をして、
娘は別の男を好きになり、
その男はまた別の女に恋をして
二人は夫婦になりました。

娘は腹を立てるあまり
道端でたまたま出くわした
行きずりの男と結婚したので、
若者は参ってしまいましたとさ。

これは昔むかしの物語、
けれど今なお古びない。
そしていざ我が身にふ

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ミュラー「菩提樹」(ドイツ詩を訳してみる 18)

Wilhelm Müller, Der Lindenbaum (1823)

市門の前の泉のほとりに
一本の菩提樹がある。
その木陰で 僕は
たくさんの甘い夢を見た。

その木肌に 僕は
たくさんの愛の言葉を刻んだ。
喜びにつけ 悲しみにつけ
その木は僕を惹きつけた。

今日も心ならず真夜中をさまよい
僕は菩提樹のそばを通った。
あたりは真っ暗だったが
僕はじっと目を閉じた。

すると僕に呼びかけ

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アイヒェンドルフ「薄明」(ドイツ詩を訳してみる 12)

Joseph von Eichendorff, Zwielicht (1815)

(西野茂雄・志田麓の訳を参考にした。)

シューマンの『リーダークライス』Op. 39 の10曲目として有名です。

最終行は、同じシューマンの『森の情景』の「予言の鳥」の自筆稿でもモットーとして引用されています。

ゲーテ「魔王」(ドイツ詩100選を訳してみる 5)

前回のアイヒェンドルフ「月夜」によるシューマンの歌曲もそれなりに有名ではあるとはいえ、一般的な知名度でいうと、シューベルトの「魔王」と比べ物にならない。今回のドイツ詩100選の中でこれ以上に有名なのは、シラー/ベートーヴェンの「歓喜に寄す」ぐらいかもしれない。

フランツ・シューベルト(1797-1828)の歌曲「魔王」は、1815年、18歳(!)のときに作曲し、1821年に Op.1 として出版

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アイヒェンドルフ「月夜」(ドイツ詩100選を訳してみる 4)

ちょっと思い浮かべるだけでぞくぞくする音楽というのはそう多くはない。ぼくにとって、アイヒェンドルフの詩によるシューマンの歌曲「月夜」(Mondnacht) Op.39-5 はその一つだ。

音楽と文学が蜜月のような関係にあったドイツ・ロマン主義においても、アイヒェンドルフほど作曲家に愛された詩人は他にいないという。音楽のおかげでこんなにも愛され続けていると言ってもおそらく失礼にはならないだろう。

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メーリケ「捨てられた娘」(ドイツ詩100選を訳してみる 3)

前回は語りすぎてしまったが、今回はあくまで詩の翻訳メインで、ちょっとだけコメントをつけるくらいにしてみようと思う。

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メーリケという詩人の名前は知っていたけれど、それほど有名人だとは思っていなかったし、作品を読んだこともなかった。

けれど、統計的に選ばれたというドイツ詩100選の中に、メーリケの詩はなんと8編も収録されている。ゲーテの13編に次いで2位だ。

エドゥアルト・メーリケ(18

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ゲーテ「漁師」(ドイツ詩100選を訳してみる 2) それからちょっとベルリオーズとシェイクスピアについて

ドイツ語の有名な詩を訳してみるシリーズ第2弾。20世紀のアンソロジーに2番目に多く収録されたという、ゲーテ(1749-1832)の叙事詩「漁師」(Der Fischer) です。

1779年、Volks- und andere Lieder (民謡とそれ以外の歌)という不思議なタイトルの本の巻頭に、ゼッケンドルフという人が作った歌の歌詞として載っているのが初出のようです。

同じ年の、ヨハン・ゴ

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ウーラント「春の想い」(ドイツ詩100選を訳してみる 1)

ちょっと前に Des Sommers letzte Rosen: Die 100 beliebtesten deutschen Gedichte というアンソロジーを見つけた。ドイツ語の詩を、20世紀の主要なアンソロジー50冊の収録頻度順に、1位から100位まで並べたというものだ。おおざっぱに、ドイツで愛されている詩100選だと思っていいだろう。

目次を見ただけで、ドイツで愛されてきた詩の歴史が

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