記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

[ネタバレ注意] これを読むとさらに映画「Swing Kids」が楽しめる好きが詰まった見どころシーン。


2020.2.22(sat)のダイアリーです


 この日、友人に誘われ映画館にて「Swing Kids」という韓国映画を観てきました。

 友人はK-POPアイドルの中でも

 世界に活動の幅を広げているEXOのファンで、

 今回のこの映画の中では

 リードボーカルD.O.さんが主演を務めた映画になっていた。


 映画を通して観ていて、

 え、この人がアイドル!?

 と驚くほどアイドルとは思えない演技力に圧倒された。

 さらに、タップダンスのクオリティの高さに

 鳥肌が経つほど度肝を抜かれた。


あらすじ

 1951年。朝鮮戦争当時、最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所。新しく赴任した所長は収容所の対外的なイメージメイキングのために、戦争捕虜たちによるダンスチーム結成プロジェクトを計画する。収容所で一番のトラブルメーカー ロ・ギス、4か国語も話せる無認可の通訳士 ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になることを望み、愛に生きる男 カン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持った栄養失調の踊り手 シャオパン、そして彼らのリーダーであり元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンまで、紆余曲折の末、一堂に会した彼らの名前はスウィング・キッズ!それぞれ異なる事情を抱えてダンスを踊ることになり、デビュー公演が目前に迫っていた。国籍、言葉、イデオロギー、ダンスの実力、全てがちぐはぐな寄せ集めダンスチームは前途多難でしかないが…。
(Swing Kids公式HPより抜粋)


登場人物


①スウィング・キッズのトラブルメーカー:ロ・ギス(韓国)
 捕虜収容所の卓越した存在。ジャクソンが躍るアメリカのダンスの“タップダンス”を偶然見てからというもの、昼夜問わず、高鳴る胸の鼓動を隠し切れないギス。隠れてタップダンスを練習し、ジャクソンへの挑戦を繰り返しているうちに、いつしかスウィング・キッズの一員となり、タップダンスへの情熱を燃やしていく。
②スウィング・キッズの頼もしいリーダー:ジャクソン(アメリカ)
過去にブロードウェイのステージを渡り歩いていた元タップダンサーの米軍下士官。収容所に新しく赴任した所長の野心に満ちたダンス公演プロジェクトを無理やり担当させられ、メンバー募集に乗り出す。到底、期待できそうにない志願者たちの間で、紆余曲折の末、なんとか4人集めてダンスチームの体裁を整えたジャクソン。ダンスチームに合流した理由もバラバラ、タップダンスのステップもバラバラな寄せ集めメンバーを見て挫折するが、次第に彼らの純粋な情熱に同化されていく。
③スウィング・キッズの無認可通訳士:ヤン・パンネ(韓国)
 スウィング・キッズの無認可通訳士。戦争の最中、家族の生計を担っている。誰よりも芯が強く、しっかり者の少女である。お金を稼ぐためにダンスチームのオーディションに参加したヤン・パンネは、コミュニケーションに困っているジャクソンに近づき、韓国から英語、中国語、日本語まで4ヶ国語も話せる卓越した語学力と絶妙な交渉術でダンスチームの通訳士の座をものにする。持って生まれた歌の実力と見よう見まねで覚えたタップダンス実力を十分に発揮し、ダンスチームに欠かせないメンバーになる。
④スウィング・キッズで唯一愛に生きる男:カン・ビョンサム(韓国)
 戦争の最中、生き別れになった妻を探すためにダンスチームに合流したカン・ビョンサム。避難の途中、乗る車を間違えたために捕虜収容所に来ることになったビョンサムは、自分が有名になれば、妻を探し出せるだろうという漠然とした希望だけでダンスチームに志願する。渾身のサンモ回しでダンスチームに合流することになったビョンサムは、言葉は通じなくてもダンスで会話ができるシャンパオとはお互いを頼りにし、妻と再会する日のためにタップダンスの練習を重ねる。
⑤スウィング・キッズの栄養失調の実力派:シャンパオ(中国)
天才的なダンスの才能を持った中共軍捕虜。ダンスチームのオーディションが終わろうとしていた頃、ふらりと現れ、柔軟な体の動きと、独創的な振付、無表情ながらも魅力的な掛け声でジャクソンを驚かせる。しかし、見かけとは違い、栄養失調と狭心症によって長く踊れないという貧弱な体の持ち主でもある。おやつがもらえ、ダンスまで踊れるという一石二鳥の目的を達成するためにダンスチームに合流する。 


私的見どころポイントベスト5


①主人公ギスがデレた瞬間がどちゃくそ可愛い


「お前はダンス隊長だろ」

 タップダンスチームで練習を積む日々、

 捕虜として捕まる前に

 舞踊団で一番の踊りの才能があったギスは、

 そのダンス力と身体能力から、

 ブロードウェイのプロのタップダンサーだったジャクソンから

 直々にメンバーに指名される。


 元来、踊りが大好きなギスは、

 タップダンスの魅力にどんどん惹き込まれていき、

 ジャクソンにタップダンスでの対決を挑んでは負けを繰り返し

 いつの間にかチームのエースになっていった。


 そんな中、ダンスチームを脅かす事態が発生する。

 なかなかダンスの練習もできず、

 あわやチーム解散の危機の中、

 あるとき、いつもの練習場で

 生き別れた妻を探すために有名になりたいビョンサムと、

 主人公ギス、

 そして一人で家族の生計を立てる無認可通訳士パンネの3人が集まることになった。


 ビョンサムはこのままチームがなくなるのは嫌だという。

 生き別れた妻を探すため、

 どうしても有名にならなければならない。

 そのためにはギスの力が必要だという。


 このときギスは、

 チームの中で断トツのダンス力を持っていたものの、

 なかなかダンスに参加できないでいた。

 と、いうのも、同胞たちの手前、

 堂々と敵のいるダンスチームで

 活動することができない葛藤も抱えていたのだ。


 ビョンサムには妻を探すために有名になるためダンスを踊る。

 パンネは大きなステージで踊ることができればお金が入る。

 そのお金で家族を養うことができるために踊る。


 ギスはそんなビョンサム・パンネに対して、


「お前たちには踊る理由がある。でも俺には理由がない」


 そう言って、ビョンサムやパンネに背中を向けるギス。

 この言葉に肩を落とすビョンサム。

 しかし、自棄になりながらもこうも続ける。


「…じゃあ何で一番上手く踊るんだよ。お前はダンス隊長だろ」


 ギスの背中に向かってそう言うビョンサム。

 二人を見つめるパンネ。

 その言葉を受けたギスはというと…


 2人の見えないところで、顔はにんまり笑みを浮かべていた。


 しかも、笑いたいけど我慢しているような

 唇に力を入れている「にんまり顔」。


 それが二人には見えていなくて、

 スクリーンで対比している

 観覧の私達にしか見えていないといった感じだ。


 私はファンではないのだけれど、

 もう、なんていうの?

 可愛いを通り越してプチパニック。


 え、ナニコレ。

 え、ヤダコレ。

 え、可愛いコレ。(真顔)


 んん!

 ギス、半端なく可愛かった。


 可愛いというよりも、「尊い」。


 ツンデレかよぉぉ!!みたいなね。


「ちょっとそれは反則よ!…くぅうう!!」ってなる可愛さでした。

 はい。


 私がギスに一気に惹き込またシーンの一つになった。


 映画館だから騒げないので、

 真顔のまま、

 心の中ではギスへの可愛いが爆発。


 ぜひ注目して観て欲しい場面の1つだ。


 ちなみに私の見解として

 わざとギスはビョンサムに

 「じゃあ何で一番上手く踊るんだよ。…お前はダンス隊長だろ」

 と言わせるように仕向けたのではないだろうかと思う。


 だって、そうでなければ

 あんな企みつくしたような「にんまり顔」できないもの。


 それでもって、

 「(ビョンサムに)そこまで言われたら仕方ないよな」という感じで、

 あくまで「仕方なく、俺は踊る」

 というの演出をさせてくるあたり

 「素直じゃないなぁ、ギス」

 と思いつつ

 嫌いになれない。

 むしろ愛おしさが溢れるようなギスのキャラクターがよく分かるシーンでした!!


②捕虜ギスとアメリカ兵ジャクソンのセッション


 冒頭でもちょこちょこ言ってきたのだけれど、

 主人公のギスと

 スウィング・キッズのリーダー・ジャクソンは、敵同士だ。


 ギスはアメリカ兵に捕まった捕虜で、

 ジャクソンは取り締まる兵士。


 ましてや、ギスは同胞の間で

 「英雄の兄」を持つ「弟」としての立場もあり、

 アメリカ兵と仲良くするなんって

 「かーっ、ぺッ!」と唾を吐くような感じだった。



 でも、ジャクソンから

 タップダンスチームに入るよう直接名指しで指名を受けたギスは、

 元プロのタップダンサー・ジャクソンの華麗なる足さばきにより魅了されてしまうわけだ。


 ジャクソンもジャクソンで、

 肌の色が理由で仲間の中に友達と呼べる人は一人もおらず(ジャクソンは黒人)、

 嫌々ながらも命令のため、

 成功すれば日本にいる妻と子どもに会える報酬だけを考えて

 ダンスチームを指揮し始めた。


 初めはそのはずだったのに、

 ギスを含めたメンバーたちの

 純粋で聡明なキャラクターに心動かされ始めて、

 だんだんジャクソンも彼らに対する感情の変化が見えてくる。


 国も違い、言葉もお互い分からないまま、

 ただタップダンスの腕を磨いて

 同じ時間を共有していくうちに、

 ギスもジャクソンも言葉は分からなくても共鳴し合っていく。


 もー、ね。良い。


 青春とはまた違った友情の瞬間というか、絆が美しい。


 敵であるあはずのジャクソンとギスの間に、

 生まれるはずのなかった友情がタップダンスを通して生まれた。


 その友情が徐々に形成されていく過程と

 強い力による圧力で

 「〇〇せざるを得ない」状況という描写が

 よく伝わってくる。


 しかし、それもお互いに

 「あいつやっぱり騙したな」とか

 「裏切ったな」とかではなくて、

 お互いの立場をよく理解し合っているからこそ

 ちゃんと「分かっているよ」だとか

 「お前を傷つけたくないから、お前は逃げろ」みたいな

 お互いを思いやっている場面とかあって、

 もう…尊すぎてしんどいってなる。

 お願いだから戦争止めたげて(泣)

 仲良くして…っ(泣)

 この2人のためにお願い…って感情が湧いて出てきすぎる。


③同族同士の抗争


 ギスの幼馴染の友人が

 片腕と片足を失って巨済にやってきたところから、

 ギスの巨済での生活が一変する。


 起承転結で言えば正に「転」だってくらい話の雰囲気がガラッと変わる。


 幼馴染くん(名前忘れた)は、

 ギスとは戦争が始まる前まで同じ舞踊団に所属していて、

 No.1だったギスに続いて、

 No.2の実力があった。

 そのため昔から仲も良く親友のような間柄だったみたい。


 しかし、戦争によって片足を失くし、

 大好きな踊りを踊ることもできなくなってしまった幼馴染くん。


 幼馴染くんから収容所に連れてこられるまでの経緯を聞き、

 同胞の一人が幼馴染くんに労いを込めてチョコレートを渡した。

 アメリカ兵からもらったチョコレート。

 これでも食べて元気出せみたいなね。

 すると、幼馴染くんはそれまでの様子とは打って変わって激高する。

 まさに怒髪天。


「お前ら目を覚ませ!!」


 捕虜収容所では、食べ物は与えられるし、

 娯楽もそれなりに許されていたギスたちは

 幼馴染くんに比べてしまうと比較的平和的に過ごしていた。


 そこで幼馴染くんは、

 「お前たちがここであははおほほで平和に毎日を過ごしている一方で同胞が何人殺されてきたと思っているんだ」

 的なことを言った。


 その場にいたギスも幼馴染君の言葉に胸を撃たれる。


 一歩違えば自分だったかもしれない、

 無残に殺されていった同胞たちを想って涙を流す者も出始め、

 だんだん周りの顔色は憎しみと怒りに表情が変わっていく。


 それから、幼馴染くんを筆頭に

 アメリカ兵に対して暴動が起きるのは時間の問題だった。


 彼らはそれだけではなく、

 平和的に暮らしたいとする自由主義派までも弾圧していくようになる。


 仲間であるはずの同胞の間でも殺し合いが始まっていき、

 憎しみと恐怖の連鎖はこうやって出来上がっていくのかということがよく分かる場面だった。


 でもその憎しみも怒りも、

 彼らの立場になって考えれば自然なことだし、

 もつべき権利なんだよなということも、

 映画の中の主観的に客観な視点でものを見ることができるからこそ

 より思い知らされたシーンだった。


 英雄の弟であり、

 同胞たちのために立ち上がれとする仲間の暴動に

 ギスは参加せざるを得ない。

 参加しないわけにいかない。


 しかし、ギスは葛藤する。


 確かに俺たちをこんな目に合わせたやつらは憎いけれど、

 ジャクソンを殺したくはない。


 さらには、タップダンスを通して、

 ジャクソンだけではなく他のアメリカ兵との間にも

 友情にも似た名前のない気持ちが芽生えていたギスは

 暴動の最中、殺したようにみせかける演出をし始める。


 すると、幼馴染くんもだんだん疑い始める。


 ギスがアメリカ兵に対して慈悲だとか

 余計なことを考えているのはないかとね。



 そんな素振りを見せようものなら

 同胞に対する「裏切り」になってしまうので、

 絶対にそんなことは言ってはいけないし、

 素振りすら悟られてはいけない。


「ギス、お前は最近アメリカ兵の首を持ってこないな」


 集会の場で筆頭にそう言われたギスは

 平静を装いながらも内心ぎくり。


 そして、幼馴染くんは「英雄の弟としての役目を果たせ」として、

 ジャクソンの首をとってくることをギスに命じる。


 友情を築いたジャクソンを殺したくない、

 でも殺さなければならない。

 殺さなければ自分が殺される。


 不安と葛藤を抱きながら

 ギスはナイフを片手に

 一人

 いつもの練習場である体育館に向かう。


 ほどなくして、筆頭だった幼馴染くんと

 その他暴動の幹部たちは

 内部告発によってアメリカ兵に居場所を特定されて射殺される。


 それによって暴動も鎮圧し、また暴動は起こる前の温度の生活に。


 筆頭が射殺された理由である反乱分子の内部告発。

 この内部告発もマインドコントロールといか、

 捕虜たちの弱みに付け込もうとする様子や

 取引の様子だとかいろいろよく分かる描写が多かった。


④ギスとパンネの魂のタップダンス


 タップダンスグループも練習を始めた頃、

 反乱分子たちによるアメリカ軍や

 平和主義派弾圧が激化してきたこと

 (上記で説明した幼馴染くんを筆頭にした暴動のこと)

 によって自由主義派と資本主義派の間の抗争が強まる中、

 ギスはジャクソンの首をとってこいと告げられる。


 重い足取りの中いつもの練習場へ向かうも、

 幸か不幸かジャクソンの姿はそこにはなかった。

 英雄の弟として同族を護りたい思いと、

 タップダンスを教え友情を築いた兵士を殺したくない葛藤が、

 ナイフを片手に

 1人ぽつりと残った練習場でのギスの後ろ姿によく表れていた。


 その小さな後ろ姿が、

 見る側としての、ギスの心情についてより感情移入させられた。


 ジャクソンはこの時、

 唯一英語が話せる無認可通訳士のパンネちゃんの元を訪れていた。


 タップダンスの練習以外で

 初めてパンネちゃんの普段の生活を目にしたジャクソン。

 戦争で両親を亡くしたパンネちゃんは、

 自分の体よりも数倍の大きさの資源を山から調達してくるなど

 (生活に必要な)、

 たった一人で幼い兄弟たちを育てている姿に感銘を受ける。


 ジャクソンを前に家事をしながら

 パンネちゃんは、

 おもむろにタップシューズを手にとって言うのだった。


「これを履くと、何もかも忘れさせてくれる」


 同じ頃、ギスもタップシューズを手に取っていた。


「最近イメージが頭に流れ込んでくるの。そう、こんな感じ…」


 そう言ったパンネは

 ジャクソンの前でタップダンスを踊り始める。

 同じ頃、リンクするようにギスもシューズを履いて踊っていた。

 体育館を飛び出して、

 人目を気にせず

 ただ足だけを動かして踊っている。

 何も考えない。

 そこには自由主義派も資本主義派もない、

 踊っていても許される、

 仲間から白い目で見られることもない、

 英雄の弟としての立場を気にする必要もない、

 ただ自分が好きなダンスを思いのままに踊っている。

 風を切って、

 地を自由に走って、

 鳥のように自由に、

 羽ばたくように…。


 そして、現実へ。

 ギスは変わらず体育館の中にいた。


 2人のダンスは自由と平和を願う希望を踊ったタップダンスだった。

 それは誰もが抱える同じ願い。

 共通する願い。

 戦争もイデオロギーも立場もない。

 ただ平和でいい。

 自由がほしい。

 愛する人とそばにいたい。

 ただそれだけのこと。

 そのことがよく分かる場面でした。

 とても綺麗で、美しかった。


 しつこいようだけど、お願いだからもう戦争止めたげて(泣)

 ただの、映画なんだけどね。


⑤兄弟愛Ⅰ


 兄が巨済に来た際に

 はじめは幹部からの目があるなど話ができなかったが、

 こっそりギスに会いにきた兄ギジン。

 このときの兄弟二人の描写がすごく好き。


 アカの英雄と謳われている兄は、

 実は障がいがあり、

 体は屈強な大男でも、

 脳は5歳児と変わらない知能数。

 それを知っているのは弟ギスと一部の幹部だけ。


 兄ギジンが英雄になった理由というのも、

 たった一人で多くの敵兵士を殺したため、

 英雄とされている。


 幹部からギスはアメリカの総長を銃撃することを命じられる。

 そのチャンスは、

 催し物のタップダンスをグループで披露するクリスマスイベントの夜。

 兄のギジンを人質にとられたギスに選択肢はなく、

 自身の死も同時に覚悟しなければならないものだった。


 その日の夜、不安で眠れないでいるギスの眠るテントに、

 外から誰かが合図する音が聞こえた。


 兄のギジンだった。

 雪もちらつき始めた寒い夜に、

 兄のギジンは弟のギスに会いに

 こっそりテントにやってきたのだ。


 聞こえてきた合図は、

 兄ギジンが手を温めるために

 手を口元に当てて息を吹きかけている音だった。


「大人はそんな風に温めたりしない」


 優しく兄に微笑みかけるギス。

 久しぶりの再会に安堵しているような、

 二人の間に

 束の間の優しい平和な時間が訪れる。


「戦争が終わったらお嫁さんをもらって、結婚して、幸せになるんだぞ」


 任務が与えられたことで、

 自分の死を悟っているからか

 兄にそんな言葉を投げかける弟ギス。

 兄ギジンも弟ギスに結婚して幸せになることを望むが、

 弟ギスは心配させないためなのか、

 見栄を張って

 「俺はもう全部やったから大丈夫だ」

 なんて言ったりしている。

 でも兄ギジンはそれが嘘だということが分かっているようだった。


 すると、おもむろに兄ギジンが弟ギスに頭を傾ける。

 兄ギジンが弟のギスに頭を撫でてもらうことを促す場面だった。


 二人の間の「日常の一部」だったのか、

 弟ギスが

 2m近くある高身長の兄の頭を

 優しくよしよし撫でるところが良い。

 弟なのにギスが兄で、

 本当の兄のギジンが弟のような関係性なのも

 なんか可愛かった。愛おしかった。


 それから兄を笑わせるために、

 兄が好きだった鶏のモノマネをする弟。

 それを見ながら、楽しそうに肩を揺らして笑っている兄。

 兄弟である二人にしか分からない愛というか、

 絆のようなものが見えて、

 兄弟二人に対する愛おしさが

 半端なく溢れるところだった。

 好きだー。ただただ、この兄弟のこのシーンが可愛かった。


兄弟愛Ⅱ


 クリスマス当日。

 舞台が終わる頃には、

 アメリカ総長のピストルで撃ちぬかなければならない。

 開演前から他のメンバーとは違う緊張を見せているギスに

 パンネちゃんをはじめ、ジャクソンも声をかける。


 このときメンバーたちは、

 ギスが自分たちには言えない何かを抱えていることを

 なんとなく察しているようだった。


 いよいよスウィング・キッズによるタップダンス公演が開幕。

 ジャズの音楽に合わせて痛快なステップが舞台を舞う。


 チームとしての懇親のタップダンスが終わった後、

 一人舞台に残っているギス。


 メンバーたちも不思議がる中、

 ギスはたった一人でタップダンスのソロを踊り始める。


 会場も困惑する中、視線は舞台上のギスにあてられる。

 注目を浴びる中、

 ギスは決心したようにパフォーマンスを行った。

 このソロで踊るシーンが

 「散り際は美しく」ではないけれど、

 これから死ぬギスにとっては

 「生きざま」を叩きつけたシーンでもあったのかなと思った。


 そして、ソロが終わり

 メンバーたちとは違う中央の舞台裏へ。


 隠していた銃を取りに行ったのだ。

 すると、なぜかギスが向かった舞台裏には

 兄のギジンが立っていた。


 状況が呑み込めないギスは、

 そのままギジンによって袖の方へ投げ飛ばされる。


 突如舞台の中央に現れたアカの英雄ロ・ギジン。

 服も演者たちとは違い

 何かパフォーマンスを披露するわけでもなさそうで、

 ただただ困惑する会場に、

 乾いた音が一発。二発。


 その場に崩れ落ちるアメリカ兵士の最高司令官である所長。

 悲鳴と共に観覧者たちはその場から次々と逃げまどい

 会場は大混乱。


 投げ飛ばされたギスはその様子を見て唐突に理解した。

 兄が自分を庇ったと。


 混沌の中、

 兄のギジンは舞台裏のギスを視界にとらえると

 フーフー(手に息を当てて温める)素振りをして微笑んでみせた。


 私はそれが

 死を悟った兄ギジンのギスに対する

 「I love you」だとすぐに解釈して涙腺崩壊。


「兄さん!!!」


 ギスが叫ぶのと同時に

 ギジンの頭にアメリカ兵たちの銃弾が命中。

 蜂の巣になったギジンに駆け寄ろうとするギスを

 ジャクソンが必死で抑える。

 目の前で最愛の兄が殺されるのむごすぎる。

 もう、本当…(戦争なんて)誰も幸せにならねえ…(泣)


 その後、幸か不幸か、

 所長に当たった銃弾は急所を外しており

 その場に立ち上がって見せたのだ。


 兄ギジンの死も空しく作戦は失敗。

 所長は「アカを全て殺せ」と部下に命令し、

 その場にいるギスに銃が向けられる。

 助けようとするジャクソンは

 他の兵士たちに取り押さえられて身動きができない状態に。


 何が酷いって、最後の最後までギスを苦しめるために、

 まずギスよりも先に、ダンスの仲間たちが射殺されて、

 心を寄せていたパンネちゃんや

 ビョンサム・シャンパオの

 動かなくなった体に

 ギスは膝をついて愕然とするんだよな…。

 兄ギジンに続いて

 仲間たちを殺され

 ギスは目の前で一気に二つの家族を失うことに。


 そして、目の前で銃を向けられたギスは、

 両足を撃たれて

 大好きだったダンスに対する希望を打ち砕かれ、

 そして最後に…。


 普段ギスの名前をは呼ばず

 「おい」とでしか呼ばなかったジャクソンが

 打たれる直前に「———ギス!!!」と名前を叫ぶところも涙止まんない…。


 ジャクソンもジャクソンで

 仲間であり唯一の友人たちを

 (アメリカ兵士の間でも黒人というだけで差別される中やっとできた仲間と呼べる人たち)、

 自分だけの力ではどうすることもできず、

 目の前で殺されていくのを見なくちゃいけなかったのなんて、

 もう…心えぐられるわ…。


 少しでも希望を忘れずに懸命に生きていても、

 最後の最後まで強い力によって抑制されて幸せになれないのむごすぎる。


最後に


 戦争とかイデオロギーとか

 それぞれの立場による観点とかいろいろと考えさせられる映画だった。


 この映画をみたのは、小さな映画館だったけれど、

 もっと多くの人にみてもらうべき映画だと思った。

 今を生きている人々なら尚更見てほしい映画の一つだと思う。


 戦争は上記で私が示したような

 家族愛も、

 同族同士の友情も、

 異国人との友情も、

 好きな人に抱く愛も、

 全てが失われる。



 こんな風に文字で何かを表現することもできなくなるし、

 簡単に自分の感情や考えを表現することもできない。


 この映画を観終わったあと、

 登場人物たちへの愛が溢れすぎて

 生まれ変わったこの世でどうか幸せでいてほしいと切に願ってしまった。(←鬼滅の刃並みにそう思います)


 現実の世界でも悲しい未来にはしたくない。

 これから生まれる子供たちが

 何不自由なく自分の人生を生きて、

 愛を感じて、

 幸せであってほしい。

 そんな風に願うのは、

 国や立場や性別やイデオロギーなどに関係なく

 誰しもが願うことなのではないだろうか。


 私も平成生まれで

 戦争なんて祖母の話に聞く程度。


 今が平和過ぎて、

 戦争の話はとても非現実的で昔話の一つに近い。

 私は決して戦争を経験したわけではないから、

 実際の恐ろしさや異常さを身を持って知ることはできないけれど、

 それを知ろうとすることはできる。

 理解しようとする努力は誰にでもできる。


 広島の原爆ドームに修学旅行で訪れた際には

 すごく衝撃を受けたことを今でも覚えている。


 人形が展示されていたスペースでは、まっすぐ目をむけることはできなかった。


 でも、それらが実際に起こった現実であること

 私たちは受け止めなくてはならない。

 歴史という事実に目を向けなくてはならないのだなと思った

 高校生の頃の私は、

 そう気がつけたことが何よりも収穫だったと思う。


 とにかくたくさんの人に見てほしい!!


 戦争の映画だけど、

 見ていて「ふふっ」ってなるような面白い場面も多いから

 観ていて楽しいよ!

 ぜひ観てほしい。


 \長々と最後まで読んでくれて本当にありがとうございます!!/


 この記事を読んで少しでも、

 映画の「観るジャンル」の幅を広げるきっかけになったり、

 私のこの「映画を観た後の感想」に共感してもらって、

 記事を通して一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

 映画観る前でも、観た後でも

 読んで楽しめる記事になっていると思います。

 良かったら、ぜひ映画「SWING KIDS」ご覧になってみてください!




この記事が参加している募集

スキしてみて

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?