「フーガはユーガ」#伊坂幸太郎 #読了 #感想 

ここまで、「絶対作品を通して読んで!!」と強く思った作品は今のところ他にない。

本編を読む前に触れる全ての情報が読書中の想像にバイアスをかけるかもしれない点に留意して読むか、読まないか決めて欲しい。

普段、読書感想を書く時には、極力ネタバレしないように気をつけている。

今回も、なるべくネタバレ感を与えずに書きたいと思うが、ミステリー作品なだけに、複数浮かぶ予想図のどれが本に描かれているかを想像し、自分の想像と実際のストーリー展開の乖離や一致を楽しむのも重要だろう。

一方で、こういう予想をする人もいるのかと、面白く感じてくれる人もいるかもしれない。

「フーガはユーガ」が双子の主人公の物語なのは紹介文にも書かれている。

「Whoが? Youが!」本文に出てくるダジャレが微かに面白く、なんだか心温まる。そして、何処か納得する。

これは、作品の主題にも関わってくるところにトンチを加え、一文に本作品を集約するとしたら「Whoが? Youが。」がピッタリにも感じる。

冒頭に双子の一人が殴られ、蹴られるという虐待シーンが出てくる。

その後、双子に「アレ」と呼ばれる怪奇現象のようなことが起こり始める。(詳細は本編にてお読みください。)

どなたかのTwitterの読書垢に書かれた「最後まで気を抜かないで読んでください」という一文を読んだため、後半の大どんでん返しか予想外の展開を想像して読み始めた。(このツイートが本作品の購入の最後の一押しにもなってもいる。)

なので、本文中双子は二人とも登場し続けるのだが、冒頭の虐待シーンから、「実は一人は幼少期の時に亡くなっており、乖離性同一症(多重人格)になった一人が二重生活を送る中で、起きる不可解な現象を怪奇現象と錯覚している」というシナリオを想像しながら読み進めていた。

こう思った理由はいくつかある。

一つは、虐待が大きなトラウマであり、乖離性同一性障害(多重人格)のリスク因子だから。

双子は優我と風我という名前だが、風雅が殴られている時に優我がその痛みなどを体験しながら、同時に傍観し、逃避そているような表現があるから。この二人が同時に別人でも同一人物でもあるというシナリオがしっくり来そうな前置きかと想像できるから。

Twitterのコメントから、予想外の展開を想像する上で、実は風我は双子のもう一人の優我が心の欠落と保護のために作り上げたというのは想定外な展開っぽいから。

怪奇現象を説明する優我が「僕の言うことには嘘もある」というから。嘘を読者が分かりやすく、楽しみやすいものにするとしたら、やはりストーリーのコアである怪奇現象を取り巻く何かが嘘であった方が楽しい。

最後は、おそらく私が怪奇現象を信じていないから、本編がファンタジー小説ではない時点で、唯一出てくるファンタジー的な怪奇現象が真実であるのは、何処か不自然に思えたから。これは完全に固定概念かもしれない。

実際には、怪奇現象は実際に起きるという設定で完結している。

大どんでん返しを予想して読んでいたわけだが、個人的にはそのようなことはなかった。

一貫した「芯が優しいストーリーの中で暴力や不運が登場する」という本に感じた。優しさは双子の原動力でもあり、優我と風我の関係でもある。

そういう意味で、後半のクライマックスは必然的な予想外風の展開であり、冒頭からある程度暗示されていた内容にも思う。

「フーガはユーガ」という作品は、ミステリーと言われればミステリーでもあるが、個人的には「より実世界的な心温まるストーリー」に感じた。

そうは言っても、怪奇現象を取り巻くエピソードはいずれも引き込まれるものであり、ページを捲る手が止まらない。

感想は書けるが、本作品は実際に読むことでしか伝わらない良さがある。どの本もある程度そうだろう。しかし、この本こそ、結果やミステリー的な答えではなく、全てのページを最初から最後まで読むことでしか辿れない経過と過程が重要だ。

ここまで、「絶対作品を通して読んで!!」と強く思った作品は今のところ他にない。

是非、「フーガはユーガ」を読んでみて欲しい。

最近物価が上がり、一冊1500円強が高く感じる人もいると思う。BookOffでなら、新品同様の中古本をその三分の一以下で購入できるから、非常にありがたい。

図書館ならば、無料で借りられる。本によって待ち時間はあることもあるが、無料というのはありがたい。

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