僕の人生を大きく変えた箱根駅伝と走ることの意味を現役大学生ランナーとして考えてみた

タイトルの通り、今回は箱根駅伝についてのお話です。

長めの文章となっているので、時間がない方のためにも、誤解を防ぐためにも先に結論を述べておきます。

1.箱根駅伝は素晴らしい大会ではあるが、背景では多くの「犠牲者」を生み出している。

2.なぜ人は走るのか。それに答えられるのは自分自身しかいない。その問いに正解はない。

※こちらのnoteと一部内容が被りますので、参考文献として併せてお読み頂ければと思います。

スポーツ選手の「消える」現象について考えてみた|M.Matsumoto|note(ノート)https://note.mu/m_ms09/n/neb6e7105196f

今やすっかりお正月の風物詩となった箱根駅伝。
こたつを囲んでお雑煮とみかんを食べながらご家族でご覧になったことのある方も多いと思います。

長く陸上競技をやってると

「やっぱり箱根駅伝に憧れて陸上はじめたの?」

と、結構な頻度で聞かれます。

はい、全くそんなことはありません。笑

陸上競技を始めた理由は長くなりそうなのでまた別の機会に。
しかし、箱根駅伝に影響されて人生が大きく変わったことは事実です。

陸上競技は全く知らなくても箱根駅伝だけは知っているという方も多い今日ですが、そもそも箱根駅伝とはどういった大会なのでしょうか。

東京箱根間往復大学駅伝競走(とうきょうはこねかんおうふくだいがくえきでんきょうそう)は、例年1月2日と翌3日の2日間にわたって行われる大学駅伝の競技会(地方大会)である。関東学生陸上競技連盟が主催し読売新聞社が共催する。一般には箱根駅伝(はこねえきでん)と呼ばれ、その実施については関東学生陸上競技連盟が定める「東京箱根間往復大学駅伝競走に関する内規」に定められている[1](以下、「東京箱根間往復大学駅伝に関する内規」は単に「内規」として説明する)。(引用:Wikipedia)

2つ補足を加えると

1. 箱根駅伝に出場することができる大学は、現時点では関東圏内の大学だけである=全国大会ではない(全国の予選を勝ち抜いた大学で争う全日本大学駅伝は11月に行われます。)

2.箱根駅伝に出場することができる大学は前年の大会の上位10校の他に箱根駅伝予選会(以下予選会)を勝ち抜いた10大学である。

となります。
つまり、

ただの関東ローカル大学駅伝大会

なんです。

それがどうして大会規模としては全日本大学駅伝よりも小さいはずの地方大会が全く陸上競技や駅伝を知らない方でさえ、「駅伝(陸上)=箱根駅伝」というようなイメージが浸透してしまったのでしょうか。

私が考える原因は以下の2つです。

1.テレビ放送の開始により宣伝効果が高まり、多くの大学が宣伝するために参入するようになった

2.お正月という一家が集まる時期に半日近くテレビ放送されることにより一気に知名度が向上した

やはりマスコミの効果は絶大で、テレビ放送が始まり(一部地域を除きますが)人々の目につくようになると大学側も数時間テレビに学校名が映り続けるコマーシャル効果や社会的イメージの向上を狙って自校も出場しようとすべく陸上部(駅伝部)の強化を行います。現在、出場経験のあるチームを含めて約40大学が箱根駅伝出場、入賞、優勝を果たすために「強化校」としてチームの強化を図っています。

こうして関東の私立大学が揃いに揃って強化を始めたことにより一定レベル以上の自己記録を持つ全国の高校生はテレビで華々しく放送される箱根駅伝を目指し関東に集まります。

そうなると、関東の大学以外に選手が集まりにくくなり、関東とその他の地方の競技レベルの差が顕著になります。
(誤解を防ぐために補足しておきますが関東以外の地域にも素晴らしい大学生の長距離選手はたくさんいらっしゃいます。ただし、ここでは短距離種目や跳躍種目などと比較して自己記録の高い選手が多く集まるチームが関東には多いという意味でレベルの差があるということです。)

つまり、

全国大会である全日本大学駅伝より関東の大学のみで争う箱根駅伝の方がレベルが高い大会になります。

そうなることでなおさら箱根駅伝は全日本大学駅伝よりも注目を浴びる大会になったわけです。

そろそろ本題に入るので先に申し上げておきますが

私は箱根駅伝にそれほど魅力を感じていません。

前置きが長くなりましたが、今回は箱根駅伝についての持論を述べていきます。高校生、関東以外の地域で競技を行う大学生長距離ランナーの方々、スポーツに携わる方々。そして、箱根駅伝をここまで大きな大会にしてくださった箱根駅伝ファンの方々に読んで頂きたいnoteになります。

まず、箱根駅伝に魅力を感じていないとはどういう意味なのか。2つの問題意識から箱根駅伝と私のギャップについて考えてみます。

私は高校までは中距離種目とされる1500mをメインに競技に取り組んできました。
好きな種目であり、結果もある程度は伴っていてこの種目で戦っていく自信があったからからです。

当時のチーム状況から駅伝で長距離区間を走らせて頂くこともありましたが、頑張っても5km以下の区間が限界。高校3年間で5000m以上の種目で戦える走力を身に付けることはできませんでした。
中距離に特化したトレーニングを行っていたわけではありませんがある程度は順調に記録が伸びていったことを考えると、適性は1500mが一番高かったと思います。

大学に進学しても1500mや5000m、長くても10000mまでのトラック種目を中心に競技に取り組みたいと考えて、チーム探しを行いました。一般入試も視野にいれていたので必要最低限の学力もつけておきましたが、

関東圏でトラック種目のみに取り組める一定レベル以上のチームはありませんでした。

箱根駅伝出場を狙うなか、トラックだけ走る選手など必要ないのは当然です。関西にはトラック中心で取り組めるチームがあることを知っていましたが、遠く離れた地に進学する意志の強さはなく、比較的チーム全体で箱根駅伝に向かうというカラーの薄い大学に入学することになりました。

ここまで箱根駅伝出場のみ(厳密には年間スケジュールを予選会もしくは箱根駅伝を第一に考える)を目標にチームが増えたのは、箱根駅伝という大会が肥大化しすぎた結果であると思います。関東圏の大学はどの大学でもできることなら箱根駅伝に出場したいと思っているはずなので当然といえば当然のことですが。

現在はチーム方針に従い、10000mやハーフマラソンを中心に考えて年間のレースを組んでいますが、長い距離を年間通じて走る安定感は身に付いていません。本来の自分にあった距離は1500mから長くても10000mまでなのではないかと感じることもあります。まさか大学1年目からいきなり距離を伸ばすとは思ってもいませんでしたから。

こうした意思決定の背景には「予選会を走ったやつが偉い」というチームの風潮がありました。

もちろん、直接チームスタッフから言われたことではありませが、なんとなくそんな雰囲気がチーム内にありました。予選会をチーム目標としている以上、当然の組織文化なのかもしれません。

そんな空気を感じ、チーム全体として予選会に向かっている中、自分だけやりたいトラック種目に専念することの是非に悩みました。結局私にチームから独立してやり通すだけの意志も実力もなく、周囲に流されてしまいました。

高校まで1500mや5000mを主な種目として、大学に入学したらチームの「空気」というパワーにより10000mやハーフマラソンに移行していく(せざるを得ない)選手は多いと思います。
この見えない同調圧力、関東一極化による弊害といった組織的なネックが1つめの問題意識となります。

同調圧力について補足を加えていきます。

箱根駅伝は全ての区間で1区間の距離が約20km。
予選会もハーフマラソン。
最低でも10000m以上の距離を安定して走る力が必要です。

つまり

箱根駅伝に出るためには高校生の一般的な長距離種目である1500mや5000mの走力よりも4~10倍以上の距離をいかに速く走るかを考えなくてはいけません。

「長距離選手」といっても中距離種目(800mや1500mなど)が得意な選手もいれば10000mやハーフマラソンが得意な選手もいます。

また、選手によって多様な「タイプ」が存在します。同じような自己記録の選手でも全く同じトレーニングをしているということはまずあり得ません。仮に、同じトレーニングを行って同じ効果を得られるとしたらトレーニング方法は統一されているはずです。

淡々とじっくり走り、調子の波が少ない安定感が売りの選手、狙った試合に合わせる爆発力を持つ選手、あまり強度の波は作らす継続したトレーニングを行うことが得意な選手、継続したトレーニングは苦手でも強度の高いトレーニングを単発的に行うことで上限値を高めていく選手など多岐に渡ります。

一見単純な「走るだけ」の競技ですが、ラストの競り合いに強い、長距離種目が得意といった表面的な物以外にも、様々な特徴を持つ選手がいます。

ところが、箱根駅伝を目指す「強化校」が高校生をスカウトするときに参考にするものは

ほとんどが5000mの自己記録ではないでしょうか?

5000mの他に、1500mが得意なのか10000mが得意か、トレーニングにおける選手の「タイプ」などもちろん関係なく条件の恵まれた競技会で「作られた」5000mの記録を元に高校生はスカウトされます。

このことにより、そのチームがどういったアプローチ(5000mや10000mのスピードを強化し20kmに繋げるのか、ハーフマラソン以上の距離を走るスタミナを重視したトレーニングを行うのか、など)で箱根駅伝出場を目指すのかは関係なく選手が集まるため、そのチームのトレーニング方針に合わない選手は脱落します。

世間には露出しませんが多くの選手が道半ばで退部する(させられる)犠牲のもと箱根駅伝は成り立っています。

もちろんこれは本戦に遠く及ばない「強化校」でも同じ。
個人競技であるのにも関わらず、チームの方針に合わない選手は排斥される。

この「汚い」側面を高校時代に知った私は「本当に箱根駅伝とは素晴らしい大会なのか?」と疑問を持ちました。
そして、

「何も年間通じて1本の試合に過ぎないレースにみんなで向かっていく価値はないのではないか。」

と思い、この問題意識を持つようになりました。

次に、「普通の大学生」という私の立場から箱根駅伝を考えてみることにします。
現在、各校が強化を重ねた結果、予選会突破のボーダーラインは年々高くなっています。それに伴い、箱根駅伝のレベルも年を追うごとに上がっています。

その箱根駅伝に出場するためには並大抵ではない努力が必要です。実際、箱根駅伝に出場するような大学の選手や予選会で本戦出場争いを繰り広げるような大学の選手はほぼ毎日、1日2回以上は厳しいトレーニングを行っていると思います。

そのような厳しいトレーニングを継続して積むためには大学生活で多くのことを犠牲にしなくてはいけません。

講義を犠牲にしても回復のための治療や強化のためのトレーニングの時間にあてることを強要したり、練習に影響がでることから履修に制限を加えている大学も多いも思います。

箱根駅伝に全てを注ぐことの是非。2つめの問題意識となります。

そこまでして(させられて)箱根駅伝を目指すことは本当に正しいのか。
これは海外の大学と比較すればすぐに答えは出ると思います。

現在の日本の制度では、実質的には競技成績のみで進学する大学を選ぶことができ、それがこの問題の原因になってるのではないでしょうか。

他のスポーツでも関東や関西の都市部などの全国トップレベルのチームに進学する選手の大半は

競技成績を元に自分が入学できる、もしくはスカウトされた大学という条件を満たす大学に進学していることが多いはずです。

皮肉なことに多くの強豪スポーツクラブを有する私大は有名大学であることがしばしばあります。逆に、学力レベルを下げてまで競技のために本来入学できる大学より比較的入学しやすいとされる大学に入学する選手もいます。

学力面なども一定の考慮がされるように形式的に簡単な試験などを実施することもありますが、本質的には高校までの競技成績のみを参考にスカウトされ入学するわけですから、

入学して結果を残せず、部を去ることになれば悲惨な未来が待っていることもあります。

それまで競技しかやってきていないと、勉強についていくことも困難でしょう(これを防ぐためにスポーツ推薦で入学した選手向けにGMARCHレベルの有名私大でも、とてつもなくレベルの低い講義が開講されているようですが。)し、箱根駅伝という高い目標に挫折した若者の向かう先は夜の街であったり、ギャンブルであったりすることもあります。

ここまでして、リスクを背負い箱根駅伝を目指すことは本当に「大学生」としてふさわしいことなのか。

もちろん、ひとつの物事を徹底的に極めることを否定しているわけではありません。走ることによって人々の心を動かすことができる。陸上競技を極めてそのような選手になることは素晴らしいことですし、箱根駅伝に出場することにより多くの観衆に感動を与えることは大きな意義があると思います。

ただ、高校で大きな挫折をした私は全てを箱根駅伝に注ぐような大学生活を送るモチベーションはもうありませんでした。(競技で結果を残すことを諦めたわけではありません。)

本来、「強化校」の一員である以上、箱根駅伝を目指すことを第一に考えるべきなのかもしれませんし、大学に進学したからには学問にも力を入れて両立するべきなのかもしれない。どちらが本当に正しいのか未だに答えを出せずにいます。

そこで、不確実な未来に対して、競技力を高めることを念頭に置きながらも、学生の本分であるべき学業はもちろん、これまでの人生で怠ってきた友達作りや仲間との食事などにも時間を使うことを心がけてきました。

2つの視点から箱根駅伝に違和感を感じた理由を述べました。

これらのギャップを感じたことにより、私は競技生活の目標から箱根駅伝出場を外しました。

「狙うもなにも、お前に箱根駅伝を走る力はないだろ」

「お前が諦めているだけ、言い訳をするな。」

箱根駅伝出場を競技生活の最大目標にして努力をしている方も多いでしょうから、当然そういう批判はあると思います。

現在、高校時代の自己記録が私とさほど変わらない選手でも箱根駅伝を目指し上京している選手は一定数います。本戦に出場している選手でも高校時代は5000mで15分を切るのがやっと、という選手もいるはずです。

しかし、

残念なことにそのレベルの選手がお正月に輝かしくテレビに映ることができる可能性はかなり低いと思います。

専門誌やインターネットで箱根駅伝に出場している選手の高校時代の自己記録を調べればすぐにわかることですが、

「箱根駅伝に出場することが素晴らしい」

「陸上(大学生)といえば、箱根駅伝」

という社会的、世間的なイメージが増したため、「強化校」の数が激増して、本来大学で競技を続けるべきではない私のようなレベルの選手が箱根駅伝を目指すことのできるまで大会が大きくなってしまっているのが現状です。

残念なことに大学に入学して1年半ですが、同じような、もしくは私より多少走力が高い仲間も、挫折して選手を諦めたり競技から退いている方も多くいます。

「箱根駅伝」という目標が先行し過ぎなければ、陸上競技の本質に従い、大学に入学してからも自らの適性に応じた種目での自己記録の更新を念頭に置き、競技に取り組めたはずです。

箱根駅伝という様々な利害が複雑に絡みあった試合により、多くの選手が道半ばで競技から退いていってしまう。

走ることの意味とは一体何でしょうか?

この問いに対して明確な答えを持っている競技者の方が圧倒的な少数派だと思います。
調子がよく(思うように走れ)て、努力と結果が結び付けば当然やりがいや楽しさを感じるでしょう。
逆に、ケガをしてしまったり、自己記録が伸び悩めば誰しも気持ちが切れかけることもあると思います。

私が考える走ることの意味(走り続けてきた理由)は2つあります。

1つめは走ることにより得られるものが多いと思っているからです。

競技成績だけでなく、自己記録を更新したときの喜び、走っているときの爽快感、走り終わったあとの達成感、気持ちよく走れたときの充実感・・

その他にも走ることを通じて多くの出会いがありました。個人競技ゆえに、チームという壁が比較的薄いため友人をつくりやすいスポーツだと思います。

また、陸上競技により、多くの挫折も経験しました。

どんな素晴らしいプロセス(練習)を築いても、レース結果(記録)という数字が全てを物語ってしまう。どんなに厳しいトレーニングをしても結果を残せなければただの自己満足と揶揄される。

結果を残せなくなったら
「あいつは終わった」
「早熟だった」
といった、誹謗中傷も受けました。
チーム内での孤立も経験しました。

しかし、これらの経験は誰しもできるものではないと思います。

高校での挫折(詳しくは冒頭に載せたノートをご覧ください)によって、新たに支えてくださる方との出会いもあり、様々な価値観に触れることができました。

この挫折も人生においては大きな糧となっていると思います。
走ることで、様々な経験をさせていただき、それによって成長できる。走ることで生まれる副次的な効果の1つであると思います。

個人競技ゆえに、様々なカテゴリーのランナーの方がいることから結果以外の何かを比較的得やすいスポーツといえるかもしれません。

ここで挙げたものは他のスポーツでも得られるものだと思います。しかし残念ながら私は球技が大の苦手です(笑)し、だからこそこの競技に惹かれ続けているのかもしれません。

2つめは社会的な評価のためです。
これを批判しておきながら理由とするのもおかしな話ですが、よくも悪くも大学まで、陸上競技の力を「利用」して進学させていただきました。また、走り続けることで世間的にも一定の評価をしていただきました。

やはり自分の活動が評価されると嬉しいですし、アイデンティティーのためにも、これからの活動を円滑に行うためにも、この他者からの評価を有効に利用していけたらと思います。

2つをまとめると、私が走る意味とは

自分らしくあり続けるために、競技成績に囚われず生活の一部として自らが掲げる理想に向かっていくこと。

と言えそうです。

今回は陸上競技を学生3大スポーツに仕立てあげた箱根駅伝と私とのギャップ、私を悩ませ続け、成長させてくれた走ることの意味についての記事になりました。

箱根駅伝に対してやや批判的なスタンスで筆を執りましたが、学術論文ではないため何が正しいのかということが論点ではないことを理解して頂きたいです。

箱根駅伝が競技の普及やメジャー化に大きく貢献していることは間違いありませんし、箱根駅伝を通過点として大きく飛躍する選手も多いことも事実です。

しかし、そこには表面化されない問題も多く含まれている。大会に関わる全ての方々で考えなくてはいけない課題がある、ということが今回のnoteの主旨になります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。感想、意見等お待ちしています。素敵な一日をお過ごしください。

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