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『「あなたは空を、飛んでみたいですか?」』


ある先端テクノロジー企業が

空飛ぶ靴の開発に成功した


靴底に動力源が着いており

かんたんなトレーニングで

子供から老人まで

誰でも自由に

空を飛べるという代物


諸々のチェックも済んで

いよいよ発売に向けて

動き出そうという段


顧客ニーズの把握のために

アンケートを行うことになった

(もっと早くやっておけよ)


その質問は実にシンプルで


「あなたは空を、飛んでみたいですか?」


これを訊ねてみたところ

老若男女を問わず

なんと80%以上の人たちが

その質問に

肯定的な回答をしたという


アンケートを見て

企業の上層部は確信を持った


売れる


受注生産あるいは

限定販売も検討されたが


一刻も早く

一人でも多く

みんなに空を飛んでもらいたい

そんな一心からすぐさま

量産体制に入った


巨額の広告宣伝費が投じられ

また全国各地の至る所に

ショールームが設けられて

いよいよ発売日を迎える


いかにも富裕層といった

そんな顧客もさることながら

いわゆる標準的な層の人々まで

店頭は実に賑わった


ただし成約は1件もなかった


全国でただの1件も


承認欲求丸出しの

インフルエンサーでさえ

この商品を敬遠したという


衝撃的な結果を踏まえて

この企業の経営陣は

頭を抱えた


なぜだ

なにがダメなんだ


80%以上のお客様が

空を飛んでみたいと言っているのに…




改めて外部の

有名コンサルティング会社に

原因の究明を求める


結果は明白とのこと

コンサル料もいりませんよと

秒で回答された


価格設定は国民の平均年収の20倍

人体模型実験では95%の確率で墜落し

デザインは赤みががったドドメ色(光沢あり)

おまけになぜか靴の中が濡れている


そりゃ売れるわけないでしょう


ということだった


「みんな空を飛びたくないのか」

「あのアンケートは嘘っぱちか」

「夢のない世の中だなあ」



なおも経営陣は

現実を直視できていないようで


「こうなったらしかたない」

「空を飛べる靴は諦めて」

「地底に潜れるヘルメットにしよう」


そういう結論に至ったというから

まったくもって夢いっぱいの企業だ



















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