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ラブレタークラブの活動③『「わたしは抹茶味にするけど、』


こちらの続編をリクエストいただいた気がしましたので、本稿を寄せた次第です。




先輩が連れて行ってくれたのは

いつも俺が行くコンビニなんかじゃなくて


電車で二駅先までいったところの

なんかすげえ

おしゃれなところ


野球部だし

チャリ通だし

来たことなかった


もし文化部だったら

帰宅部だったら

こういうとこ来まくりなんだろうなって思った


「わたしは抹茶味にするけど、君はマンゴー味でしょ?」


すっかり見透かされていた

三年のお姉さんすげえ


これなんだっけ

英語みたいな言い方のやつ

アイスじゃなくて


「これさ、ジェラートっていうんだよ、イタリアの」


イタリアだった

マジで俺は野球しかやってないから

モノを知らない

情けねえって思った


でも

先輩と食べるジェラートとかっていう

アイスはマジでうまくて

マンゴー味がたまらないわけ


これが幸せってやつだと思った

もう野球部なんてやめてやろうかとも思った


夏だよ夏

青春だよ青春

他の部員連中には味わえない感覚だぞ


ところでなんだか

暑さのせいか

幸せすぎるせいか

意識が朦朧としてきて…


部活の練習でも

こんなことはないのに…


「ねえ、ねえ、だいじょうぶ?」


先輩の顔が俺を心配そうに覗く


見慣れない場所に運ばれている

どうやら先輩の

へ…

部屋…?


俺もしかして

アイスみたいに

とろけちゃったの?


「だいじょぶそうだね!野球部なんだから、シャキッとね!」


先輩が

俺の頬を軽く

撫でるでもなく叩くでもなく


俺の脳みそは冷静さを少し取り戻したようで


「うちのパパ曰く、君は合格だってさ、おめでとう!」


何を言っているのか


さて

それから聞かされた話は

あまりおおっぴらには出来ない


とにかく

”耐性が強い”らしいよ俺は


田舎の弱小チームで野球をやって

ろくに勉強もしないで

なんとなく働いて

なんとなく…


それよりは

先輩が導いてくれている

世の中のためになる仕事に就いたほうが

俺は

生きている価値があるって

考えてみる


マンゴー味もいいけど

ビターチョコレート味もいいんじゃないかな

って


(こちらに続きます)







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