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ラブレタークラブの活動①『「あぁごめんね、君の自転車に』


学期中は満杯になる駐輪場も

夏休みの間は

部活連中だけだから

わりとまばらで


毎朝決まって俺は

練習が始まる30秒前に

ガチダッシュでチャリを停めて

マジでスライディングする勢いで

グラウンドに滑り込む


1秒でも遅れると監督にしばかれるからね


他の部員はみんな学校の前までバス通学だけど

俺はチャリ

こんなギリでOKなのも

チャリの特権


三年の先輩たちが引退して

俺たち一年もようやく

"まともな練習"を

させてもらえるようになった


その練習も

だいたい昼過ぎには終わって


そういえば一学期の終わりくらいからかな

帰るとき

俺のチャリに必ず

モスグリーンのちょっと高そうなチャリが

もたれかかってて


ときにはそのハンドルが

俺の愛車のハンドルと絡まったりして

引っ張り出すのに一苦労する


こっちは練習で疲れてんの

ノック何本受けたと思ってんだよ

チャリ引っ張り出す体力なんてもう

残ってねえから


早く帰ってアイス喰いたいんだが


ちょいちょい停める場所を変えたりして

それでも

帰りには必ずもたれかかっている


100台は停められるだろって駐輪場の

端っこに

2台ぴったりくっついて停まってる

なんか変じゃね?


きょうもまた…

あれ…?


俺のチャリのカゴに

白い封筒が…


オモテには俺の名前

ウラにはなんだか女子っぽい名前


そうくるか


きやがったか


ほかの部員に見られないで良かった


封筒を手に取り

しばらくぼうっとしていると


黒髪で

青白い顔

細いからだつきをした

女子が

こちらに向かってくる


「あぁごめんね、君の自転車にもたれかかっちゃって」


そう言いながら

モスグリーンの高級車を

引き出して


強い日差しを気にするそぶりもなく

すぅっと門のほうへ


残された俺は

白い封筒を

グローブに触れて汚れないように

とりあえずバッグの端に差し込んで


それから

門の前でバスを待ってる

俺よりやきゅうの下手な連中をからかいながら

アイスを買いに

コンビニへダッシュ


普段は買わない

抹茶アイスが喰いたい気分



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続きが書けました。よろしかったら。






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