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本屋さんの未来はあるか?〜書店主導の出版流通改革で新会社 株式会社ブックセラーズ&カンパニー〜紀伊國屋書店とCCC、日販

昨日、本を愛する読書ファンとしては見過ごせない興味深いニュースを目にした。

「紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売は、書店主導の出版流通改革の実現に向け、共同出資会社「株式会社ブックセラーズ&カンパニー」を10月2日に設立した」


この取り組みの端緒は今年6月23日に紀伊國屋書店、CCC、日販の3社が書店主導の出版流通改革に向けた合弁会社設立に向け、基本合意契約を締結したところから始まっている。


これまでの出版業界、いや僕らに最も身近な書店業界と言う方がいいだろうか、は日販やトーハンといったいわゆる取次が、全国の書店に配本をするというスキームがメインで成り立っていた。

しかし、amazonなどのネット通販で手軽に本を買えるようになったり、
スマホの普及によりYoutubeの動画やSNSなどのインターネットコンテンツが
「本を読む」という時間を消費者から奪い取ることで、
「本を読む」人口が少なくなっていき「本が売れなく」なってきていた。

そんな状況でも、出版社はどんどん本を作って取次を通して配本してしまえば、とりあえずの売上は立つように見えるものだから、出版点数はかつてないほど増えているという。
その一方で、実際に本は売れなくなっているものだから、取次からしたら書店からの返品は増えている。
だったら、売りたい本を沢山売ってくれるところにだけ配本すればいいや、
とばかりにベストセラー本は大型書店では山積みなのに、町の書店では一冊も入荷していないということも起きていた。

そうした、業界のそもそもの仕組みが上手く回らなくなってきた結果、小さな書店はどんどん町からなくなって、都心部の大型書店しか生き残れないようになってきている。

それでも読書が趣味で本を愛している人々もある程度はいる。
そうした読書ファンのニーズに答えるために、取次を通さず出版社から直接仕入れて「好きな本を売る」小さな書店も少しづつ出来てきた。

そう、まさに書店業界も死に絶えてしまう前に、この文化を守るための新しい仕組みが出来ないのかという草の根の動きはあった。

今回のこの大手3社の取り組みは、そういう新しい潮流を大きなうねりへと変えて、業界のこれまでの悪習(というと怒られるだろうか)を変えていく力になるとしたら、読書ファンとして歓迎したい。

実際、僕の住む町では、特急の止まる最寄り駅ではかろうじて紀伊國屋書店が残ってくれている。
だけど、各駅停車しか止まらない最寄り駅は数年前に駅前本屋が閉店してしまって、書店がなくなってしまった。
県立の有名進学高校の最寄り駅でもある文教地区なのに、町の本屋がないという悲惨な状況だ。

このスキームに紀伊国屋書店が主導で入っているのは素晴らしい。
また、本来取次がメイン業務であるはずの(書店経営もグループとしては持っているが)日販も、このスキームに協力する英断は拍手をしたい。
出来れば日販だけでなく、この場では近視眼的な損得は横においてトーハンも参加してくれれば良いのだけど。

そんな中で一点だけ首をかしげたいのがCCCの参画か。
本当に全く個人的な偏見で申し訳ないが、CCC=TSUTAYAは本を愛しているような印象がこれまでなかったからだ、残念ながら。

例えば、某自治体の公共図書館の運営絡みの諸々とかもあまり感心しないような話があったと記憶している。
また、駅ビル施設内の出店とかでも、あまり書店にとっていい環境ではないようなところもある。
例えば、JR京浜東北線 浦和駅北改札口と繋がっているTSUTAYAは酷い。
書店内の通路が、駅改札出入り口の通路になっているので、人の通行が多すぎて、ゆっくり平積みの本を見ていても、急ぎ足の通勤客達との接触が多く、ゆっくり本を見ることもできない。
もう何年も同じ状況なので、書店としての心地よい環境には全く目を向けていないとしか言いようがない。
彼らは「本」というファッションアイテムを使った知的キラキラムードを金儲けにしようとしているだけなのではないか、とまで思っている。
まぁ、これからの彼らの取り組みを見守るしかないのだけど。

とにかく、今回の取次主体の配本システムから、書店が自由に売りたい本を直接仕入れることが出来るようなスキームで、結果として町の本屋さんが増えることがあれば、それは大歓迎だ。
もう力尽きてしまった書店は助けることが出来なかったが、新しいスキームで書店経営がこれまでよりは好環境になることを祈りたい。

書店業界の内情も知らない業界とは全く無縁の、本を愛するイチ読書ファンとしての意見でした。

<了>

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