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絶望の処方箋

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絶望した時の処方箋として。
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記事一覧

「取り返しのつかなさ」に対するささやかな救済(矢田海里『潜匠 遺体引き上げダイバ…

主人公の吉田浩文さんは、祖父の代から潜水業を営む一家の三代目として生まれた。その意味では…

杉原 学
3年前
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寛容性を失いつつある日本を救う処方箋(横山慶太『日本一、大まかな娘。アイラブ お…

何をするにもおおまかな「おおま かなこさん」の日常を描いた、いい意味で「どうでもいい」行…

杉原 学
3年前
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生命を捨てるぐらいなら言葉を捨てろ(大熊玄編『はじめての大拙』を読んで)

「読みやすさのために内容を犠牲にしない」という編者の姿勢がにじみ出ている気がして、とっつ…

杉原 学
3年前
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動物も、死者も、自然も、働いている(梨木香歩『家守綺譚』を読んで)

夢とうつつの境界線に迷い込んだような、不思議な気持ちにさせられる物語。でもほんの少し前ま…

杉原 学
3年前
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バカバカしい偶然ほど深い傷を残す(平野啓一郎『マチネの終わりに』を読んで)

いわゆる大人の恋愛物語だが、この中で語られる「時間論」も興味深かった。 ところで、結婚式…

杉原 学
3年前
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「死に方」を考えることは「生き方」を考えること(小澤竹俊『今日が人生最後の日だと…

「あした地球が滅びるとしたらどうする?」 誰もが一度はこんな話題で盛り上がったことがある…

杉原 学
3年前
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「幸せとは魂の次元で到達するもの」(バート・ヘリンガー著、谷口起代訳『いのちの営み、ありのままに認めて』を読んで)

訳者が述べているように、ここでの<いのち>とは、いわゆる個人としての「自己」のことではない。「自己」の背後にある、「私たちが抗うことのできない大きな力」、「すべての固有の生命の源」、それを<いのち>と呼んでいる。 本書で語られるのは、その<いのち>の営み、つまり「魂の秩序」についてである。それはふだん、常識や道徳といった「社会の秩序」に覆い隠されているが、にもかかわらず、私たちの人生に決定的な影響を及ぼしている。 「社会の秩序」の中では理不尽としか思えない出来事も、「魂の

「天才」を持って生まれた人間の宿命(団鬼六『真剣師 小池重明』を読んで)

「本を読むと眠くなる」というのを利用して、読書を睡眠導入の儀式に利用している杉原です。 …

杉原 学
3年前
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「悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか」(夏目漱石『こ…

『こころ』との出会いは、高校の教科書に載っていたものを読んだのが最初であった。おそらく、…

杉原 学
3年前
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苦しみはよりよく生きようとする人間の証(吉野源三郎、羽賀翔一『漫画 君たちはどう…

異例のヒットを飛ばした漫画。ご存知のとおり、1937年に出版された『君たちはどう生きるか』を…

杉原 学
3年前
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人生の袋小路にいる人へ(田中慎弥『孤独論 逃げよ、生きよ』を読んで)

僕が田中慎弥氏のことをはじめて知ったのは、テレビで放映された芥川賞授賞式の映像でだった。…

杉原 学
3年前
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内なる自然性を信頼する(星野文紘『感じるままに生きなさい』を読んで)

実に僭越ながら、拙著『考えない論』を彷彿とさせる内容で、終始ウンウンとうなずきながら読了…

杉原 学
3年前
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人生は一度しかない(藤子不二雄『まんが道』を読んで)

これを読んでいるあいだは、本当に青春時代に戻ったような気持ちになってしまった。けれども、…

杉原 学
3年前
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「よし、駄目になってやろう」(岡本太郎『自分の中に毒を持て』を読んで)

僕の人生に最も大きな影響を与えた一冊。当時勤めていた会社を辞めたのも、今思えばこの本の影響が大きかったような気がする。それだけ大きな力を持った本だが、逆に言えば危険な本でもある。 やっぱり人にはそれぞれの性質というものがあるから、岡本太郎のような生き方、考え方が合わないという人はいるだろう。いや、そっちの方が多数派だと思う。 しかしこの本は、おそらくそういう人をも巻き込むだけの熱量を持っている。その熱量に浮かされて、「よし、オレもいっちょ会社を辞めて危険な道に進むぞ!」と