こんにちは。
石垣島川平で『ベーカリーピナコラーダ』というパン屋を営んでいる、
新貝ひな子です。

アラシロミホちゃんから、バトンをいただきました。

ツヤ子さんとの出会い

「なんとなく顔も似てるし、行ってみたら？」

西表島での民宿ヘルパー生活を終えても帰りたくなさそうな私に、知り合いがそう言って紹介してくれたのが、西表古見にある『マナの店』でした。
(いまは"農家民宿"っていうスタイルになっているみたいですが、当時はパンを作って売ったりもしていました。)

「二日間よろしくお願いしますっ！」
「じゃ散歩でもしますか。ひなこさん。」
「は、はいっ！」

ツルリンとしたこざっぱりした農家着の女性。
ツヤ子さんとの出会いです。
海に夕陽を見に行くとかでもない、ただ砂利道を歩く、という、
なんでもない散歩をしました。

西表島のさらに果ての島に辿り着いたような気持ちで歩きました。

なんだ？！この香り

翌朝、言われた時間に工房に行くと　嗅いだことのない香りに包まれていて、朝の光の中に、てぬぐいをキュッとかぶったツヤ子さんがいました。

「さっ、やりますよ」
ツヤ子さんは倍速モードでした。

ハサミでシュシュっとパン生地に切れ目を入れ、
生地に何かを包み、丸めて天板にのせる。
卵をハケで塗り、胡麻をかけ、オーブンに入れる。
オーブンから出す、カゴに盛る。
ものすごくテキパキと、作業を続ける。

すこしむらさきがかったベージュの生地は胡桃パンで、
この嗅いだことないような知ってるような香りは酵母なんだ…
と、香りの正体に気がついただけで、パンがどんな工程で作られて、
いまなにをしているのかは、わからなかった。

ハサミでシュシュ、のとこをやらせてもらったけど、
ぶしゅっと生地のなかから空気が抜けただけで、ハサミは入らなかった。
私が丸めようとすると、生地はしわくちゃに元気がなくなり、
ツヤ子さんがやると、クルクルと勝手に生地は丸くなる。
魔術か魔法だ…と私は茫然とした。

気がつくと、人が集まってきていた。パンは焼かれ、ぴかぴかの生まれたて木の実のような色になって、茶色の紙袋に入れられていく。
散歩のとき、他の人には1人も出会わず、地の果てみたいに思っていたこの場所に、人が絶え間なくやって来る。

不思議だ。
パンが持つ魔法なのか。
皆、うれしそうに帰っていく。
お客さんがすべて帰り、パンもなくなった。

「では、ひなこさん。昼寝にしましょう。」
そう言ってツヤ子さんは、機織り機のとなりで急にゴロンと寝転がり、寝てしまった。
私も寝転がり、なんだかすこしおもしろい気もしたけど、笑う暇なく寝てしまった。

その後

私は東京に戻り、飲食店、パン屋、ホテルでのペストリー、またパン屋といろいろなチームで働きました。
すっごくワクワクしたこともあり、西表島の景色も忘れるかと思ったのですが、自分でも驚きのしつこさで、ひそかに企んでいました。

離島で小さいパン屋をやりたいと。

あの日の光景。
酵母の香り。朝日を浴びてパン生地を丸めること、
できたパンの魅力的な色、形。
ツヤ子さんが魔法使いっぽく見えたこと。
朝はやくから働いて、日をたくさん浴びた床にゴロンとする感触、
気持ちよい風がふいていたことなど。

いまの私の暮らしはあの日の中にあります。

と、思い入れたっぷりに、
ピナコラーダ開店のときにツヤ子さんに語りましたが、
ツヤ子さん、私を覚えてなかったです。
たくさんの人が来てたのかな。笑

魔術師にはまだなれていません、
顔はなんとなく似てると、言われたことあるので、素質あると
信じています。

きび砂糖の発酵パンケーキ

インスタントドライイーストを使って作ります。
発酵過程とイースト独特の香りが楽しめます。

◎材料
牛乳：100cc
卵：1個
きび砂糖：25g
ドライイースト：3g
塩：2g
ここまでを混ぜます。

薄力粉：110g
全粒粉：20g
も入れて混ぜます。

冷たい牛乳なら40分、人肌に温めた牛乳なら20分くらいで発酵完了です。

これくらいプクプクになったらおっけい！！
あたためたフライパンで、極弱火で焼きます。

繋ぐバトン

次のバトンは、『pool』でおいしいお菓子を作っている、かすみちゃん。
緻密なお菓子作りしている、
かすみちゃんの頭の中
すこしでも見てみたいです。
かすみちゃん、よろしくおねがいします！

▼「縁をつなぐレシピ」記事集です！

この記事を書いた人

新貝ひな子
2000年　西表島にて
パン屋になるきっかけとなる出会い
-
東京に帰り、修行
-
2008年　
現在パートナーの松本と出会う
ベーカリーピナコラーダ開店

Instagram：@shimabananacream

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