1904_読書メモ_サマリー

【#読書メモ】たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

マーケティング全体を俯瞰しつつ、効率(費用対効果)と効果(投資対効果)の2軸で、どう攻めていこうかを戦略的に考えるための良書。

【特に気になった言葉まとめ】

【目次】
序章 顧客起点マーケティングの全体像
第1章 マーケティングの「アイデア」とN1の意味
第2章 【基礎編】顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する
第3章 【応用編】9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する
第4章 【ケーススタディ】スマートニュースのN1分析とアイデア創出
第5章 デジタル時代の顧客分析の重要性

【著者プロフィール】
西口 一希
1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパンに入社。マーケティング本部に所属、ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任し、パンパース、パンテーン、プリングルズ、ヴィダルサスーン等を担当。2006年ロート製薬に入社、執行役員マーケティング本部長としてスキンケア商品の肌ラボを日本一の販売数量の化粧水に育成、男性用ボディケアブランドのデ・オウを開発、発売し1年で男性用全身洗浄料市場でNo.1に育成するなど、スキンケア、医薬品、目薬など60以上のブランドを担当。2015年ロクシタンジャポン代表取締役。2016年にロクシタングループ過去最高利益達成に貢献し、アジア人初のグローバル エグゼクティブ コミッティ メンバーに選出、その後ロクシタン社外取締役 戦略顧問。2017年にスマートニュースに参画。2019年現在スマートニュース 日本および米国のマーケティング担当 執行役員(Senior Vice President of Marketing Japan and USA)および Strategy Partners 代表取締役、Marketing Force 代表取締役(共同代表)。



【特に気になった言葉①】

独自性と便益を兼ね備えた「アイデア」があるかどうかが、マーケテイング上で最も重要な要素
※独自性:他にはない特有の個性であり唯一無二とも言い替えられる、既視感のない特徴
※便益:顧客にとって都合がよく利益のあることを意味します。それを利用することで得られる有形、無形の価値であり、「便利、得、有利、快、楽」。

●独自性と便益の4象限
ーアイデア:便益あり、独自性あり
ーコモディティ:便益あり、独自性なり
ーギミック:便益なし、独自性あり
ー自然破壊:便益なし、独自性なし

●アイデアには大きく2つある。
プロダクトアイデア:消費やサービスそのもの。
コミュニケーションアイデア:商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段。

出典:たった1人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング

顧客への利益を中心におきつつ競合を意識し、アイデアをどう考えてどのように伝えるべきかを導き出すためのいいフレームだなと思った箇所。虫の目だけにならないように、このフレームを意識したい。



【特に気になった言葉②】

特にデジタル系のビジネスでは、行動データ分析とその活用は徹底していても、心理データ自体を取っていないことが多く、成長機会を大きく失っています。筆者が参画しているスマートニュースでも同様でした。行動データに心理データを結びつけることで大きく飛躍することができるのです。
※行動データ:購買情報、アクセス情報、位置情報など
※心理データ:ブランド認知・選考度、属性イメージなど

出典:たった1人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング

たしかに、行動データだけでは、「どんな状態」で「どう気持ちが変化したか」などの心の動きは捉えにくいですよね。行動データだけだとA,Bテストをやり続けるだけの対処療法になり、心理データを上手く使えると原因療法もできるようになるのかなと思った箇所。



【特に気になった言葉③】

新規顧客の獲得を狙う際には、認知の有無とブランド選好の有無によって獲得コストが大きく違ってきます。例えばデジタルマーケティングの顧客獲得コストをセグメントごとに比べると、認知・未購買層を100%とした場合、未認知層では獲得コストが160-220%程度に上がります。また、ブランド選好のある離反層と認知・未購買層に対して、ブランド選好のない離反層と認知・未購買層で比べると、獲得コストは200-300%になります。

●このフレームワーク(9セグマップ)は、これまで統合的に見ることのできなかった、顧客拡大・売上拡大という販売促進的な変化と、顧客のロイヤルティ構築といったブランディング的な変化を同列で可視化・定量化し、統合的なマーケティング議論を可能にします。

●販促活動として値引きなどの貨幣的価値の訴求は即効性がありますが、本来の「プロダクトアイデア」とは異なる貨幣的価値を押し出した場合は、左から右への移動は早い一方で、下段層の人数自体が増えます。

●積極ロイヤル顧客に対してポイント制などのロイヤリティプログラムを打ち出したことで、いつの間にかにポイントが目的になってしまい、ブランド選好が失われる。

●販売促進でしかないプロモーション施策を繰り返せば、消極ロイヤル顧客が増えますが、その消極性を補う参入障壁は低くなります。他ブランドの参入を防ぎ、消極ロイヤル顧客を守り続けられるなら良いですが、そうでないなら、短期間に消極ロイヤル顧客を失いビジネスを損なうリスクは高くなります。

出典:たった1人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング

この9セグマップは、短期的&中長期的な顧客の状態変化を俯瞰できる興味深いマップだなと思った箇所。横軸は効率軸(費用対効果)、縦軸が効果軸(投資対効果)とも言えるのかも。



おわりのつぶやき

この本全部吸収したいから定期的に読み返したい。




【その他に気になった言葉】


・顧客ピラミッド(5セグマップ):未認知顧客→認知・未購買顧客→離反顧客→一般顧客→ロイヤル顧客
・9セグマップ:・5セグマップ×ブランド選好軸(高低)
・N1分析顧客を把握してないマーケティングは必ず、部分最適化の連続から縮小均衡に陥ります。見方を変えれば、拡大するデジタル世界で顧客を捉えるための新しい手段手法に囚われて、ますます顧客から遠ざかっているのです。

商品やサービスに、届けたい顧客がいる以上、マーケティング上で機能する強い「アイデア」を導き出すには、実在する1人の顧客を深掘りすることが唯一有効な方法です。その準備として、顧客分析のフレームワークで対象ターゲット全体を把握して「どのセグメントのN1顧客を深掘りし、何を知りたいのか」を設定します。具体的なN1設定をするからこそ、具体的な「アイデア」に繋げられるのです。

序章のまとめ
1.「顧客起点マーケティング」は1人の顧客を起点にビジネスを構築する
2.マーケット全体を顧客セグメントに分類し、可視化・定量化する
3.N1分析から「アイデア」を生み出し、定量的に検証して投資する

独自性が弱いと、コモディティ競争に陥ってしまうのです。

「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、、君は15本贈るかい?そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。(スティーブン・ジョブズ)

コミュニケーションの便益とは、広告を受け止める対象顧客が具体的な便益を受け取れることを意味します。広告に接触すること自体が楽しい、面白い、心地よいといったプラスの要素をもたらすか、とうことです。

コミュニケーションアイデアは、独自性で注目を集めたとしても、その便益がプロダクト自体の便益に結びついていないと機能しません。広告の面白さだけが便益として受け止められ、プロダクトの便益にひもづかず、購買に繋がらないのです。

必ず「プロダクトアイデア」ありきです。いくら「コミュニケーションアイデア」が独自性と便益ともに優れていても、「プロダクトアイデア」が脆弱である場合は、良くて一過性の売上を確保するに留まり、事業成長にインパクトを与えることは難しいです。「プロダクトアイデア」を固めた上で、その状況によって、「コミュニケーションアイデア」の役割が決まります。

最も重要な、便益と繋がる独自性を維持するために、「プロダクトアイデア」をアップグレードしながら「コミュニケーションアイデア」でコモディティ化を避け、いかに追随商品やサービスに対する「プロダクトアイデア」を強化していくか……という役割をマーケターは担うことになります。大きく言えば、「プロダクトアイデア」への理解と共感、その体験こそがブランドを創るのです。「コミュニケーションアイデア」でブランドを創るのではないのです。

マーケティングの成功の必要な3要素
1.プロダクトアイデア
2.コミュニケーションアイデア
3.早期の認知形成

N1を起点とするマーケティングはN1000として1000人を対象とするよりもはるかに重要です。例えば、誰かにクリスマスプレゼントを選ぶとき、以下の3つの選択肢の中で、いちばん喜んでいただける自身があるのはどの場合でしょうか?
1.あなたのお子様、奥様、ご主人、恋人のいずれか1人
2.あなたの同僚・同級生20人
3.4年生大学を卒業し、現在東京都在住の、世帯年収800万以上で子どもがいる専業主婦1000人

N1から離れると思考は浅くなる

マーケティングにも、プレゼント選びと同じ側面があります。成功するマーケティングは、すべてを〝個〟客ベース(N1)で考え、その生活までを深く理解することから始まります。企画やマーケティングは徹底的にN1起点で、平均や最大公約数ではない、独自性のある「プロダクトアイデア」や「コミュニケーションアイデア」を突き詰めていくことが重要です。一方で、マーケティングがプレゼント選びと違うのは、一人を喜ばせて終わってはいけないことです。「アイデア」をつかんだら、それが他の人にも有効なのかを量的調査やテストマーケットで検証して、投資を行います。

私たちの生活を作ってきた様々な商品やサービスのほとんどは「特定の誰か1人を喜ばせること・幸福にすること・便利になってもらうこと」

第1章のまとめ
1.マーケティング上の「アイデア」は、独自性と便益の組み合わせ
2.「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」は異なる
3.「プロダクトアイデア」の早期認知形成が強いブランドを創る

ロイヤル化した理由とトライアル理由は、多くの場合で異なっている。

現実的な問題として、N1分析で初回購買やロイヤル顧客化のきっかけを見つけても、現時点で再現性がないこともあります。例えば、10年前にカテゴリー初の商品として導入され、当時のセレブリティが使っていたので自分も使い始めて気に入ったから使い続けているが、今は類似品や競合品がたくさんある、といった場合です。使い続けているのは事実だけれど、そもそも購買のきっかけが当時のカテゴリーの新規性や流行に結びついていると、10年前と同じ訴求を新しい現代のセレブリティで展開しても、同じ結果は期待できません。

上位への働きかけほどCRMを中心としたターゲット絞り込み、1対1のコミュニケーションが必要となり、下位ほどリーチが広いテレビなどのマス媒体を活用したコミュニケーションが有効になってきます。

イノベーター、アーリーアダプターは、一般的に情報感度が高く、メディア接触も多いです。あらゆるカテゴリーにおいて「プロダクトアイデア」が際立っていれば、この層は初期の購買層に最も多く含まれます。一方で、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティは情報感度が低く、メディア接触自体も少ないか、もしくは新しい情報理解のスピードが遅いです。同じ情報を何度も提供しないと理解してもらえないので、接触の頻度が必要です。

第2章のまとめ
1.顧客ピラミッドを作成し、セグメントを特定した上でN1を抽出する
2.行動データと心理データから顧客化、ロイヤル顧客化の理由をみつける
3.セグメントごとに異なる戦略と具体的な5W1Hのマーケティングを立案

販促活動として値引きなどの貨幣的価値の訴求は即効性がありますが、本来の「プロダクトアイデア」とは異なる貨幣的価値を押し出した場合は、左から右への移動は早い一方で、下段層の人数自体が増えます。
(9セグマップについて)

積極ロイヤル顧客に対してポイント制などのロイヤリティプログラムを打ち出したことで、いつの間にかにポイントが目的になってしまい、ブランド選好が失われる。

プロダクトの便益に結びつかない広告は、広告自体の好感度は上がるものの、その商品を買いたいかどうかという態度変容を起こすことが難しいのです。それはマーケティングコストをかけて顧客から広告の好評を得たわけで、ブランディングではありません。

顧客はテレビCMへの評価と商品やサービスへの評価を分けることができないのです。

第3章のまとめ
1.9セグマップ分析で、販促とブランディングを同時に可視化する
2.ブランディングは計測可能であり、投資対象として科学的に議論すべき
3.顧客はダイナミックに競合商品や代替品を併用し、セグメントを移動し続ける

効果測定指標にはアプリのダウンロード数に加えて、Googleトレンドも用いました。筆者の経験では、テレビCMをきっかけに拡大するブランドは、CM放送直後に必ずブランド名の検索数が上昇します。今回は、まずCM放送から5分以内の検索数の上昇率を確認し、翌日にダウンロード増加数を参照して効果を検証しました。

第4章のまとめ
1.「プロダクトアイデア」の強みでマーケティングすることが重要
2.N1起点の「アイデア」のポテンシャルはコンセプトテストで検証できる
3.テレビCMもオンラインマーケティング同様にPDCAで効果を最大化できる。

アプリのビジネスで用いられるビジネスモデル「AARRR(アー)モデル」:ユーザー行動を、A(Acquisitionユーザー獲得)、A(Activation商品使用とユーザー活動の活性化)、R(Retention継続使用)、R(Referral他者への紹介や推奨)、R(Revenue収益化)の5段階に分けて、リアルタイムデータで可視化・分析し、「プロダクトアイデア」自体を様々な〝変数〟の組み合わせとして捉えるモデルです。利用継続ユーザーからの紹介や、得た収益を再投資することで、次の新規獲得を実現します。


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