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読書記録 230314 村田沙耶香「消滅世界」

先週は村田沙耶香さん「消滅世界」を読みました。

男性か女性か、既婚か独身か。出産経験があるか。読む人でかなり反応が変わってくるような内容だと思いました。他の方の感想を聴いてみたくなる本でした。あるいは嫌悪感みたいなものを抱く人もいるかもしれません。

夫婦間のセックスが「近親相姦」となっていて、実験都市では男性も「人工子宮」で妊娠でき、全ての大人が『おかあさん』になって、全ての子どもが「子どもちゃん」と呼ばれる世界。読み進めていくとこういう世界になる可能性があるのではという気持ちが強まっていき、話の中にどんどん取り込まれていく感覚に襲われました。

時代によって価値観とか家族の形も変わっていきますし、人工授精をはじめとする生殖補助医療の技術も進んでいます。自分が小さい頃と比べただけでもかなり変化があるので、きっとこれからも様変わりしていくのは間違いないでしょう。

だからこの小説の中のような世界になるのも可能性としてあるのでは、薄い皮膚一枚くらいのすぐ向こう側に、こういう世界がある気がします。それがとても怖いような気がするけれど、変化の流れの真っ只中にいたら気づかないかもしれません。あるいは気づかないようにする、気づかないふりをした方が楽なので、その世界を受け入れて暮らすかもしれません。

村田さんの話は正常とは何か、自分が正常の側にいると思っているのは本当なのか、というのを突き付けてくる感じがいつもしますが、この話もやはりそうでした。

男性子宮ができたら、男性は妊娠を自分の事としてきちんと考えるのでしょうか、妊娠や出産の辛さ、その間に仕事を休んだり辞めたりする事を考えられるでしょうか。でもこの小説の世界だと出産した後に続く子育ての大変さというものがなく、だのに経済的には男性と暮らした方が良いと思われる描写がありました。出産がどちらもできる事になったとしても、男女の格差はまだあるのでしょうか。

また現実の日本だと戸籍制度もあるので、小説の世界とあれこれ比べながら考えてしまいました。

そして現実では奨学金減免をちらつかせて子供を産ませようとする恐ろしさ。今の日本は「(人の心が)消滅(した政治家が動かしている)世界」ですね。




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