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詩『星月夜』


喪服
黒真珠
深海の底
水飛沫の尾
夜に放つ描線
散る空洞の花束
誰も着席しない船
博愛主義者への反発
感染する透明な微笑み
掬いあげたい永遠の愛情
指と指の間から逃げる時間
通夜のしじまを縫ってゆく糸
ぷつんと千切れてしまった感情
表面張力がこわれて溢れだした雫
もうどこにも泳いでいないあの指先
参列者の海に浮き沈みしている影法師
つづかない息継ぎと遺された命との儀式
途切れた体温の下降線そして変色した口唇
告げなければいけない長方形の柩へのことば
最期のお別れの時に捧ぐ蘇生した花を一輪
変わり果てた遺体の色と物のような死体
火葬場で躊躇する故人との永遠の別れ
静かに押し寄せてくるスポイドの潮
内側から採取してきた時間の細波
喉に突き刺さった小骨の想ひ出
飲み干した白い白いつちの塊
美化されてゆく記憶の断片
優しく想ひ出を包む花弁
筆ペンで書かれた名前
黒いインクの雨漏り
軋む空耳ハンドル
反響している声
揺れている顔
また流れ星
光る口笛
漕ぐ櫂
納骨



photo:1見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、twsnmpさん)

photo:2Unsplash
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word:未来の味蕾

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