こんにちは。かきもとみさです。私は世の中で数少ない女性M&Aｱﾄﾞﾊﾞｲｻﾞｰとして仕事をしています。

ここ最近のM&A案件は、事業承継系が多いです。

事業承継系の案件というのは例えば、創業社長や２代目、３代目社長が高齢化し、後継者がいないために「第三者承継＝M&A」を選択するというパターンです。

で、ここ最近いくつかM&A案件として売却に動く際に、「会社分割」をすることが結構あったので、そのメリットをお伝えしたいと思います。

詳細な法的手続きなんかは、いつか別途詳しく書きたいと思いますが、本日は「さわり」だけ。

事例１：事業をまるごと子会社へ移管し、子会社を譲渡するパターン

これは以前に手掛けた食品製造業者の案件でした。

創業は50年以上経過しており、本社と工場は土地も建物も自社物件がほとんどでした。

このときは、食品製造事業をすべてまるごと子会社化するという手法をとりました。

「すべてまるごと」なので、従業員も顧客も含め取引関係はすべて子会社へ移します。

但し、本社と工場の土地建物不動産については、親会社（既存会社）の所有のままにしました。

このときのメリットをまとめてみます。

メリット１：買手が買いやすい会社の譲渡案件になった

この会社分割により、譲渡対象は「新設された子会社の株式」となりました。

つまり、M&A始動しはじめたあとに設立された会社の譲渡なので、過去の簿外負債やリスク、過大計上在庫などを心配するようなことは基本的にはなく、買手の買収監査（デューデリジェンス）は非常にラクでした。

実際、このときに買手として成約した企業は、グループ会社にアメリカに上場会社を持っていた会社で、監査が厳しいようでしたが、今回は新設会社の譲受であったため、「設立4ヶ月の会社を買うんだから、めちゃくちゃありがたい」と仰っていました。

メリット２：子会社なので契約関連はすべて継承できる

譲渡対象となった子会社に、事業はすべて移管したため、顧客との取引関係はすべて子会社へ継承することができます。契約のまき直しは不要でした。

これが「事業譲渡」スキームだと、契約は事業運営する会社名義にすべてまき直しになるのでめちゃめちゃ大変です。

ちなみに、この子会社を株式譲渡しオーナーが既存親会社（もともとあった会社）ではなくなるわけですが、もともと親会社が締結していた契約関連は新オーナーに変わっても継承されます。

メリット３：親会社（既存会社）は不動産賃料を得られる

この会社分割をしたときに、子会社が事業で利用する本社と工場の土地建物については、「親会社が子会社に貸し、親会社は賃料を得る」というスキームを作りました。

これで、しばらくは引退する社長は安定収入の源を確保することができました。

長くなりそうなので、別事例は別記事にしたいと思います。

M&Aｱﾄﾞﾊﾞｲｻﾞｰから見た所感・・・

ちなみに、M&Aｱﾄﾞﾊﾞｲｻﾞｰを務めた所感としては、この会社分割により「子会社」が設立完了してからの方が買手への提案はぐっとしやすくなりました。

というのは、買手探しを始めた頃の案件概要書には、「子会社設立予定」という計画段階でしか説明ができず、親会社の財務諸表に基づいて譲渡対価を設定し、買手からのフィードバックを貰っていました。

しかしそれでは、買手からすれば「結局、いくらの価値の会社を、いくらで買えるの？」ということが曖昧だったと思います。

子会社が正式に設立し、子会社が親会社から継承する資産と負債の内容が明確になった際に、改めて案件概要書を改定したのですが、こちらの方が「売り物の中身は何なのか？」がはっきりするのですごく進めやすかったし、買手候補からも納得を得られやすかったです。

実際、譲渡対価は、会社分割した際に子会社へ移した資産の額（負債は継承しなかったので資産＝純資産額）のままで、全く交渉なしで成約。

改めて、（売却側は）「売るモノは何なのか？」、（買収側は）「買うモノは何なのか？」をハッキリさせることで話はスムーズに進むということを実感した案件でした。

何か参考になれば幸いです。

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