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さよなら、僕のマンハッタン

返し切れないくらい大きな愛を受け取りながら、不器用に足踏みばかり。どうやって返していいか分からないまま、愛が去って行くのを見守った。そして、またもう一つ愛が去ろうとしている。私はただ見守るだろう。今更本人に返せる程の大きな愛の持ち合わせはない。ただキチンと見守ろうと思っている。


先月初旬、父があまりに呆気なく世を去った。何をどうすれば良いのか分からないまま、息子と二人三脚で父を葬った。それまで子供だと思っていた息子が頼れる大人となっていて、それに助けられる自分に老を感じた。嬉しい気持ち半分、半分は寂しかった。

その後私を襲ったのは、虚無感と音もなく忍び寄る病に対しての恐れと、脱力感と何もしたくない現実逃避。

だけど…運命はそっとしておいてはくれないらしい。

叔母から実母の体調不良を耳にする。今まで面倒を見てくれていた叔母も高齢となり身体の自由が効かなくなって、叔母から実母の後見を託された。

我が子として可愛がってくれた養生父母も亡くなった今、誰にも遠慮することなく、お世話出来る時には実母は最後の処置を病院に尋ねられるほどの末期の患者となっていた。来週、その実母と10年振りに再会する予定になっている。

そんな引き継ぎに継ぐ引き継ぎをしながら、この頃を過ごしていた。

映画を観ても、ドラマをみても、アニメをみても、音楽を聴いても、何も感動出来ずに、心が乾いて死んでしまったのかと思ったが、今朝久しぶりに泣いた。父が亡くなっても泣けなかったのに、今朝泣いた。

映画『さよなら、僕のマンハッタン』。2017年公開アメリカ映画。『アメージング スパイダーマン1   2』のマーク ウェップ監督。カラム ターナー主演。

ネタバレしちゃうと…育ての父と生物学的父の両方の愛に見守られ育まれていた事実に気づくお話。まさに私と同じ養父と実親の間にいる子。そしてそんな親たちを見守る子の温かい眼差しがあるお話。

父役は『007』を演じたピアース・ブロスナン。演じるは出版業界の成功者役。実父役は『恋のゆくえファビラスベーカーボーイズ』のイケメン、ジェフ ブリッジス。演じるは息子を影で見守る才能ある作家役。母役は『セックスアンドザシティー』のミランダ役のシンシア ニクソン。家族を大事にしながらも、密かに子の実父に思いを募らせる優しい女性。華やかな出演者たちと、華やかなニューヨークの出版業界の一面を見ることが出来る映画。

大学を卒業したばかりで、自分が何をしたいのか分からずに漂っている作家志望の青年をカラムターナーが演じている。サイモンとガーファンクルの『ニューヨークの少年』の楽曲がまるで彼を応援するかの様に流れる。

自分の恋愛と両親の恋愛が絡み合いながらも、糸をほぐす様な結末へ向かって、まとまりよく描かれている。

読書好きの人々の知的な世界を、詩や小説の一節を引用したり、哲学的な言い回しのセリフを随所に織り込み表現している。

監督は数々の有名アーティストのミュージカルビデオを制作してきた方で、主人公の青年の持つ子供っぽさや素朴さ、大人の狡さや賢さを表情豊かに撮影している。

ニューヨークの街角、ストリート、公園、レストランやバー、アパートメントの階段、窓越しのショップ…私の思い出の風景とも重なる。


幾つになっても、親からみれば子供。だけど年月は子供を大人にし、大人の子供はいつしか親を見守る存在になっている。子供の幸せを願い希望を見出し見守って来た日々がいつしか、子供に見守られている日々になっている。

愛は私の手からただ、こぼれていく様にみえて、やるせなさを感じていたが、かたや、愛があふれ出てもいることに気付かされた。

涙の理由。私は今も両親と実母並びに子供に愛されていることを思い出し、感じることが出来たから。

そして、やっと久しぶりに noteが書けた!













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