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私的読書(劣化復活版)

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個人的読書メモ、読書記録、読書感想です。 かつて、1997~2003年あたりに、『私的読書』というタイトル付けでけっこう力を入れて読書レビューを書いていました。その劣化復活版です。
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記事一覧

読書:『この密やかな森の奥で』キミ・カニンガム・グラント

読書:『この密やかな森の奥で』キミ・カニンガム・グラント

 なんだか全然誰にも読まれないし読書レビューももう書くのをやめようと思っていたのだけど(というか、モチベーションが続かない)、この本はなんとなく書いておきたいことが少しだけあったので。

 森の奥で世間から隠れ住んでいる父娘。事情はよくわからない。怪しい隣人がいて、不穏な雰囲気が通奏低音のように漂っていて、いかにも何かとんでもないことが起こりそうなのだけど、それが……全然起こらない。そんなサスペン

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「もういっぽん!」23巻まで読んでしまいました。

「もういっぽん!」23巻まで読んでしまいました。

 現在の最新刊23巻まで、ついに読んでしまいました。
「ついに」というのは読み終えたく(追いついてしまいたく)なかったから。先を読みたくて仕方がない、しかし読み終えたくない。したがってできるだけゆっくりと読む。そんな作品です。
 絵もていねいでで、背景の細かいところも見逃せないのですよね。意外と重要な表現が背景に描かれていたりする。なのでますますゆっくり読むことになってしまう。

 柔道マンガで青

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読書:『猫まち 366にち 詩集』山崎るり子

読書:『猫まち 366にち 詩集』山崎るり子

書名:猫まち 366にち 詩集
著者:山崎るり子
出版社:ふらんす堂
発行日:2022/09/16
https://furansudo.ocnk.net/product/2898

 一日一篇。366日毎日書き続けた詩篇をまとめた本。
 この詩集の特異なところは366篇すべてが猫に関する詩だということ。
 どのページを開いても猫がいる。
 たまにそういうことがあるのだけど、この本を知ったとき、これ

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読書:『フォーリング―墜落―』T・J・ニューマン

読書:『フォーリング―墜落―』T・J・ニューマン

 ハイジャックもの。機長の家族が人質に取られて、機長は毒ガスを機内にまくよう脅迫される。
 ハイジャックと言えば飛行機内にテロリストが乗り込んで人質を取るのが常套で、この小説ではテロリストが「基本的に」飛行機の外にいて飛行機の外から機長を操ろうとするのが新しいと言えば新しいか。

 けっこう鳴り物入りのような印象があって、図書館でもバンバン予約が入りまくっているので読んでみたのだけど……どうなんで

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読書:『初めて書籍を作った男 アルド・マヌーツィオの生涯』アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ

読書:『初めて書籍を作った男 アルド・マヌーツィオの生涯』アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ

 アルド・マヌーツィオ。いや、すごい人ですよ。書籍にページ数を初めて付けて普及させた男。書籍に目次を初めて付けて普及させた男。持ち運びできる文庫本サイズを生み出したのもこの人。書籍用の美しいフォントを用意し、強調のためフォントを変えるという手法を生み出したのもこの人。うんぬんかんぬん。
 書籍の父と呼ばれるのも言わずもがな。この人がいなければ、もしかしたら現在の形の書籍は存在していなかったのかもし

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読書:『脳釘怪談』朱雀門出

読書:『脳釘怪談』朱雀門出

 実話怪談。おおこれは面白い、というのと、なんかもういいよというのと。差が激しい。
 人から聞いた話が多数なので、実際のところかなり脚色やら思い違いやらが、やはり入っているのだろうとは思いますが。その話した人自身が脚色しているということもあるだろうし。

 実話怪談らしく、説明のつかない話ばかり。
 まあそうだな、怪談ってこういうものだったよな……などと思いながら読み進めた。小説に慣れてしまうと逆

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読書:『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』アン・ケース、アンガス・ディートン

読書:『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』アン・ケース、アンガス・ディートン

書名:絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの
著者:アン・ケース、アンガス・ディートン
訳者:松本裕
出版社:みすず書房
発行日:2021/01
https://www.msz.co.jp/book/detail/08963/

 ちまちまちまと長いあいだ読み続けていた本。
 ずいぶん時間をかけたわりに……

 絶望死というのは、自殺、薬物中毒、アルコール中毒などによる死のことだと定義している

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読書:『ブルックリンの死』アリッサ・コール

読書:『ブルックリンの死』アリッサ・コール

 タイトル通り、ブルックリンが舞台。この町で生まれ育った黒人女性シドニーと、最近この町に越してきた白人青年のセオ。正反対の立ち位置にいるとも言えるこのふたりの視点で物語が進んでいく。

 冒頭からこれは人種差別問題を扱った作品だとすぐにわかる。それはその通りで、随所で人種差別問題がえがかれる。シドニーはむろんそれに憤っており、セオはそれに理解を示す立場。
 セオがブラック・ライヴズ・マターを派手に

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読書:『みんなの怪盗ルパン』

読書:『みんなの怪盗ルパン』

書名:みんなの怪盗ルパン
著者:小林泰三、近藤史恵、藤野恵美、真山仁、湊かなえ
出版社:ポプラ社
発行日:2016/3
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008048.html

 ルパンもの。ホームズ関連あり、子供時代あり、実際の事件ものあり……趣向がバラバラで、そこのところは楽しめる。

 一方、児童向けとはいえ、ご都合主

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読書:『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒

読書:『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒

書名:ラブカは静かに弓を持つ
著者:安壇美緒
出版社:集英社
発行日:2022/5
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771784-6

 評判が高く、気になっていた作品。
 音楽教室のレッスンで使用する楽曲に著作権使用料がかかるか否か。数年前にニュースでも流れ、今現在もまさに係争中の案件ですね。ほ

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読書:『九時から五時までの男』スタンリイ・エリン

読書:『九時から五時までの男』スタンリイ・エリン

書名:九時から五時までの男
著者:スタンリイ・エリン
訳者:小笠原豊樹
出版社:早川書房
発行日:2003/12

 再読。この文庫が出た当時に読んだはずですが、まったく記憶に残っていなくて(面白かったかどうかも)ずっと気になっていたので読み返してみました。

 ストンとブラックなオチが来る短篇集。人間の本性がヌッと現れるタイプのブラックかな。面白いですね。幸せなオチは来ないので好みは別れるでしょ

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読書:『7分間SF』草上仁

読書:『7分間SF』草上仁

書名:7分間SF
著者:草上仁
出版社:ハヤカワ文庫JA
発行日:2020/3
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014482/

 草上仁さんの短篇は要するにショートショートなんですよね。長めではあるけれど。ユニークなアイデアでピシッと決まるオチ。SFとしてのアイデアも俊敏です。フレドリック・ブラウンのようだとかデビュー当時は言

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読書:『ミシンと金魚』永井みみ

読書:『ミシンと金魚』永井みみ

 認知症を患っていると思われる女性のひとり語り。と読み始めてすぐわかって、これはアレかな、他人が知るよしもない老人の頭のなかを若い作者が好き勝手に妄想した小説かなと意地悪な目線で読み続けたのだけど、確かにそれはそうに違いないと思うのだが(これもまた自分が患わなくては知る由もないことだけど、認知症の人の頭のなかはもっと混沌としているような気がする)、そんな意地悪に読んでもなおこれは面白かった。

 

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読書:『塞王の楯』今村翔吾

読書:『塞王の楯』今村翔吾

書名:塞王の楯
著者:今村翔吾
出版社:集英社
発行日:2021/10
https://lp.shueisha.co.jp/tatexhoko/

 戦国時代、穴太衆と呼ばれる石工集団が活躍していたという。石を切り出し、運び、積む。城の石垣を組み上げたのが彼らだ。
 石垣はただ積み上げているだけなのになぜ崩れないのか? 何百年ものあいだ。そんな疑問をもったことはないだろうか。それを可能にしたのが穴

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