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質の高い睡眠は究極のアンチエイジング

睡眠不足は脳を一気に加齢させる

身体にいい食生活を送り、太陽の光を浴びることと同じくらい重要なのは、「質の高い眠り」です。
睡眠は血圧と血糖値を下げ、ホルモンを調節し、代謝を促し、身体を強くしてくれます。
究極のアンチエイジングであり、脳を若く保てます。
睡眠不足になると、その反対のことが起きます。
睡眠時間が慢性的に4時間未満の人は、認知能力の脳年齢が一気に8歳も進むと言われています。
慢性的な睡眠不足は身体のあらゆるシステムに影響を及ぼします。

睡眠は糖尿病リスクを軽減~寝不足は血糖値を高める

動物実験でも人間の臨床試験でも、睡眠時間が減るとインスリン感受性(インスリンの効果)が低下します。
つまり、からだがより多くのインスリンを生成し、血糖値が高いままの状態が続くことになります。
アメリカ内分泌学会が発表したある研究によると、睡眠時間がたったひと晩、8.5時間から4時間に減っただけで、一夜にして代謝性肥満が生じるそうです。
これは、体重が9~14キロ増えた時の影響に相当します。
肝臓で糖と脂肪の産生が増えて、血糖の効率的なコントロールができなくなってしまうのです。
高血糖はやがて血管を傷つけ、脳を含む全身の器官に酸素を運ぶ血管の働きを阻害します(糖尿病)。

睡眠は脳内のゴミ掃除~寝不足はボケ原因物質を増やす

睡眠は脳を毎晩、脳脊髄液に浸すことで冴えた頭脳を維持しています。
睡眠中は脳脊髄液が脳内に滲み出し、有害な老廃物を押し流してくれるのです。
この老廃物には、アルツハイマー病患者の脳に見られる異常タンパク質「アミロイドβ」と「タウタンパク質」が含まれます。
たったひと晩でも睡眠時間が短いと、脳脊髄液中の「アミロイドβ」は30%、「タウタンパク質」は50%も濃度が高くなってしまいます。
これらの濃度が高いと、そのふたつが蓄積して凝集し、アルツハイマー病の特徴である「プラーク」と「もつれ」を形成しやすくなってしまいます。

睡眠とうつ病の関係

最近では、長引くうつ病の原因は睡眠障害にある、と結論づける研究結果も増えてきました。
睡眠とうつ病との関係は、つまるところ、脳の奥深くに位置する扁桃体に行き着くのかもしれません。
過敏な扁桃体は、ごくささいな出来事でも大きなストレス要因と捉えてしまうのです。
多くのうつ病患者の扁桃体は活発です。驚くべきことに、たったひと晩睡眠不足だっただけで、扁桃体が60%も反応しやすくなると主張する人もいます。
睡眠不足のときにイライラしやすい理由はここにあります。
睡眠が足りているときには、前頭前皮質の「理性の声」が扁桃体の働きを抑制します。
幸せを感じやすくなり、ストレスに強くなるのです。

カリフォルニア大学のマシュー・ウォーカー教授は、睡眠負債(毎日の睡眠不足の積み重なり)が社交生活に及ぼす影響について研究しています。
ウォーカー教授によれば、睡眠不足が蓄積すると人づきあいを避けるようになると言います。
それだけではありません。
引きこもりのような効果を生み、人づきあいを避けたがっているというシグナルを周囲の人間に送ってしまい、周囲があなたとのつきあいを躊躇してしまうのです。
社交生活を円滑にするためにアルコールに頼る人は多いですが、まずはその前に睡眠の質を改善しましょう。

睡眠時間はどのくらい必要か

世界でいちばん眠れていないのは日本人女性です。
中でも特に眠れていないのが40-50代の女性なのです。
家庭と仕事の両立など、特に眠りを犠牲にしています。
同年代の日本人男性も睡眠時間が短いものの、平均といわれている7時間は睡眠をとれています。
40-50代の日本人女性は7時間すら寝ていないのです。
 
質だけでなく、睡眠の長さも重要です。
一般的に成人の場合は7-8時間、10代であれば9-10時間が望ましいです。
なぜなら私たちは、入眠後の時間帯によってふたつの異なる睡眠状態を体験します。
入眠直後にはノンレム睡眠が訪れて、大脳が休息します。
その後に訪れる浅い眠りのレム睡眠では、記憶を定着させ、思考を整理します。


目覚まし時計が必要な人は、スマホの目覚ましアプリを使ってみましょう。眠りが浅くなるタイミングで起こしてくれるため、気持ちよく朝が迎えられます。
 
睡眠の質について言えば、大切なのは午前中に明るい光を浴びることです。太陽の光が望ましいですが、照度が充分にあれば人工的な照明でも効果があります。
明るい光を浴びれば、睡眠ホルモンのメラトニンが1日の早い時間に産生されるだけでなく、夜、眠りにつきやすくなります。
寝室は涼しめの室温18度程度を保ち、暗くしましょう。
目覚まし時計の表示などの、どんな小さな光でもまぶたを通して入ってくるため、睡眠の質が低下して、翌日の認知機能が妨げられてしまうからです。
遮光カーテンやアイマスクを試してみるのもいいでしょう。

ぐっすり眠るための秘訣

毎日同じ時間にベッドに入ろう
しっかり眠るためには、毎晩、同じ時間にベッドに入ることです。就寝時間を守りましょう。眠る時間を遅らせると逆効果になって、身体が警戒態勢のままになり、不眠症につながるかもしれません。
エクササイズをしよう
定期的なエクササイズは睡眠の質を向上させます。屋外のエクササイズなら太陽の光を浴びることになり、相乗効果が期待できます。エクササイズの習慣がない人も夜にエクササイズをするだけで、ぐっすり眠れるかもしれません。ただし、就寝の2時間前までには終わらせよう)。
 
就寝前に入浴するかシャワーを浴びる
入浴やシャワー後に深部体温が下がると、からだが眠る準備をはじめます(図)。



 
アルコールを避ける
アルコールを飲めば早く眠りにつけますが、レム睡眠の時間が減ってしまいます。飲んだときには酔いをさましてから寝ましょう。
 
就寝2-3時間前になったら、ブルーライトカット眼鏡をかける
スマートフォンやラップトップ、テレビの画面が発するブルーライトは眠りを妨げ、翌朝のあなたを「光の二日酔い」にします。
 

食事にも眠るコツがある

カフェイン禁止時間を早めよう
午後4時を過ぎたらカフェインの摂取を控えましょう。遺伝子によってカフェインの代謝速度が遅い人は、禁止時間をもっと早めに設定したほうがいいでしょう。
 
オメガ3系脂肪酸や食物繊維をたっぷりとる
炎症は睡眠の質に影響を与えるため、オメガ3系脂肪酸(サーモン、サバ、ニシンなどの海水魚に含有量が多い)や、食物繊維をたくさん摂取すると、ぐっすり眠れて元気が回復します。
 
就寝2-3時間前には食べない
夜遅い時間の食事はやめましょう。
夜食が睡眠の質を妨げてしまいます。

眠る前の行動を見直そう

睡眠前の行動から見えてくるのは「寝る前にあれこれやり過ぎている」ということです。
就寝前の行動を何かひとつ変えるだけでも、睡眠の質のアップにつなげることができます。
 
夜やっていることを朝にまわすポイント
 
1. 「何をしないか」を考える
まず、就寝前タスクのなかで「何をしないか」を考えてみましょう。
今、夜やる習慣になっていることは本当に夜でなければできないことですか?
 
2. 段階的に習慣を変えていく
夜9時にやっていたことを8時にする「前倒し作戦」
1時間かけていたことを30分にする「時間短縮作戦」
寝室にあれこれ持ち込まない「場所移動作戦」

睡眠前のスマホぐせを直そう

寝る前につい触ってしまうスマホは、睡眠の質を低下させてしまいます。
スマホをベッドに持ち込まない、できれば寝る2時間前からブルーライトを浴びない、そして、もしも中途覚醒してもスマホで時間を確認しない、などスマホに関する習慣を変えることが睡眠の質と量の改善につながります。
スマホやパソコンと睡眠との関係で考えられるのは、デジタルデバイスの液晶画面から発するブルーライトだといわれていますが、とくに夜にこのブルーライトの光を浴びないことが、睡眠にとって大切です。
よい睡眠をとるには夜に脳の松果体からメラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌されなくてはなりませんが、ブルーライトを浴びることでメラトニンの産生と放出が抑制されるからです。
よい睡眠のためには、できればスマホをベッドに持ち込まないのがベスト。
すぐにはできないなら、せめて睡眠中に目が覚めてしまったときに時刻をスマホで確認することだけはやめておきましょう。
ブルーライトで刺激を受け、再び眠りにつくことが難しくなっていまいます。

眠る前のルーティンを持とう

質のよい睡眠をもたらしてくれる夜の行動として、ぜひ始めていただきたいのは寝る前のルーティンを持つ、という方法です。
 
疲れ切って帰宅し、いきなりぐっすり寝ようと思ってもそれは難しいでしょう。
たとえば、就寝前に照明を落とした静かな空間で心を落ち着かせるといったルーティンなら、誰でも今日から気軽に実践できます。
それは眠る前の瞑想です。
よい睡眠のための瞑想は、睡眠へ向けて心と体を整えて準備していく時間で、言わば「睡眠への助走」です。
「睡眠への助走」は睡眠の質を上げることだけでなく、セルフメンタルケアにもつながるのです。

睡眠前の時間を、自分をねぎらってあげる時間にしていきましょう。
質の高い眠りのために、今すぐはじめられるアクションはたくさんあります。
まずは、無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。

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