リフレーミングが人生を豊かにする
1、リフレーミングとは
リフレーミングとは、いつもとは違う枠組みで物事を見直すことです。これにより考え方をポジティブにします。
あまり聞いたことがない言葉かもしれませんが、リフレーミングは英語だと「reframing」。「frame(フレーム、枠組み)」が語の中に入っていることから、何となく意味を想像できるでしょう。
物事を別の視点からとらえ直すというような意味で、主にネガティブな見方からポジティブな見方へと変えていくことが目的となっています。
もともとは家族療法やコミュニケーション心理学など、心理学の分野で使われていた言葉のようです。
現在では広くリフレーミングの考え方を取り入れている分野があります。
例えば会社での人材育成。
否定的な考え方にとらわれがちな社員を、ポジティブな気持ちに変われるよう、トレーニングとして行います。
子育ての際にも、意識してリフレーミングを応用する親御さんもいるようです。子供の短所と感じる点を見直し、逆に長所としてとらえていくような取り組みです。
リフレーミングの簡単な例をご紹介します。
よく使われるのは、試験で残り時間があと10分という状況。「あと10分しかない」と思えば不安で焦ってしまうかもしれません。何もできないまま10分を過ごしてしまいそうです。
見方を変えてみると「あと10分もある」ということもできます。
そう考えるとその10分をどう使うか、落ち着いて考え始めることができるでしょう。リフレーミングにより、気持ちをポジティブに変えることで、同じ状況でもより良い行動を起こすことができます。
2、ポジティブシンキングとの違い
リフレーミングには、気持ちや考え方を前向きで健全なものに変えていくという目的があります。
前向きな気持ちを保ち、人生をより良いものにしていこうという取り組みとしては、「ポジティブシンキング」という方法が良く知られているかもしれません。
同じポジティブを目指す「リフレーミング」と「ポジティブシンキング」。似ているようにも感じますが大きな違いがあり、区別して使うことが重要です。両者の違いを確認しておきましょう。
ポジティブシンキングは積極思考とも呼ばれ、物事を何でも前向きに考えていくことで、人生そのものがポジティブなものになって上手くいくという考え方です。
逆に心がネガティブだと、現実の人生もネガティブなものになっていくという考えも含んでいます。つまりポジティブシンキングでは、心の持ちようと、何事も前向きにとらえることに重点が置かれているといえるでしょう。関連する書籍やセミナーなども多く、広く浸透しています。
一方のリフレーミングは、同じ物事について見方を変えること、解釈する際の枠組みを変更することに重点が置かれています。
ポジティブシンキングのように常に前向きであろうとすると、時として根拠のない楽観的すぎる考え方に陥らないともいえません。
リフレーミングでは、考える際の視点や枠組みの変更が大切です。自分で考えて導き出した、前向きなとらえ方の発見が必要となります。
ポジティブシンキングよりも論理的なテクニックといえるでしょう。
3、リフレーミングの方法
物事を見る視点や枠組みを変更し、ポジティブな解釈を実現していくリフレーミング。その方法・手順を見ていきましょう。
まずは何についての解釈を変えたいのか、その出来事を特定します。
リフレーミングの対象は大きく分けて2つあります。
1つは、状況についてのリフレーミング。自分が置かれている不都合な状況などが対象となります。
もう1つは、内容のリフレーミング。視点を変えて、性格や意味、価値観などを見て、プラスの価値を見いだします。
リフレーミングでは、見方・考え方の視点や枠組みを変えることが重要です。これについてはいくつかの方法があります。
まず1つ考えられるのが、定義の変更。
例えば自分の性格を表す言葉として、後ろ向きな言葉を使っていたとしましょう。その性格は別の言葉で定義できるかもしれません。
状況を解体してリフレーミングすることもできます。
自分に不利な状況をリフレーミングしたいときは、その状況をより具体的に細かく考えていきましょう。不利になっている原因はそれほど多くなく、もしかしたら簡単に解決できることかもしれません。
状況の解釈をポジティブなものに変える糸口となるでしょう。漠然とした不安のようなネガティブな気持ちを、リフレーミングすることで具体的な行動の発見にまで変えられる可能性があるのです。
物事の内容や状況をリフレーミングする際に、よく使われる問いかけの仕方が「もし、~だったら」。
ネガティブな状況に際し、もし自分が別の人、例えば尊敬する人だったらどうするか。そのような問いかけも物事の見方を変えてくれるでしょう。
また、ある物事の実現が不可能だとしか考えられないときもあります。そのようなときは「もし可能であれば」と問いかけてみます。可能だと仮定すれば、最初にすべきことは何だろうか、と考え始めることができるでしょう。
4、リフレーミングの効果
物事の見方を変え、解釈をポジティブな方向へ変えていくのがリフレーミング。その効果としても、前向きなものを挙げることができます。
まずは自信がつくこと。
自分自身についての否定的なイメージをリフレーミングしていけば、自分を肯定することにつながるでしょう。
自分についてのネガティブな見方は、他人から押し付けられた枠組みをもとにしたものだったかもしれません。そこへ別の枠組みを適用することで、自分についてのより良い見方が発見できます。
状況の解釈をリフレーミングすることは、モチベーションや課題解決能力を上げるのに役立つでしょう。解決が不可能だと思い込んでいたり、不利な条件が多いと感じたりしていれば、なかなかやる気が起きないこともあります。
そうしたネガティブな思い込みをリフレーミングすれば、解決が可能かもしれないという希望が生まれたり、対応すべき具体的な状況が見えてきたりします。
リフレーミングを始めると、放置していた問題に取り組み、それを解決するところまでつなげられるかもしれません。
リフレーミングは、他人とのコミュニケーションを良好にする可能性もあります。
他人とのコミュニケーションで使われる言葉が、リフレーミングを身に付けることで、よりポジティブなものに変わっていくかもしれません。
前向きな言葉は他人をひきつけることもあるでしょうし、相手を良い方向に変えることもあるでしょう。
子育てや介護といった場面でも、リフレーミングの良い効果が表れることがあります。さまざまな問題をより前向きにとらえ直し、ポジティブな言葉をかけられるようになり、相手との関係を良好にできるというものです。
5、リフレーミングをする際の注意点
リフレーミングでは、苦しい状況や後ろ向きな考えを、前向きで健全なものに変えていきます。結果的にポジティブな気持ちや考えを持つことができ、より良い状態で再スタートすることができます。
とはいえ、ただ前向きな気持ちになれるという結果だけに重点を置くと、肝心な部分が解決しないままになってしまうことに注意が必要です。
新しい枠組みや視点から見つめ直すという、考え方のプロセスをしっかりと実行するべきでしょう。
またリフレーミングは、現状に対する認識を良好にしてくれますが、それに頼りすぎると悪い影響が出るかもしれません。現状を常に良い状態と認識することは、自分の成長のチャンスを逃してしまう要因になり得るのです。
リフレーミングはあきらめずに頑張る力を与えてくれることもあれば、現状のままで良いと思わせてしまうこともあるということです。
また、リフレーミングをしたあとに、悪影響が出ていないか見つめ直すことも必要でしょう。
6、リフレーミングをしよう
それではリフレーミングにはどのようなものがあるか、具体例を見ていきましょう。
例えば自分や周囲の人に悪いイメージを持っていたとします。
それは家族や同僚かもしれません。
性格について見方を変えるには、次のような言い換えがあります。「目立ちたがり」な人に対して、いつもうるさいとか目障りだとか思ってしまうことがあるかもしれません。
これを「自己表現が上手」な人と考えるとどうでしょうか。見習ったり、参考にしたりする対象に変わる可能性があります。
さまざまな悪い状況も、枠組みを変えることで前向きになれます。
いくら頑張っても失敗が続く状況があるとしましょう。悪い状況にあると考えると、さらなるチャレンジへの意欲もわきません。これを「失敗を多く経験することで、同じ状況の人に寄り添えるようになる」と考え直すこともできます。
同様の失敗をした人と共感できるスキルを得たととらえ直すということです。失敗が前向きな経験となるのであれば、次のチャレンジへの恐れも減らせるでしょう。
お金に関していえば、消費を常にネガティブなことと考えている方もいるかもしれません。ショッピングをするたびに、お金が減ってしまった、支出を増やしてしまったと強く感じることもあります。
しかし支出においては、自分や家族、周囲の人間への投資になっている面があることを意識してみると、ポジティブな面も多く見えてくるでしょう。
何か消費することで、自分や家族が元気になったり、そのことで将来のチャンスをつかめたり、可能性はさまざまです。
7、最後に
リフレーミングを活用することで、コミュニケーションの方法を改善することや、自分の欠点やクセに気づくことができます。
また、物事の視点を切り替える訓練は、客観的に状況を捉える力や柔軟な思考を養い、課題解決能力を向上させます。
リフレーミングは、日頃からいつもと違う言葉を用いたり、想像力を働かせたりすることで実践することができます。
リフレーミングについて理解し、仕事でも活用することで、人材育成や組織作りにつなげられますので、ぜひ活用してみてください。
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