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日本経済

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記事一覧

【第20回】消費税が導入された経緯は何か 個人コード導入が最善の策だった

 10月にインボイス制度が導入されて、消費税に注目が集まっている。消費税はどのように導入されたのか。

 消費税が導入される前、税金をごまかす事業者がたくさんいた。この当時、盛んに言われたのが「クロヨン」だ。クロヨンとは、サラリーマンなどの給与所得者は9割の所得を捕捉されるのに、自営業者などの事業所得捕捉は6割、農林水産業を営む事業者の所得捕捉は4割という意味だ。

 また、銀行や郵便貯金で仮名口

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【第21回】日銀の政策変更「1%を目途」に さらなる長期金利の見直しも

 日銀は10月30、31日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を柔軟化し、「1%を目途」と改めた。 今後の日銀はどのように動くだろうか。

 7月27、28日の決定会合では「10年物国債金利について1%の利回りでの指し値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する」としていた。

 これを受けて長期金利の上限を「1%」に厳格に抑えるとしてきた運用を、10月の決定会合では上限を「

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【第19回】インボイス制度の仕組みと影響 徴収漏れや益税を解消すべきだ

 来月10月から消費税に適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入される。インボイス制度を導入するとどのような影響があるのか。

 まず、消費税の仕組みについて確認しておこう。商品を仕入れる時には、相手に消費税を支払う。仕入れた商品を売った時には、消費税を受け取る。販売時に受け取った消費税を全額納付するわけではなく、仕入れの時に支払った消費税を控除して計算する。

 例えば製造業者、販売業者、最

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【第18回】実質実効為替レートを「円の実力」と表現するのはミスリードだ

 国際決済銀行(BIS)が公表した8月の円の実質実効為替レート(2020年=100)の数値が73.19と、これまで過去最低だった1970年8月(73.45)を下回った。マスコミでは「円の実力が低下した」という報道が散見されるが実際はどうだろうか。

 まず、実質実効為替レートとは何か説明しよう。為替レートは、2国間の通貨の交換比率である。実質実効為替レートは、これに「実質」と「実効」2つの変更を加

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【第13回】世界最大の年金基金であるGPIFはいらない

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2023年4~6月期の運用収益が18兆9834億円だったと公表し、2020年4~6月期の12兆4868億円を上回り過去最高を更新した。

 GPIFとは「Government Pension Investment Fund」の略で、日本の公的年金のうち厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っており、世界最大の公的運用機関だ。

 GPIFは国内債券

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【第12回】長期金利上限1%まで容認 今後趨勢的に金利上昇が不可避な理由

 日本銀行は7月28日に開いた金融政策決定会合でYCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作)の柔軟化を決めた。 

 前回の6月16日の金融政策決定会合では「長期金利の変動幅を±0.5%程度」とされていたが、今回は、「長期金利の変動幅を±0.5%程度を目途とし長短金利操作についてより柔軟に運用する」と修正された。それと同時に、毎営業日実施される指値オペについて10 年物国債金利0.5% か

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【第9回】再販制度は市場経済として不健全 値段は需給バランスに従うべきだ

 「再販売価格維持制度」という制度を聞いたことがあるだろうか。モノの値段は通常、需要と供給のバランスによって決まる。値段が一定になるのは、完全競争のように競合他社との均衡であるが、実はシステム的に値段が一定に保たれている分野がある。それが再販制度だ。

 再販制度が適用されているのは、書籍、新聞、雑誌、音楽CDなどだ。どれも身近な商品だが、これらの値段はどこの店でも同じである。要するに、再販制度と

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【第7回】仕組み債をめぐる金融機関の不適切な販売実態 手数料に敏感になることが大事だ

 リスクの高い仕組み債をめぐり、千葉銀行とその傘下のちば証券、武蔵野銀行による不適切な販売実態が明らかになった。投資をする際に注意すべき点は何だろうか。

 証券取引等監視委員会は、2021年11月から苦情が多く日本証券業協会から注意喚起を計3回受けていたちばぎん証券の立ち入り検査を実施し、銀行の顧客を証券会社に紹介して販売する「銀証連携」に関する問題が見つかったことから千葉銀と武蔵野銀にも検査に

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【第5回】森林環境税の導入で国民の負担増 レベニュー・ニュートラルも同時に行うべきだ

 2024年度から国内に住所のある個人に対して、1人年額1000円の「森林環境税」が住民税に上乗せされる。国民の負担増や景気の足を引っ張ることにつながらないのか。

 そもそもなぜ森林環境税が創設されたのか。林野庁によると、「パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する」とある。そして、2019年3月に「森林

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【第4回】防衛財源確保法案審議入り 増税方針は間違いだ! 長期国債発行や60年償還ルールの廃止を!

 4月6日の衆議院本会議で防衛費増額の財源を裏付けする防衛財源確保法案が審議入りした。本案では、税外収入を積み立てて複数年度かけて使う「防衛力強化資金」の創設を盛り込んでいる。財源の4分の3は新型コロナ対策で厚生労働省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金や、外国為替資金特別会計の剰余金などの歳出改革や税外収入で確保し、4分の1は増税で賄うという。

 防衛費増額については、2023~2027年度

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【第1回】植田和男次期日銀総裁候補について 

 2月24日と27日、衆参の議院運営委員会で日銀総裁候補の植田和男氏への所信聴収が行われた。植田氏の対応ぶりがあまりに無難すぎて拍子抜けしたが、質問者のほとんどの国会議員が金融政策をわかっていないことも明るみに出た。だが、自民党参議院幹事長の世耕弘成氏の質問は興味深いものだった。

 「アベノミクスを継承するのか」という世耕氏のシンプルな質問に対し、植田氏は「共同声明に入っているような日本銀行が目

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