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読書日記・事実が頭にない

5月5日(金)

こどもの日とはいえ特別なことをするでもなく、息子は夫に公園へと連れて行ってもらう。娘は私と本屋さんへと出かけた。運動オンチの私や、運動機能に障害がある娘からすると公園は何が楽しいのかわからない場所だけど、本に興味がない夫と息子からすると本屋さんや図書館は苦境らしい。とはいえ私は本屋さんでの滞在時間がとても長いので、いつも娘に「まだなの?」と怒られる。今日も娘がプリプリとし始めたので早々に退散した。

読んでいたのは、結城真一郎さんの『#真相をお話しします』

ミステリーを手に取るたびに「騙されるものか!」と、著者に挑むような読みかたをしてしまう私。しかし今回もあっさりと、というよりも初っ端の短編である「惨者面談」で、わりとビックリする騙されかたをしたので、著者の結城さんが気になる存在になった。検索したら結城さんは平成生まれだったのでビックリした。平成生まれはまだ子どもというイメージがどうしても抜けない私は、平成生まれの作家さんというのに今でも驚いてしまう。平成生まれでも大人だという人はたくさんいるというのに、わが子が平成生まれで小学生だからなのか、平成はまだごく最近だったからなのか、とにかく平成生まれの大人がいるという事実が頭にないらしい。


5月6日(土)

息子がまた1000ピースのパズルを一緒にやろう!と言い出した。少し前に1000ピースのパズルを自分一人でやると言い出し、しかしやらないので見かねた私が手伝うつもりで手を出したら、最終的に私一人ですべてを終わらせることになったことを思い出し、今回は本当に一緒にやるんだろうね???と息子を疑ってしまう。しかし疑ってばかりいても成長はないだろうと、今回は一緒にやろうね、と声をかけて1000ピースのマリオのパズルを購入し、3ピースほどつながったところで息子は「疲れた~。今日もがんばったわ」と言って逃げた。え??????ここで終わり????

読んでいたのは、植本一子さんの『愛は時間がかかる』

パートナーであるミツさんがいつか離れていってしまうのではないかという不安を抱え、ミツさんの言動や行動に一喜一憂してしていたという植本さんの姿に、私も同じような経験をしていたっけなぁと昔の恋愛を思い出した。20歳頃の私は、彼からの連絡がないと不安になって電話がつながるまでこちらから何度もかけ続けたし、それでも連絡がつかないと彼氏の家まで押しかけたり、彼氏がいそうな場所へと出向いて探し回ったりしていた。こんな彼女がいたらこわいね、というのを片っ端からやっていたように思う。

どうして彼に依存していたのか、どうして一人になるのがあれほど怖かったのか、私にはその理由がずっとわからなかった。しかし今回『愛は時間がかかる』を読んで、植本さんがミツさんに母親的なものを求めていたと書いてあって、これだ!!!と気づくことができた。

母親のように、自分を無条件に受け入れてもらいたい。どこにも行かないでずっと自分を愛し続けて欲しい。そんな思いをパートナーに求めていたのではないかというような話が本にあって、私も無意識ながら、彼氏に母親を求めていたのかもしれないと気づいた。その気づきを得たら、なんだか憑き物がおちたような感覚で、肩にはりついていたものがスッと消えたような身軽さを覚えた。本当に何かが私の肩からスッと消えた可能性もなきにしもあらず。

「母親は無条件に愛してくれる人」というのは、母親像を美化しすぎた現象だと私は思う。どんなことがあっても怒ったりせず、いつも笑顔で優しくて機嫌が良くて、どんな願いだって叶えてくれる、そんな母親なんてこの世にいない。それなのに美化された母親像を自分の母親に求め、しかし手に入らないので彼氏に母親の代わりを求めていた。植本さんも私も、自分が思うような愛をもらえず、淋しかったんじゃないだろうか。愛情のかたちも様々だから、本当は愛だったのに気づかずに流してしまったものだってたくさんあるはず。自分が愛されていた事実を、ちゃんと気づきながら私は今まで生きてきただろうか。そんなことを考えながら、この本を読んで良かったと心から思った。何度も読み返したい本になった。嬉しい。

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