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知識の泉 (月曜日の図書館211)

机に置いてあったメモ用紙を何気なく裏返したら、白黒の写真が印刷してある。無表情のおじさんで、古事記に出てくる何かの神さまのコスプレをしている写真のようだ。

レファレンスのために資料をコピーをして、いらなくなったのでカットしてメモ用紙にしたらしい。下の方に「出口王仁三郎」とある。

K氏に見せると「ああ王仁三郎ね」と知り合いみたいに言う。日本における信仰宗教の草分け的存在らしい。なぜ知っているのか。

神さまのかっこうをして、たぶんうれしいし得意げにしたいのに、それを極力外に出さないようにしている王仁三郎がいじましく、この写真はわたしがゆずり受けることにした。

能登に帰省していた利用者から、借りていた本が火災で焼けてしまったという連絡がくる。現地の図書館の人からも、相互貸借で借りている本を期日通りに返却できないという知らせが来た。

図書館のことなんて一番後回しでいいのに、こんなに早く思い至った人たちに驚く。そして職員はもう、完全ではないけど通常業務を行いつつあるのだ。

12月までは暖冬だったのに、やっとこれから本気出しますという勢いでどんどん寒くなってきた。外との気温差で、窓が曇っている。返される本が、しんしんと冷たい。

結構前からK氏のセーターの肘の内側部分が破れていたが、触れない方がいいのかなあと思っていたら、W辺さんがついに「それってあえてですか?」と指摘した。答えは「ファッションではなくて、ただただ破れているだけ」とのこと。

よりによってどうしてその部分が破れたのか謎である。誰にも気づかれてないと思っていたらしい。

ダーニングするとおしゃれにお直しできていいですよと言うと、あたらしい知識が得られたと言ってうれしそうだった。王仁三郎のお返しだ。

大学入学共通テストの日だったので、いつもの休日よりは自習室に余裕があった。わたしが受験生のときは、高校の先生がハイレルモンを配って応援してくれたと言うと、N藤くんは元のハイレモンすら知らなかった、今日初めて存在を認識しました、と言った。

調べてみるとハイレルモンはハイレモンの3倍のビタミンCを含んでいるが、どうやら今は販売されておらず、ハイレモンの方も元の会社では販売が中止され、別の会社に引き継がれた、ということがわかった。

受験の直前で利き手の指を骨折するというアクシデントはあったものの、当日は何のトラブルもなく試験に臨み、ハイレルモンまでもらったなんて、わたしはとても恵まれた高校生だった。

通りかかったN本さんに写真を見せたら、またもや「ああ王仁三郎ね」と言う。「もはや一般教養のレベル」とのこと。入学テストに出なくて本当によかった。

閉館後に、K氏はいろんなことを知っていて本当にすごいとうっかりほめたら、「そんなことないドラえもんの道具とか全然知らない」と言い、そのまま激ムズクイズ大会に突入してしまう。

大学の同好会が作ってネットでも公開している、試験問題風のクイズがあるのだ。時間旅行のさいに、歴史を改変する行為や、過去の遺物を未来に持ち込み利益を得ようとする行為を禁じている法律は何か。

もう少し粘ればあたらしい知識を得ることができたかもしれないが、王仁三郎だけで今日は十分と思い、言い出しっぺのわたしは一番に帰った。

***

ドラえもんクイズ (上級) 京都大学藤子不二雄同好会 2022より
https://kyodaifujiko.web.fc2.com/images/2022/quiz/advanced_answer.pdf



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