旅ブックスMAGAZINE

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旅ブックスMAGAZINEは、“旅と暮らしの出版社“産業編集センターが運営する、「読む旅」を愉しむためのウェブマガジンです。 旅エッセイや紀行文の連載、旅の新刊の紹介と試し読みなどを発信していきます。

マガジン

  • 日本全国写真紀行

    取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。

  • 全国最中図鑑

    日本を代表する和菓子の一つである「最中」。香ばしいパリパリの皮とともに餡を頬張れば、口の中にふわっと広がる品のよい甘さ。なんとも幸せな気分になるお菓子です。編集スタッフが取材の途中で出会った最中のなかで、ユニークで忘れることのできないご当地最中を紹介していきます。

  • インド食器屋のインド料理旅

    食器買い付けの旅や国内の専門店巡りで出会った美味しいインド料理やインドの食文化を、「アジアハンター」の店主・小林真樹さんがエッセイふうにご紹介します。

  • E-books news

    1990年代はじめに日本で最初の電子書籍が発売されて、30年以上たちました。 ネットワークが今のように発達する前はフロッピーディスクやCD-ROMに収録されたデータをパソコンや専用端末で読むといったもので、当時はあまり普及しませんでしたが、今は皆さん当たり前のようにスマホやタブレットを使って読書を楽しんでいるのではないでしょうか。 欲しいと思ったときにすぐに購入できる、場所をとらない、文字サイズを読みやすいように変更できるなど、多くのメリットがある電子書籍。 産業編集センターでもKindleをはじめとした電子書籍サービスで刊行した様々なタイトルを電子書籍化しています。 「電子書籍化ニュース」ではすでに電子書籍化されている産業編集センターの旅の本、新たにラインナップに加わった電子書籍を随時紹介してまいります。

  • 旅ブックスMAGAZINE 月間記事まとめ

    公開した記事を月ごとにまとめています。

記事一覧

【日本全国写真紀行】 59 愛媛県西予市明浜町狩浜

愛媛県西予市明浜町狩浜 段畑散策3キロのコース、歩く価値はあります。 西予市の南西部に位置する明浜町は、宇和海に面し、入り組んだリアス式海岸が東西約14キロにもわ…

「全国最中図鑑」75 金山石臼最中(新潟県佐渡市)

 佐渡金山は約400年の歴史を有する日本最大の金山である。1601年に3人の山師により開山され、2年後には徳川幕府直轄の天領として佐渡奉行所が置かれ、小判の製造など…

チキン・マンチュリアン【1】 インドにおける中華料理の登場

昨年(2023年)の夏だったか、「インド中華」に世の注目がにわかに集まった。「町中華」や「ガチ中華」といった中華料理ジャンルが脚光を浴び、ネット記事やテレビ、雑誌な…

電子書籍化ニュース Vol.8

『机の上の動物園』著/椎名誠 世界中を旅してきた著者が旅先から持ち帰ったモノや道具を一堂に集めた一冊。フランスのフライパン、パタゴニアのカンナ、アムチトカ島のナ…

旅ブックスMAGAZINE|2024年4月記事まとめ

2024年4月に公開した記事を紹介します。 2024年4月1日(月) 「全国最中図鑑」73 関あじ・関さば最中(大分県大分市)瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかりあう豊後水道…

【日本全国写真紀行】 58 愛媛県松山市三津

愛媛県松山市三津 500年続く渡し船に見る、港町三津浜のふところ深さ 松山市には、堀江港、和気港、高浜港など多くの港があるが、中で最も古くから開かれ、明治維新まで…

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モモ【3】 日本化したモモ

『料理と帝国』(レイチェル・ローダン著/みすず書房)によると、小麦粉の皮で詰め物を包んで蒸す/茹でる「ダンプリング=饅頭(マントウ)」は中国内陸部で誕生し、その…

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第22橋 蓬莱橋(静岡県) |吉田友和「橋に恋して♡ニッポンめぐり旅」

大井川の急流をのんびり渡る 世界一長い木造橋 橋の上から富士山が見えそうだなぁと期待しながら訪れたら、本当に見えた。それも、期待以上にくっきりと。富士山が見える…

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【日本全国写真紀行】 57 愛媛県今治市小島

愛媛県今治市小島 日露戦争に備えた「芸予要塞」が当時のままに残る島小島は、今治市の来島海峡に浮かぶ、周囲4キロほどの文字通り小さな島である。今治の波止浜港から船…

モモ【2】 インド化したモモ

その日、私はデリー市内にある巨大ショッピングモールのフードコートにいた。好調なインド経済を象徴するように、大勢の買い物客たちがさまざまな店でショッピングを楽しん…

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「全国最中図鑑」74 狸最中(東京都北区)

東京の王子といえば、江戸時代から狐の町として知られている。東国三十三カ国稲荷総社の格式を持つ王子稲荷神社には、毎年大晦日になると、稲荷のお使いの狐が、近くの榎の…

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【新刊試し読み】 『にっぽんダークサイド見聞録』|村田らむ

ホームレス、サブカルチャー、アンダーグラウンドなどをテーマに取材を行っているルポライター村田らむさんの著書『にっぽんダークサイド見聞録』が2024年4月15日(月)に…

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【新刊試し読み】『ふるさと再発見の旅 四国』|撮影 清永安雄

本書について〈ふるさと再発見の旅〉第9弾は四国地方! 日本の原風景に出逢う旅へ もういちどニッポンをひもといてみませんか― 日本全国津々浦々、歴史ある門前町や港町…

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モモ【1】 ネパール化したモモ

日本全国津々浦々。今やどこに行ってもインド料理店がある。そしてその多くがインド人ではなく、ネパール人による経営であるという事実もまた、多くの日本人が知るところと…

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『わたしの旅ブックス』シリーズ紹介 8

8回目は、森まゆみさん『アジア多情食堂』から、鈴木 裕子さん『まんぷくモンゴル! 公邸料理人、大草原で肉を食う』/北澤 豊雄さん『花嫁とゲバラを探して 〜南米婚活紀…

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ドーサ【3】 ドーサを求めてドサ回り

ドーサという言葉自体は古代タミルで書かれたサンガム文献にも登場した古いものであり、南インドを広く象徴する食べものであるが、より近視眼的に見ていくと、地域によって…

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【日本全国写真紀行】 59 愛媛県西予市明浜町狩浜

愛媛県西予市明浜町狩浜 段畑散策3キロのコース、歩く価値はあります。 西予市の南西部に位置する明浜町は、宇和海に面し、入り組んだリアス式海岸が東西約14キロにもわたって続いている。中でもこの狩浜は、地区全体が宇和海に面していて、集落の後ろにはすぐ近くまで山々が迫り、平地は極端に少ない。民家は海に沿った細く狭い平地に密集して建ち並び、耕地は背後の山の斜面に階段状に広がっている。これらは段畑と呼ばれ、山のてっぺんまで続く畑と石垣の連続は、文字通り「耕して天に至る」絶景を成してい

「全国最中図鑑」75 金山石臼最中(新潟県佐渡市)

 佐渡金山は約400年の歴史を有する日本最大の金山である。1601年に3人の山師により開山され、2年後には徳川幕府直轄の天領として佐渡奉行所が置かれ、小判の製造なども行われて江戸幕府の財政を支え続けた。  平成元年、資源枯渇のため操業を休止し、長い歴史の幕を閉じた。  金の精製工程をざっくりと説明すると、発掘した金鉱石をまず選別し、細かく砕き、大きな石臼ですり潰し、それを水で流して金を選別し、溶かす。この時に使われていた大きな石臼を形どって作られたのが、文化5(1808)年創

チキン・マンチュリアン【1】 インドにおける中華料理の登場

昨年(2023年)の夏だったか、「インド中華」に世の注目がにわかに集まった。「町中華」や「ガチ中華」といった中華料理ジャンルが脚光を浴び、ネット記事やテレビ、雑誌などで取り上げられた結果、その余波の一つがジャンル違いのインド料理の一支流にまでたどり着いたかっこうだ。 「えっ、インドにも中華があるの!?」 「スパイシーな中華ってなんだか面白そう!」 大方の反応はそのようなものだった。しかし余波の力はさほど強くなく、インド中華メニューを出す店が増えたわけでも、ましてや大手コン

電子書籍化ニュース Vol.8

『机の上の動物園』著/椎名誠 世界中を旅してきた著者が旅先から持ち帰ったモノや道具を一堂に集めた一冊。フランスのフライパン、パタゴニアのカンナ、アムチトカ島のナイフ、南米の飾り馬とホルスタイン、世界各地の道で拾った石ころ、アメリカ西海岸のなめくじ人形など、何の役にも立たないが、なぜか気になって手放せない愛しきガラクタたちを、旅のエピソードとともに紹介。  椎名誠ならではのユニークな旅の流儀が見えてくる。作家生活45周年を迎える著者初の「モノ雑文集」。 『死を喰う犬』著/小林

旅ブックスMAGAZINE|2024年4月記事まとめ

2024年4月に公開した記事を紹介します。 2024年4月1日(月) 「全国最中図鑑」73 関あじ・関さば最中(大分県大分市)瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかりあう豊後水道の佐賀関で、一本釣りにより獲れるマアジ、マサバのことを「関あじ」「関さば」と呼ぶ。よく肥えているがきゅっとした身で、ぷりぷりとした食感ととろけるような味わいが身上。味も姿も別格で、高級魚として重宝されている。関あじは7月〜8月、関さばは12月〜3月が旬だ。 2024年4月4日(木) 「インド食器屋のイ

【日本全国写真紀行】 58 愛媛県松山市三津

愛媛県松山市三津 500年続く渡し船に見る、港町三津浜のふところ深さ 松山市には、堀江港、和気港、高浜港など多くの港があるが、中で最も古くから開かれ、明治維新まで松山の海の玄関口としての役割を果たしてきたのが三津浜港である。町には明治・大正時代の商家、銀行、医院などの西洋風建築や富豪の邸宅などが数多く残っていて、豊かで華やかなりし往時の面影を今にとどめている。  かつて夏目漱石が、中学教師として松山に赴任した際に上陸したのも三津浜港で、『坊っちゃん』の舞台にもなっている。漱

モモ【3】 日本化したモモ

『料理と帝国』(レイチェル・ローダン著/みすず書房)によると、小麦粉の皮で詰め物を包んで蒸す/茹でる「ダンプリング=饅頭(マントウ)」は中国内陸部で誕生し、その一部はチンギス・ハン率いるモンゴル軍の西征によって西アジアやヨーロッパに伝わったという。一方、古くから仏教の聖地だったチベットのラサなどには多くのモンゴル人巡礼者が訪れていた。チンギス・ハンのイメージから(モンゴル人=イスラム教徒)のイメージがあるかもしれないが、実は現在でも最も多くのモンゴル人に信仰されているのは仏教

第22橋 蓬莱橋(静岡県) |吉田友和「橋に恋して♡ニッポンめぐり旅」

大井川の急流をのんびり渡る 世界一長い木造橋 橋の上から富士山が見えそうだなぁと期待しながら訪れたら、本当に見えた。それも、期待以上にくっきりと。富士山が見える橋——さすがは静岡とでもいうべきか。  「蓬莱橋」と書いて「ほうらいばし」と読む。大井川に架けられた木造の橋で、明治12年に建造されたというから、この連載で紹介してきた橋の中でも比較的歴史がある橋といえるだろう。  静岡には車で行くことも多いが、今回は新幹線で向かった。のぞみ号だと通り過ぎてしまうので、ひかり号の新

【日本全国写真紀行】 57 愛媛県今治市小島

愛媛県今治市小島 日露戦争に備えた「芸予要塞」が当時のままに残る島小島は、今治市の来島海峡に浮かぶ、周囲4キロほどの文字通り小さな島である。今治の波止浜港から船で10分、船旅を楽しむほどの時間はなく、あっという間に到着する。1日10便運行しているそうだが、この日の乗客は我々4人と郵便局の職員2人のみ。帰りも同じ人数だった。  ここ小島には、日本が日露戦争に備えて、ロシア海軍の進攻を防ぐために築いた要塞が当時のまま残っている。「芸予要塞」と呼ばれるこの施設は、明治22年から2

モモ【2】 インド化したモモ

その日、私はデリー市内にある巨大ショッピングモールのフードコートにいた。好調なインド経済を象徴するように、大勢の買い物客たちがさまざまな店でショッピングを楽しんでいる。もちろん、広大な席数を誇るフードコートも、昼時ともなれば大勢の食事客が集まり、下手をすると席の確保すら難しい。何とか確保した一席に座り、さて何を食べようかと居並ぶテナントの看板をぐるり見回した。すると黄色地に黒と赤で店名が書かれた、よく目立つテナントが目に入った。Wow!Momoである。 Wow!Momoはコ

「全国最中図鑑」74 狸最中(東京都北区)

東京の王子といえば、江戸時代から狐の町として知られている。東国三十三カ国稲荷総社の格式を持つ王子稲荷神社には、毎年大晦日になると、稲荷のお使いの狐が、近くの榎の木の下で装束を整えてから初詣をしたという言い伝えが残っている。人間国宝になった五代目柳家小さん師匠が十八番にしていた落語「王子の狐」も有名だ。 そんな狐の町・王子で、なぜか狸の最中を売り出したのが、創業100年以上の老舗和菓子店「狸家」。なんでも先々代の当主が最中を考案するにあたって「王子は狐で有名だが、狐はズルがしこ

【新刊試し読み】 『にっぽんダークサイド見聞録』|村田らむ

ホームレス、サブカルチャー、アンダーグラウンドなどをテーマに取材を行っているルポライター村田らむさんの著書『にっぽんダークサイド見聞録』が2024年4月15日(月)に発売されたことを記念して本文の一部を公開します。 本書について誰も知らない、誰も行かないヘンな場所をイラストレーター・ルポライターの村田らむが軽やかに訪れその理由と魅力を解き明かした見聞録。登場するのは富士の樹海やドヤ街、廃墟に珍スポット(韓国、北朝鮮、台湾も少しだけ登場!)。潜入取材、危険地帯取材を得意とする

【新刊試し読み】『ふるさと再発見の旅 四国』|撮影 清永安雄

本書について〈ふるさと再発見の旅〉第9弾は四国地方! 日本の原風景に出逢う旅へ もういちどニッポンをひもといてみませんか― 日本全国津々浦々、歴史ある門前町や港町から、知られざる漁村や在郷町まで。残しておきたい風景や語り継ぐべき物語を丹念に取材してオールカラーでお届けする写真紀行のシリーズ。 第9弾「四国」は香川、愛媛、高知、徳島を収録。 コラムでは地域に伝わる祭りやノスタルジックな商店街をピックアップ。各県の重要伝統的建造物群保存地区も全て掲載。 ――掘り起こせば私たちの国

モモ【1】 ネパール化したモモ

日本全国津々浦々。今やどこに行ってもインド料理店がある。そしてその多くがインド人ではなく、ネパール人による経営であるという事実もまた、多くの日本人が知るところとなって久しい。遠くからでもよく目立つ外観と、そこにはためくネパール国旗。特徴的な形状と鮮やかな赤色が、何よりもそこがネパール人の経営であることを雄弁に物語る。今や「インネパ店」などと略称され、チーズナンやバターチキンといった老若男女問わず好まれるメニュー構成で、すっかり全国の地元社会に溶け込んだ感がある。 そのきわめ

『わたしの旅ブックス』シリーズ紹介 8

8回目は、森まゆみさん『アジア多情食堂』から、鈴木 裕子さん『まんぷくモンゴル! 公邸料理人、大草原で肉を食う』/北澤 豊雄さん『花嫁とゲバラを探して 〜南米婚活紀行』/下川 裕治さん『旅する桃源郷』/後藤 隆一郎さん『花嫁を探しに、世界一周の旅に出た』/小林 みちたかさん『やがてすべては旅になる 壊れた自転車で行く四国一周』までの6冊を紹介します。 『アジア多情食堂』著/森まゆみ50代から60代にかけて、アジアの国々を訪ね歩いた著者の旅紀行。中国、韓国、台湾といった隣国か

ドーサ【3】 ドーサを求めてドサ回り

ドーサという言葉自体は古代タミルで書かれたサンガム文献にも登場した古いものであり、南インドを広く象徴する食べものであるが、より近視眼的に見ていくと、地域によって実にさまざまなドーサが存在することがわかる。今回は南インド各地の飲食店で食べられる、地域性豊かなドーサを紹介していきたい。 地域別のざっくりとした特徴としては、分厚い鉄板で大きく焼くのがタミル式。中にジャガイモのマサーラーが入ったマサーラー・ドーサが有名だが、具のないドーサに豆汁のサンバルをかけたり、内臓煮込みとドー