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世界のくるみ事情🌱(生産編)

むぅちゃんはちょっと憂鬱な日には、いつもくるみパンを食べます。
刺激的なものはなにも胃に入らないけれど、なにか安心感のあるものをおなかに入れておきたい…。
そんなとき、くるみパンのぼそぼそとした素朴な味わいがとても心地よくて、大好きなんです。

むぅちゃんも個人的に大好きなくるみですが、いったい世界ではどのように作られ、食べられているのでしょうか?
今日はくるみ生産の背景について調べてみました。
読者のみなさんも、一緒にくるみのお勉強をしましょう😊
(後編の「消費編」も一緒に見てみてくださいね🎵)


世界のくるみ生産量ランキング

2021年におけるFAOSTATのくるみ生産量に関する統計結果を見てみます👀
くるみ生産量世界第1位は中国、第2位はアメリカ、第3位はイランであることが分かりました。
第10位までのランキングはご覧の通りです。


FAOSTATデータベースより品目「Walnuts, in shell」における2021年生産量(t)の上位10か国を抜粋

中国が生産量トップで、続いてアメリカ・イラン…。
こう見ると、TOP3の生産地は地理的にずいぶん離れているようですね👀

人々はどういう経緯でくるみを食べ始めたのでしょう?
そして、どのように人々はくるみを育てるようになったのでしょうか?

くるみが世界中で育てられるようになったわけ

①狩猟・採集中心の時代から、人類はくるみでエナジー補給していたから

現在、食用とされているくるみは、基本的には「ペルシャクルミ」という種から派生しています。
原産地は名前の通り「ペルシャ」(現在のイラン)という説が一般的です。

この「ペルシャクルミ」の木ですが、約 345 万年前から存在し、氷河期をも生き残って今に至ります。
人類との出会いも同様に古く、17000年前にはフランスで人類がクルミを食べた証跡が見つかっているとのことです。
17000年前といえば、人類が石槍などの道具を用いて、狩猟や採集を行っていた頃ですね。

ところで、くるみはナッツ類でオメガ3脂肪酸を最も多く含んでいるといいます。
また、ポリフェノールやメラトニンなどの抗酸化成分もナッツ類で最も高くなっており、ビタミンE・ビタミンB1・ビタミンB6・葉酸・マグネシウム・銅・亜鉛などのビタミンやミネラル、そして食物繊維など、健康維持・健康増進に必要な成分がふんだんに含まれます。
狩猟・採集中心の厳しい生活の中において、多様な栄養素とエナジー補給ができるくるみが重宝されてきたのでしょうね。

およそ7000年前には、古代ギリシャ人がくるみを栽培するようになり、地中海を中心にくるみの栽培が進みました。
「目には目を、歯には歯を」…などで有名なハンムラビ法典にも、くるみの栽培方法に関する記述が載っているようです。
以降、くるみはヨーロッパ全域からヒマラヤに至るまでさまざまな場所で発見されてきました。

②くるみには多様な効能があると信じられてきたから

古代ギリシャ・ローマでは、くるみは食用以外にも、多様な効能があると信じられてきました。
たとえば👇のような効能です。

・医療用途
・媚薬
・睡眠薬
・羊毛染め
・口内清涼化

特に医療用途としてのくるみの活用については、西暦40~90年頃に発行された医学百科事典『マテリア・メディカ』で、下記のような活用法が紹介されています。

チャンドラー・オーチャーズ(米国くるみ栽培業者)HP「クルミの歴史」より(筆者翻訳)

乳児の抜け毛ケアって…どういうことなんでしょうね👀
(はたしてこれらが本当に効果があるのかどうかは、ぜひみなさん好き好きに試してみてください!)

中身はともあれ、くるみは医学的に効果があるものとして認識されてきたようです。
11世紀に活躍した医者・科学者のイブン・シーナーも、くるみの医学的効能を認めていたようです。

このように、栄養価も高く、医学的に効果があるとされてきたくるみは、古代ペルシャの一時代においては「Royal Walnut(王室のくるみ)」とも呼ばれ、王族のみが食することを許されていたそうです。

また、紀元前206年~紀元後220年頃の間に、くるみはシルクロードを通じて中国にも広まっていったようです。

③航路の発達・生産拠点の開発を通じて、くるみの商業化が進んだから

くるみが世界のお茶の間で、日常的に食べられるようになったのは1700年代ごろからと言われています。
くるみはイギリスの商船を介して、世界中の港に届くようになりました。
殻付きのくるみは室温で6か月程度保存できることもあり、海運との相性が良かったのです。

その後時は経ち、アメリカにおけるくるみ栽培が始まったのは1852年以降のこと。
フランス人修道士がカリフォルニアで1,000本のくるみを植栽しました。
その後1867年には、果樹園主による商業目的でのくるみ栽培がスタート。
現在、カリフォルニアにおけるくるみ畑は35万エーカー(1416㎢)以上となっており、長きに亘り、くるみの主要生産地となっています。

さて、中国におけるくるみの商業栽培は1921年頃から始まりました。
中国国内におけるくるみの生産地としては、新疆ウイグル自治区が生産量の半分以上を占め、雲南省・山西省・陝西省が続きます。

実は、中国のくるみ生産量は10年前と比べて約1.5倍ほど増加しており、生産大国であるアメリカ・イランと比べても増加率が高いことが分かっています。
いったいなぜなんでしょうか?

FAOSTATデータベースより品目「Walnuts, in shell」における2012~2021年生産量の推移(t)
(2021年上位3か国間比較)
※2017・2018年における中国のくるみ生産量の低減については、
当時雲南省を中心として発生した大規模な雪害が生産量に影響しているものと筆者思料

これは、中国政府が山岳地帯や丘陵地帯向けに実施した特別貧困撲滅計画のおかげだと言われています。
政府の支援により、くるみの作付面積が急激に拡大しただけでなく、機械化・加工施設の整備が行われました。
特に新疆ウイグル自治区は、くるみ農園が平地に位置していることもあり、山岳・丘陵地帯の多い雲南省等の地域よりも、くるみの管理・収穫がはるかに簡単なようです。
(あれ、新疆を中心に農業の生産効率アップを進めているってどこかの記事でも同じこと言ってましたね…)

中国はここ数年の間に、くるみの輸出にも力を注いでいるようです。
Fresh Plazaの記事によると、2016年度においては、中国におけるくるみの出荷量は18,000tであり、輸出国としては世界第7位程度だったとのこと。
一方、2019年度においては、出荷量が144,000tに拡大し、米国に次いで世界第2位の輸出国となるとのことです。
中国は、カザフスタン・キルギス・パキスタンなど、近隣の新規市場の開拓を進めていくことで、くるみの輸出を推進してきました。
また、ヨーロッパ全域や、トルコ・アラブ首長国連邦に対する出荷も増加しているとのこと。
今後、アメリカ・中国間でのくるみ貿易競争が進んでいきそうですね。

歴史を知りながらくるみを食べてみる

いかがでしたでしょうか?
まさかくるみが古代ギリシャで毒消しや乳児の抜け毛ケアに使われていたなんて全然想像がつきませんでした。
また、トマトと同じように、くるみも中国の新疆ウイグル自治区で盛んに作られているとは知りませんでした👀
みなさんが次にくるみを食べるときには、こんな歴史を思い浮かべながら食べてみてください😊
次回は、世界中で長きに亘って愛されてきたくるみのレシピについてご紹介できたらと思います
最後まで楽しんで読んでいただきありがとうございました🌹

出典・参考資料


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