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原野を開墾しながら絵を描き続けた画家 坂本直行

【読書記録】
坂本直行をご存知だろうか。

北海道土産としても有名な六花亭のお花の絵、といえばすぐに頭に浮かぶ人も多いのではないかと思う。

この絵を描いたのが、北海道開拓民であり、登山家であり、画家でもある坂本直行。

描いた絵を友人にタダであげてしまう。

家を訪れた人が「この絵はいいねぇ」と持って行ってしまう。

「真夏の太陽に照らし出される山の色彩などは自分の技量では描ききれず、山の形だけしか描けないから、足りないところは見る人が補って見てもらえるとありがたい」
と、正直に言ってしまう。

一つ一つの言葉やエピソードから、飾り気なく、実直な人柄が窺われる。
坂本直行の描く、無骨ながらも優しい花や山の絵そのままの人だったのだろう。

熊の糞や、野糞の話、先々で出会うバリバリの北海道弁を操るユニークな人々との会話。
私は、こんな人々の息使いを感じられる本に、どうしようもなく惹きつけられてしまう。

大正末〜昭和初期の北海道。
目を瞑って、ここが原野だった頃のことを想像する。

写真の加工アプリみたいに、瞼の裏に映る風景から〈ここにはなかったはずのもの〉を一つずつ消し去る。
電線、電信柱、車、ビル、そして人も。

メインストリートのアスファルトは、柏の枯れ葉が積もった凸凹の砂利道だったに違いない。

この右手に続く脇道は、かつてアイヌの人々や放牧馬が歩いた踏跡。
あそこの大きなトドマツは、まだ赤ちゃんマツだったかもしれない。

ひたすらに歩き、歩き疲れたら開墾の痕跡として残る、大きな柏の木の切り株に座って一休みしながら遠くに見える雪残る山々に目を向ける。

深呼吸をすると、湿り気を帯びた大地と新芽の香りが鼻をくすぐる。
聞こえてくるのは、山から吹き降ろす風に踊る草木の音のみ。

かつて、未開の原野を開拓した人々は、こんな景色を見ていたのだろうか。
きっと、もっと荒々しく寂漠としていながらも、人に寄り添った自然の姿だったに違いない。

目を開いた瞬間、現実の風景の中に、広がる原野のおぼろげな残像を見たような気がした。
今いるこの場所が、ただここにあるだけのものではなく、ずっと大切なものに感じた。

カンカンに入ったまん丸🟣🔵は、砂糖の薄い膜でお酒を包んだボンボン。

ワイン、ハスカップ、ペパーミント、梅酒、ブランデー、コアントローの6種類が入っています。

お酒が飲めない私には、これで十分なのです。

北海道の大地に生き、日高の山々を愛した画家の代表的画文集。
若き日の山の追憶から昭和三十年代の紀行までの二十六篇を、力強く明快な山岳画や植物のスケッチとともに収録する。
開拓期の北海道の山や原野、開拓農民、造材労働者、アイヌの人たちなど、北の大地とそこに生きる人々の姿がユニークな視点から生き生きと描かれた、北海道の山の文化を代表する名著。

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