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一足早い夏休みと323回のcall

働いて間もない私にも、ありがたいことに3日間の夏休みが付与された。

昨日、6月24日の午前休を申請したのは、先月のこと。
「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」でたまたま手にした、とあるフライヤーがきっかけだった。

フェルメールそっちのけで、隅から隅まで舐め回すように読んだ。

裏面に記載された、開催期間中のイベント。
夏休みの子供向けイベントが主だったが、一つだけ、「大人且つ虫好き」の私も対象となるものがあった。

あの有名な、昆虫学者の丸山宗利さん。

先日投稿した、「昆虫の惑星」を監修したのが、この丸山宗利さんなのである。

こちらの「昆虫はすごい」もかなり有名。

さて、その丸山宗利さんの講演会が、昆虫展初日の7月23日(土)に開かれる、とな。
行きたい!土曜日だ!やった!行ける!

申込みは、6月24日(金)の9時30分から。
申し込みたい!え!平日の朝9時半!仕事!

フライヤーを握りしめたまま、泣きそうになった。
こんなまたとないチャンスを、電話ができない、という事で逃してしまうなんて。

そんなときに舞い込んだのが「夏休み3日間」の知らせである。
迷わず申請した。
きっと、他の職員の誰よりも早く申請した第一号だったと思う。

「私用にて」と書いた。

「世界の昆虫展で開かれる、昆虫学者による講演会の申し込み電話をかけるため」とは誰にも言えなかった。

かくして私は昨日、6月24日(金)に午前休を貰い、朝の9時25分からスマホを握りしめスタンバイした。

9時28分
フライングでかけてみる。
「…こちらは、北海道博物館です。開館は、午前9時30分からとなっております…」
チッ、だめか。

9時30分
…いや、正確に言えば、その20秒前にかけたはずだった。
「ツー、ツー、ツー、ツー…」
チッ、出遅れたか。

だめだ、なんとしても行きたい、そのために取った今日の夏休み、絶対に行く、何としてでも80名の中に入ってやる!

私の中で、スイッチが入った。

何度かけてもお話中の電話の向こう側。
めげずに、何度も何度も、切ってはかけて、かけてはお話中…を繰り返した。
しまいには、指が勝手に動くようにさえなっていた。

10時7分
電話開始から37分が経過したとき。
「…ルル…プルルルルル…プルルルルル…」

それは、323回目のコールだった。

焦らしに焦らされ、やっと繋がったのに、そこからさらに焦らしに焦らされ、20コール目くらいでようやく「はい、北海道博物館です…」という気だるそうな女性職員の声を聞くことができた。
そこでやっと、ホッと胸を撫で下ろすことができたのだった。

私と同じく博物館職員の女性も、37分間ずっと電話と戦っていたのだろう。
彼女は、はじめから終わりまで、中身のいなくなったセミの抜け殻が喋ったときのようなハリのない声を出していた。
電話を切るとき、心のなかで「お疲れさまです。今日一日、少なくとも昼ごろまでは鳴り続ける電話を頑張って取ってください。まぁ、私のやるべきことは終わったし、大満足ですけどね!」と声をかけた。
 ※あくまでも、例え話、心の中の言葉です。

なんのはなしですか

やりたいことのためには、仕事だって休めばいいし、躊躇してはいけないし、途中で諦めてはいけない、ということを実感したはなし。

当日は虫Tシャツ着ていくべきかしら

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