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◎エッセイ

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怒ったり泣いたりしないで、ただフラットに生活するしかないのだと諦めている間、殺してきた体の残骸:10/28

2020/10/28 何気なく、お前はだからダメなんだよ、とか人格を否定するような言葉を使う人がいたとして、そういうとき、僕は咄嗟に笑ってしまうと思う。話し方がダメだとか、その性格が良くないとか。ぶつけられている言葉がどれだけ配慮を欠いた言葉であっても、その人が優位に立つために話されている言葉であっても、そこにそれなりの論理立った理由さえあるなら、もしくは、そこにあるのが悪意でなく好意なら、僕はき

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好きなタイプが"やさしい人"って、そんなにつまらないですか

「しをりさんはもっと、自分のことを見ていいんですよ。」

じゅわっと、出る。

心の涙か、体の水滴か。

毎日のように吸っていた煙草も意識せず、今はあまり吸っていない。変わるためのきっかけは、恋だったのか。街に目をやれば鬱陶しいほど言葉は鮮明に映り、していた約束は指を使わなくても数えられるようになった。煙は、恋しいくらいがいい。

つまらない人間がいる。

自分自身、恋愛のエッセイばかりを書いてい

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喜怒哀楽の、「怒」が綺麗な人がいる。

喜怒哀楽の、「怒」が綺麗な人がいる。

「二度と、うちの前を通らないでください。」

わたしは感情が隠せない人だった。

あの時のわたしは、誰かを守りたかったのだろう。誰のことが許せなかったのだろう。悪いのがあなたで、わたしが正しい。そこまでは言い過ぎだけど、きっと近くまできていた。

わたしは人より穏やかな性格だったと思う。それは幼い頃から今までも、ずっと。でも本当は誤魔化している。上品で、艶やかに。仕草ひとつひとつを零さないように心

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個人的な麻薬への気持ち

個人的な麻薬への気持ち

私の今年一番スキを戴いた記事、というnoteからの報告であがってきたのはこれなんだけど

麻薬のアメリカ社会への浸透性はもう、どうしてとかなんで、とか言っても仕方ないのか、と絶望的に感じるところもある。で、そういえば、と思いだしたことがあります。

アメリカに住んで長くなってきたソルトレイクシティなのだが、最初に私達が借りたのはデュプレックスとよばれる「家2件がひとつの建物の中にある」家だった。斜

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それは言わないものなのか、言えないものなのか。誰しもが秘密を抱えて生きているとしたら。

それは言わないものなのか、言えないものなのか。誰しもが秘密を抱えて生きているとしたら。

自分自身のことがわからないという、なんとも贅沢な悩みを抱えている。

「真面目な人」になるのが格好悪いと思っていた当時。ひたむきに頑張ることはせずに、どこか破天荒な自分を演じていた。

頭のおかしい人間だと思われたかった。
話が通じない、面白い人間だと思われたかった。簡単に無茶をして、他人の人生を生きているかのような人が羨ましかった。わたしが今も夜に街へひとりで出かけるのも、そういう自分を心のどこ

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さよなら、正しい街

さよなら、正しい街

母は過保護だった。
月々のお小遣いは多くはなかったけど、遊びに行くときにはいつでも多めにお金をくれた。
少しでも天気が悪かったりすれば車を出して駅まで迎えに来たし、どんなに遅く帰っても寝ずに待っていて、私が夕飯を食べていなければキッチンに立った。

母は過干渉だった。
私が見覚えのない服やカバンを持っていると、すぐに「それいつ買ったの」と訊いてきた。休みの日にどこに行って、誰と会って、何時に帰っ

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