たとえば、夏の終わり、
たとえば、祭りのあと、
たとえば、夕暮れどき、
ふと寂しさを感じます。
その、ふと感じる寂しさは、限られた人のものでは無くて、
どうやら、誰もが感じることの様なのです。
だから、多くの人が、
夏の終わりを歌った流行歌が胸に刺さります。
祭りのあとの、映画のワンシーンが心に残ります。
夕暮れどきを描いた絵画に心惹かれます。
心に吹く、清かな風の様な寂しさを、私達には、ふと感じる時間があります。
私達は、光りを放つ生命の塊として、この世界に生を受けます。
その子がどんな環境を与えられ、どの様な成長を遂げ、如何なる人生を歩むのかは、
誰にも分かることではありません。
全ては未定で、全ては未確定です。
ただひとつ、この世に生を受けた瞬間に、既に確定していることは、
生命はいつか燃え尽きる、ということです。
私達はポジティブとネガティブの両面を持ち、そのバランスを取りながら人生を歩みますが、
生命の誕生から終焉までを、ポジティブに見て取れば、
成長と経験の歩みでしょう。
ネガティブに捉えたなら、
燃え尽きる日までの行進、かも知れません。
どう捉えるかは、人それぞれで、そこに善悪、正誤、優劣は無いと考えます。
私の個人的な捉え方は、
生命に限りが有るからこそ、今ここで湧き上がる感情を、感じ尽くし、味わい尽くしたい、と思っています。
その「今」の連なりが人生だと思っています。
永遠は美しいけれど、終わりがある事も素晴らしい、と感じています。
肉体が滅びたら、生命も尽きるのか、という事は、また別のお話しですから、脇に置かせて頂いて、
光りを放つ生命を宿した肉体は、いつか必ず終焉を迎えます。
生まれ落ちた後、どんな人生を送るのかは、十人居たら十通り、百人居れば百通り、二つと同じ人生はありません。
ある人は、愛情豊かな両親のもと、健やかに成長し、
ある人は、心に葛藤を抱える親に、否定され続ける環境に育って、心に深い傷を負いながら、育つでしょう。
どの様な環境を生きても、どの人にも、終焉が訪れる事は、生まれた時に確定している、たったひとつの事、です。
健やかに育った人とて、ふとした時に、少し寂しい風がそよぎます。
葛藤を抱える人の寂しさは、嵐です。
程度の違いはあっても、皆寂しさを感じます。
葛藤を抱える人の寂しさの嵐は、かつて自分の存在や感情をことごとく否定され傷だらけで生き抜いて来たのですから、葛藤の意味も、寂しさの起源も分かります。
しかし、愛情溢れる環境に育ち、健やかな心を持つ人にも、ふと寂しさはそよぐのです。
私はその、そよぐ、ささやかな寂しさの起源は二つ有ると思っています。
ひとつは、
心に傷が全く無い人は存在しないから、だと思っています。
どんなに愛情深い親も、子育てで間違うことは、沢山あると思います。
その子がお腹を空かしているのに、事情があって、ミルクを与えるのが遅くなる、そんな些細な事も、
その子は、見捨てられた、と感じるかも知れません。
心の傷は、望まない出来事が起きた時、その子がどう感じるか、で、傷つく、傷つかないが決まります。
愛情深い親も、普通の人間ですから、思わず否定的な言動をしてしまうことだって有る訳です。
だから、深いか、浅いか、多いか、少ないかの違いはあっても、心に傷が無い人はいないのです。
小さな傷は、トラウマにはならず、その子の個性を形成する要素になります。
健やかだけれど、少し怖がり、という個性だったり、
健やかだけれど、少し怒りん坊、などといった個性を形づくります。
小さく、浅い小傷であっても、傷は有り、その傷が、ふと感じる寂しさの起源である様に思います。
ふたつめは、
述べました様に、人は生まれた時には、いつか終焉を迎える事が約束されています。
だから、
夏の終わり、祭りのあと、夕暮れどき、
隆盛を誇ったものが終焉を迎える切なさ、儚さに、ふと寂しさを覚えるのではないか、と思うのです。
ふと感じる寂しさの起源を二つの点から考えてみましたが、
人は少し寂しいのが、デフォルトなんだと思うんです。
そして、これは言語化してご説明することを、難しく感じているのですが、
寂しさは、優しさの傍らに在る、様な気がしています。
寂しさは、分類すると、ネガティブな感情に属します。
ネガティブな感情には、怒り、悲しみ、恐怖、無価値感、罪悪感など、まだまだ沢山ありますが、
寂しさは、そのネガティブな感情のひとつであるにも拘わらず、
ポジティブな感情の優しさの、傍らにあるというか、ぴったり背中合わせにある様な気がしています。
私の肌感覚の話しなのですが、
少し寂しい、は人の感情の在り方のデフォルトで、
辿れば、優しさに繋がっている様に感じています。
【少し寂しい】は、
【ちゃんと優しい】の、証拠の様な気がしています。
読んで頂いてありがとうございます。
感謝致します。
伴走者ノゾム
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