「稚い愛」は傷つける
小動物のハムスターはご存知でしょうか。
キヌゲネズミ科キヌゲネズミ亜科に属する齧歯類の総称です。
夜行性で雑食性です。
フワフワで、手のひらに収まる愛らしい生き物です。
ペットショップや、時にホームセンターなどでも、手軽に安価で買うことが出来るので、
幼い子供にハムスターを買ってあげる親は、割と多い様に思います。
子供は総じて、愛らしい生き物が好きです。
しかし、ハムスターは天寿を全うしたとしても、2年半ほどの儚い生命です。
しかも、手のひらに収まる愛らしい存在は、体力もストレス耐性も体躯に見合った、儚さです。
幼い子供に世話を任せて、2年半の天寿を全うすることは、仲々無いかも知れません。
世話をする子供が幼ければ幼いほど、可愛いからと触り突っつき、撫で回し、儚い生命はたちどころに天に召される場合が大半です。
幼い子供に、悪気は無いし、本当に愛おしいと思っているから、触れ合いたくて、撫で回すのですが、ハムスターはその刺激によって天に召されてしまいます。
稚さは、待つことが出来ません。
稚さは、相手を慮ることが難しいのです。
ハムスターは夜行性ですが、幼児は昼間に撫で回す訳です。
それだけでも、ハムスターにとっては生命の危機です。
もっと大きな動物ならば、体調を崩した様子から世話をする側が気がつくことが出来るかも知れませんが、
手のひらサイズの儚い生命は、たちどころに天に召されます。
その幼い子供は、小さな生命を愛らしいと思ってます。
それは愛する、ということの芽生え、ではあります。
しかし稚さは、待てず、慮ることが出来ないのです。
待てない愛は、傷つけます。
慮ることの出来ない愛は、奪うのです。
おかしく思われるかも知れませんが、幼い頃の私と母親の関係性を考えた時、
この幼児とハムスターの関係性になぞらえると、大いに腑に落ちる部分が有るのです。
母は心に重大な無価値感を抱える人です。
そうなったのは、母の幼少期があまりにも過酷なものだったからです。
当然、母の幼少期を私がこの目で見た訳ではありませんから、詳細は割愛しますが、
母の生き様や、母と今は亡き母の両親との関係性、母と兄弟姉妹との関係性、などから推測すると、
母は両親から逃げ場を塞がれて、責められる様な幼少期を過ごした様です。
それは、そのまま幼少期の私が、母から受けた仕打ちと同じなので、
母は、自分が両親からされたことを、そのまま私にした、ということだと思います。
つまり、母は機能不全家庭に生まれ育ち、機能不全家庭は連鎖して、私も機能不全家庭に生まれ育った、ということです。
逃げ場を塞がれて、責め立てられる日常を過ごすうちに、幼い母の心は凍り付き、成長の歩みを止めてしまった様です。
情緒は未熟なままです。
外側は大人でも、心は子供のままの母は、私を出産しましたが、
母親になれる程の精神的成長を遂げていない母は、新生児の私を抱くことも、見ることも無く、育児放棄をしました。
母は離島にある実家に一人帰ってしまい、私は父が金で雇った赤の他人に、育てられました。
私が2歳になろうか、という頃に、母は戻って来て、そこで初めて顔を合わせ、私と父母はひとつ屋根の下で暮らすことになります。
産み落とした我が子を一目見ることすら無く、実家に逃げ込んだ母は、きっと母親になることが怖かったのだと思います。
心は遠い昔に凍り付き、成長の歩みを止めています。
心は幼児のまま、なのですから怖いのも分かります。
そんな、外見が大人で、中身は幼児のまま、の母の子育ては、
待つことも、慮ることも出来ません。
しかし、放っておくことも出来ないのです。
例えば、最初は箸の持ち方がわかりません。
鉛筆の持ち方がわかりません。
しかし、母は物を与えた瞬間に箸や鉛筆を使いこなすことを求めます。
箸を与え、鉛筆を与え、やってごらん、と言います。
おぼつかない様子を見て、ひとしきりダメ出しをします。
笑いながら、不器用だ、頭が悪い、と囃し立てます。
それが段々と笑顔が消え、語気が荒くなり、怒鳴りつける頃には手が出ます。
「どうして、こんな簡単なことが出来ないんだ、お前はどっかおかしいんだよ!」
母は手順を教えることはありません。
物を与えたら、直ぐに出来ると思い、出来ないと激しく怒り出します。
一から十までそうなので、例を上げるとキリがありません。
初めての紐靴、初めての自転車、全部そうです。
何かを与えた時ばかりではありません。
宿題をしていても、食事をしていても、風呂に入るにしても、口を挟み、囃し立て、怒り、手を出します。
心のこと、を考えるうちに、母が見えて来ました。
母は無価値感から目を逸らす為に、我が子を貶め、相対的に自分の価値が上がった様に感じることが常態化している。
子供を道具にしている。
子供を尊重出来ない。
其れ等は、全て真実だと思っています。
しかし、幼児とハムスター、になぞらえた時、もうひとつ気がつきました。
母は母なりに愛しているつもり、なんだと思いました。
母は待てません、幼いから、です。
母は慮れません、未熟だから、です。
幼児が、可愛いから、とハムスターを撫で回し、突っつき回し、
結果、傷つけ、生命を奪ってしまいます。
母も可愛いからこそ放っておけない、という側面もある、と思いました。
母なりの愛は、待てず、慮れず、尊重出来ません。
待てず、慮れず、尊重出来なければ、愛からは離れてしまいますが、
あまりにも未熟で、愛からは離れてしまっても、
あまりにも稚く、愛には届かなくても、
我が子が可愛いかったんだな、
とも思うんです。
読んで頂いてありがとうございます。
感謝致します。
伴走者ノゾム
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