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約束


『今年の夏は暑いね!とろけちまうよ』


それはヨシノリが働く田島鉄工所の田島の声で

あった。ここで働くヨシノリは現在17歳。朝から夕

方までここで働いて、その後夜間学校へ通うヨシノ

リ。仕事も学業も真面目な青年だ。ヨシノリは田島鉄

工所で働く前は、たびたび警察のお世話になってい

た不良少年だった。夜間学校に通い、大学に入ると

いう夢を持ってからガラリと非行への興味が失せた

のであった。鉄工所は熱い。田島の当たり前すぎる発

言に、一瞬ジョークなのか困惑したが、ヨシノリも

返す。「当たり前じゃないっすか!鉄工所なんです

から」田島はイヒヒと笑い事務室に帰って行った。

ヨシノリは付き合って一年目の彼女がいる。ゆかと

言って一つ年上の彼女だ。ゆかと共通の知人の紹介

で出会い、仲良くなった。そんな彼女と今日、付き合

って一年目の記念日デートをする約束なのだ。ヨシ

ノリはまだ車の免許が取れない、もっぱらバイクで

ある。そして仕事も終え、学校も終えた。ヨシノリ

はバイクにまたがった。「よし、行こう」と彼女の

待っ部屋へとアクセルを吹かした。ここからだった

ら一時期あれば着くであろう距離だ。急いだ。すると

小さな信号に差し掛かった所で、信号無視してき

たおばさんと衝突した。勢いがついていたせいで、

ヨシノリのバイクは前方部分を凹ませた感じとなっ

た。ヨシノリはそのまま逃げた。彼女とのデートを

優先させた。そのまま逃走させたバイク、スピード

を上げた。しばらくすると遠くでパトカーが巡回し

ている音がする、ヨシノリは「俺だ」とすぐに気づ

いた。バイクを道中にあった、レンタルビデオ屋の

脇に乗り捨てた。彼女の家まで後わずか、走って向

かう。その頃、家で待つゆかは、随分と遅いことを心

配していた。ヨシノリの携帯に掛けてもドライブマ

ナー中だ、時刻は牛頭0時を回っていた。さっきから

パトカーが何台も何台も通り過ぎて行く。ヨシノリ

は走った。そしつ彼女の住む部屋の灯りが見える距

離まできた。息を整えていると、灯りが消えた。もう

脚はバンバンである。ヨシノリは携帯を取り出し

て履歴を確認するとゆかから留守番が入ってた。


『一年目おめでとうだね!これからも宜しくね💓』


ヨシノリ大きく息を吐き、パトカーのサイレンの

方へと歩き出した。

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