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日本人の生きざま

佐藤愛子「あのころは本を読むことが遊びだったのね。悪い遊びというふうに考えられていたのね。」
田辺聖子「お酒やタバコと同じようにね!」

 佐藤愛子と田辺聖子の対談より(中公文庫)


『感傷旅行』や 『新源氏物語』で有名な田辺聖子と、直木賞受賞作家の佐藤愛子の対談集でおお、と思ったやりとり。

お二人とも戦前、戦中、戦後を生抜き、女流作家の頂点に立ち続けている。

というか佐藤愛子さん、まだご存命で?
検索したらなんと99歳。戦争を生き抜いて突っ走った人たちの生命力はちがうなあ。

「本を読むことが悪い遊び」だなんて。
なんて美しい。

そうだよなあ、きっと。
お二人の青春時代を考えたら文学界のトップには芥川龍之介、太宰治、三島由紀夫に澁澤龍彦、川端康成、安部公房なんかだもんなあ。そりゃギリギリの火遊びだ。
親が読むなというのも無理はないよなあ。


わたしはロシアとフランスの文学が大好きだけど、この両国でもやはり戦中、戦後は同じことが起こっている。
たくさんの妖しい文学。自殺と狂人化はいつでも最高のエンド。機密出版。監獄で執筆。文学誌はカルトで、右翼で、はたまた左翼で、ときどきAV。
文学は危ない遊びで、それでいていつも政治に関わる孤高のジャンルだった。
世界大戦が終わって、だんだん公に世に出てくるたくさんの名作。


日本文学にはあまり興味が湧かない。
正直二十歳を超えてから読み始めた。
戦中戦後の微妙な時期の日本文学は好きだ。作家の人生はどれも興味深い。



太宰はすごいよ。
名家の出身、人生で5回の自殺未遂。(うち3つは心中、女だけ死んで彼は生き残ったりもしてる)、左翼活動家。結核持ち、アル中、睡眠薬、ドラッグ依存。もちろん心中で没名。
自分の弱さから目を背け続けた彼が、はじめて自分と真っ向から対峙したのが「人間失格」だとわたしは思う。
わたしは太宰が好きだよ。
自己破壊的な人間の永遠のゴール。


三島由紀夫なんかもすごいなあとわたしは思う。
彼は名作をたくさん生み出したのち、右翼のトップとなり自衛隊の建物を占拠、演説。その直後に盟友と切腹。

戦中の日本が作り出した思想が、戦後に突然悪いものになる。そうなると誰が悪いのか、我々は全くわからなくなる。
彼の演説の時代なんかは、たくさんの若者が社会を自分たちの力で変えられると信じて、行動している。プロレタリア文学なんかもその筆頭だ。

ちなみに三島由紀夫の盟友でともに切腹した森田必勝のことを調べてみたことがあるが、これがまた面白い。
1945年生まれの彼の名前は、日本が戦争に勝てるように必勝(まさかつ)となった。両親は早くに他界、姉に育てられ、切腹の直前には初恋の相手の顔を文字通り" 一目見て" そそくさと立ち去った彼。
故郷の友人は演説の中継を観ながら、「" あぁ、これから森田くんも死ぬんだな" と思った」などと語っている。



わたしには理解できないたくさんのこと。

わたしには社会を変える力はない。
税金は上がり続けて、給与は上がらず、年金をもらう前に死ぬだろう。
そんなことは分かりきっていて、変えようという発想がまずない。気にしたら終わりである。

海外に逃げたみたり、文学で現実逃避しているうちに、今日も死に近づいている。




全然違う話ですけど、抗うつ剤ってやっぱりすべての感情の起伏がなくなるような感覚がある。
喜びや感動も薄れる。悲しくて、消えたくて泣くことが減っだけど、映画を観ても泣かない。

だけど薬をやめればきっとたちまち元戻り。
過去が重くて背負えないし、傷は増え続ける。
診断名は相変わらずPMDDのままである。

わたしはもともと欠陥品。母の言ったとおりだよ。一生薬を飲むのかなぁ。
カウンセリングでどこまで改善できるのだろう。

やっぱりどこか、焦っている。




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