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展覧会レポ:十和田市現代美術館「常設展」「野良になる」ほか

【約5,900文字、写真約80枚】
青森の美術館巡りの一環として、十和田市現代美術館で「常設展」「野良になる」などを鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、こんな美術館は初めてで、満足度が高かったです!とにかくクセが強すぎて、楽しい!面白い!アートに興味が全くない人も十分楽しめると思います。また、無料で楽しめる屋外アートが多く、美術館の建築も外に丸見えになっていることにより、アートと町が共生し、アートが町を活性化している点は、アートの価値を存分に生かし切っている素晴らしい取り組みだと思いました。青森旅行の目的を、十和田市現代美術館にしても十分に足りると思います!

展覧会名:「常設展」「野良になる」
場所:十和田市現代美術館
おすすめ度:★★★★★
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★★☆☆
会期:2024年4月13日(土) - 11月17日(日)
休館日:月曜日
開館時間: 9:00 − 17:00
住所:青森県十和田市西二番町10-9
アクセス:八戸駅からバスで約1時間
入場料(一般):1,800円(高校生以下は無料!)
事前予約:ー
展覧所要時間:まちなか常設展時なども含めると2〜3時間
展覧撮影:全て可能
URL:https://towadaartcenter.com/exhibitions/noraninaru/ 


▶︎訪問のきっかけ

青森の美術館巡りの一環として、十和田市現代美術館に行きました。行く前は「白い部屋がたくさんあって、カラフルな馬のアートがある」くらいの知識しかありませんでした。

▼青森県にある他の美術館の投稿

▶︎美術館へのアクセス

案内標識

十和田市現代美術館はアクセスが大変悪い!車やレンタカーで行く人以外は、綿密に時間を調べないと、1日の計画が破綻します。

私は八戸駅付近に宿泊し、バスで十和田市現代美術館に向かいました。八戸駅から十和田市現代美術館に行くバスは2種類(十和田観光電鉄バス、JRバス東北)あります。私は、以下の★をつけたルートで往復しました。

【行き】八戸駅→十和田市現代美術館(土日祝日)
★7:00→8:04(十和田観光電鉄バス)バス停「官庁街通」で下車
10:00→10:44(JRバス東北)
10:30→11:44(十和田観光電鉄バス)
13:30→14:14(JRバス東北)
17:30→18:44(十和田観光電鉄バス)

八戸駅の5番バス乗り場(十和田観光電鉄)
時刻表(八戸駅→十和田市現代美術館)

【帰り】十和田市現代美術館→八戸駅(土日祝日)
★11:29→12:20(JRバス東北)バス停「十和田市現代美術館前」から乗車
16:12→17:28(十和田観光電鉄バス)
17:29→18:20(JRバス東北)

美術館の目の前のバス停(JRバス東北)
時刻表(十和田市現代美術館→八戸駅)

非常にシリアスだと思ったことが、帰りのバスが11時台の次は5時間後の16時台しかないことです。私は、この日に八戸市美術館も行って、新幹線で東京方面に帰る予定だったため、必然的に、★をつけたルートになりました。なお、結果的にこのルートはベストでした。

住所:青森県十和田市西二番町10-9

▶︎十和田市現代美術館とは

巨大なホワイトボックスが特徴的

十和田市現代美術館は「アートを通した新しい体験を提供する開かれた施設」として、Arts Towada計画の中核となる施設です。ここ十和田でしかみることができない作品が展示されている常設展は、草間彌生、ロン・ミュエクなど世界で活躍するアーティストらによるコミッションワークにより構成されています。

公式サイトより

十和田市現代美術館は、2008年4月に開館。ヴィジョンは「十和田市現代美術館は、アートによる"新たな体験"を提供し、未来の創造へ橋渡しをする美術館となることを目指します」。

十和田は、平安・鎌倉時代から馬の産地として有名
大量の馬を飼うには最高の土地だったらしい
町のいたる所に馬に関するオブジェがある

特徴的な建築は、西沢立衛りゅうえによるものです。町との繋がりや屋外への開放的な連続性などを提示しながら「アート作品のための家」がコンセプト。西沢立衛の手がけた他の建築は、豊島美術館軽井沢千住博美術館など、私がいつか行ってみたいと思っていた美術館ばかりでした。

「日本の道100選」にも選ばれた長さ1.1キロの官庁街通りでは155本の桜が咲き誇る
「十和田市春まつり」が開催中(2024年4月6日~5月5日)

ちなみに、十和田市現代美術館の英語名は、「Towada Art Center」です。「Art Museum」ではありません。「Art Center」とは主に、"コレクションを収集する美術館ではなく、企画展や公募展を行う大型ギャラリーとして機能しており、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及"を行う施設を指すようです(参考)。なお、国立新美術館 (The National Art Center)も「Art Center」です。

美術館の近くには、桜並木、広場、公園がある。
町全体がとても良いところ

十和田市現代美術館にコレクションを展示する部屋はあります。しかし、それらは全て恒久的な展示のため「収集」に当たらないことに加え、町全体を使って美術体験の提供を目指していることから「Art Center」と名乗っているのでしょう。

なお、十和田市現代美術館の計画に携わったのはエヌ・アンド・エー株式会社。2002年より、全体監修者としてほぼゼロの状態から計画策定を行い、作品や作家の選定、美術館の機能や面積構成、設計者の選定支援、運営方針の策定など、計画策定からオープン後の広報活動まで関わったそうです。

▶︎コレクション展・企画展

入り口の自動ドア

十和田市現代美術館は、とにかく「振り切っている」「尖っている」「町を一変させた」美術館だと思いました。

どの部屋・作品もクセが強すぎ!面白すぎる!こんな美術館は初めてでした。交通の便が悪い十和田市にわざわざ来た甲斐は大いにありました。

シールを貼ったパンフレットがチケット代わり

建築も独特でした。四角い独立した部屋をそれぞれ通路で繋げている造りになっています。1つの作品のために1つの部屋が造られており、部屋によっては2階、屋上もあります。なかには、ものすごく巨大な部屋もありました。とても贅沢!すごく非効率!だが、めっちゃ面白い!

屋上から見た風景

どの部屋も、数人しか入らないほど小さく、人が多いと作品を楽しみづらいです。また、野外展示されている作品と一緒に写真を撮る場合も考慮すると、朝イチ(9時)に行くことをおすすめします。11時くらいから人が増え出して、鑑賞しづらくなります。

建築もアートも全部が面白く、現代アートに興味がある人は当然のこと、興味がない人にもおすすめしたいです。シンプルに面白い、楽しいため、何らかの刺激は必ずもち帰るはずです。

作品を全部見るには時間がかかりました。私は「まちなか常設展示」も含めて、2時間半では足りなかったです。大ボリュームで、エンターテイメント性に富んでおり、人々を笑顔にする美術館だと思いました。

さらに、十和田市現代美術館は「町と共生する美術館」だと感じました。私は、青森県立美術館は「自然と共生する美術館」だと過去に投稿しました。「自然」も良いけれど、「町」もすごく良いなぁ、と思いました。

✔️美術館

美術館敷地内にある作品を紹介します。

チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》
馬の産地として有名な十和田を尊重した作品。
真っ白な建物にも映えるるため、写真を撮るのも大人気
椿昇《アッタ》
小さい蟻も、大きくするとちょっと怖く感じる

以下、入館料を払って見ることができる作品です。

ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》
入場後、いきなり4mのおばさんがお出迎え。
細かいところまでリアル!大きいって単純にすごい
山極満博《あっちとこっちとそっち / ぼくはきみになれない》
山極満博《あっちとこっちとそっち / ひとつはふたつ》
山極満博《あっちとこっちとそっち / なんにもない話》
:小さすぎて入れない部屋もあります
塩田千春《水の記憶》
塩田千春の作品を初めて見た。草間彌生的なパラノイアを感じるが、不思議と引き込まれる。
大阪中之島美術館で16年ぶりの個展が開催予定(2024.09.14〜)
トマス・サラセーノ《オン・クラウズ (エア-ポート-シティ)》
バルーンの中に入ることができます
オノ・ヨーコ《念願の木》《三途の川》《平和の鐘》
:京都の古寺から寄贈された鐘は、カーンと鳴らせます
《念願の木》には色んな言語で短冊がぶら下がっている
アナ・ラウラ・アラエズ《光の橋》
外から見た様子。
ディズニーランドのスペース・マウンテンみたい
栗林隆《ザンプランド》
:椅子に登って穴に顔を入れると…
あざらしと目が合います🦭
ソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》
約9mもある巨大な作品。
圧倒的な物量に飲まれる感覚を受けます
数万体の樹脂製の肩車をするフィギュアが使われています
外から見た様子
森北伸《フライングマン・アンド・ハンター》

この後、2階に上ります。

フェデリコ・エレーロ《ウォール・ペインティング》
3層の階段にペイティングされています。
かわいいようでちょっと不気味

2階にある作品です。

マリール・ノイデッカー《闇というもの》
:急に暗い部屋に入るため、目がすぐに順応できない
内側はこんな感じ
ボッレ・セートレ《無題 / デッド・スノー・ワールド・システム》

その後、屋上へ。

奈良美智《夜露死苦ガール2012》、ポール・モリソン《オクリア》
:高さ10m!
フェデリコ・エレーロ《ミラー》
同じアートが原美術館ARC(群馬県)にもありますね

また、1階に降ります。

名和晃平《PixCell-Deer#52》
いつ見ても神々しい名和さんの鹿

美術館内から出た先にも作品があります。

外にある案内看板
ラファエル・ローゼンダール《RR Haiku 061》
レアンドロ・エルリッヒ《建物―ブエノスアイレス》
めちゃくちゃでかいエルリッヒ専用の部屋。
過去に、同じ作品を森美術館(2018年)でも楽しみました

その後、カフェで一休み。

マイケル・リン《無題》
:ミュージアムカフェの床も作品の一つ

以上で大体の常設展示は終了です。

✔️まちなか常設展示

私はバスで8時ごろに十和田現代美術館付近に到着しました。美術館の入場は9時からなので、パブリックアートを全部見てもカフェで休憩する時間もあるかな、と考えていました。

しかし、想定以上に作品数があり、全て1箇所に固まっていないため、1時間で「まちなか常設展示」「ストリートファニチャー」を全部見れませんでした。また、9時以降、作品の中に入れる展示もありました(私は時間がなかったため入れず)。

無料で楽しめる屋外展示がこんなに多い美術館は、日本では十和田市現代美術館だけではないでしょうか。十和田市現代美術館が掲げる「アートによる"新たな体験"を提供し、未来の創造へ橋渡しをする」というビジョンをまさに体現しています。

来場者はみな本当に笑顔でアートを楽しんでおり、その結果、町の活性化にもつながっていることがよく分かりました。もちろん十和田に住んでいる方は生活にアートが密着し、人生が豊になっていると思います。

人口約6万人の十和田市で、開館後わずか4日で入館者1万人を突破、開館から6年目の2014年8月には累計100万人の入館者数を突破したそうです。

美術館内のアート、建築が素晴らしいだけでなく、屋外展示も含めてアートの価値を幅広い人に伝えている点が、他の美術館にはない、十和田市現代美術館ならではの特徴だと思います。私はその点に共感し、満足度がとても高い結果となりました。

エルヴィン・ヴルム《ファット・ハウス》《ファット・カー》
:9時以降、家の中に入れます
草間彌生《愛はとこしえ十和田でうたう》
:来場者はみな楽しく写真撮影
草間彌生《リンリン》
草間彌生《十和田で発見された私の黄色カボチャ》
草間彌生《十和田のハナコちゃん》
ジャウメ・プレンサ《エヴェン・シェティア》
:夜は光るらしい
インゲス・イデー《ゴースト》《アンノウン・マス》
:9時以降、入ることができます
ニュー-テリトリーズ / R&Sie(n)《ヒプノティック・チェンバー》
:こちらも9時以降、入ることができます
目[mé]《space》
:時間切れで行けませんでした
本山ひろ子《ヨコドリ》
:駐車場にある作品。スルーしてしまう人が多そう

✔️ストリートファニチャー

座ることができる作品も、官庁街通りなどに設置されています。

劉建華リュウ・ジェンホァ《痕跡》
マイダー・ロペス《トゥエルヴ・レヴェル・ベンチ》
マウントフジアーキテクツスタジオ《イン・フレークス》
鈴木康広《はじまりの果実》

✔️「野良になる」

本展では近代が生み出した自律した主体としての「人間」を見直し、そこから排除された存在や思考に目を向けます。私たちの思考を規定するさまざまな二項対立的な枠組みの境界を撹乱しつつ強かに——野生でも飼われるのでもなく野良のように——息づくあり方や物語に出会うことになるでしょう。

公式サイトより

十和田市現代美術館には、永久展示のほかに、企画展用のスペースも3つあります(庭も含めると4つ)。

展覧会「野良になる」は、AOMORI GOKANアートフェス2024の企画です。フェスのテーマ「つらなりのはらっぱ」を自然と人間の交わるところと捉え、その複雑に絡まる関係性を表現している、とのことです。

アナイス・カレニン《植物であったことはない》
:庭にある作品。筒から音が出ています
丹羽海子 《メトロポリス・シリーズ:太陽光処理施設》
本物のコオロギが素材として使用されています。シュール…
永田康祐《鮭になる》

▶︎まとめ

買ったポストカード。チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》

いかがだったでしょうか?私にとって、とても満足度の高い美術館でした。もう単純に、楽しい、面白い!無料で楽しめる屋外常設展時、有料の館内展示ともに、アートに全く興味がない人でも120%楽しめると思います。アートの価値で町と共生、活性化している点も素晴らしいです。非常にアクセスが悪いですが、青森旅行の第一目的に据えても良いくらいだと思います!

▶︎今日の美術館飯

★3.4/カフェ&ショップ cube (青森県/十和田市) - 青森スペシャルスイーツ (¥730)、青森のアップルティー (¥410)
とんでもなく開放的で気持ちのいい空間

最近、ニュースで見たお店がバス停の目の前だった
2022年9月にオープンした十和田市地域交流センター(とわふる)。
ギャラリーなどを使える地域交流施設

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