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140字小説

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2020年7月の記事一覧

妹と僕と彗星(ここで「箒星」と妹に訂正される)

妹と僕と彗星(ここで「箒星」と妹に訂正される)

「彗星より箒星のが好き」
「同じ物だけど」
溜息まじりに緩く頭を振る姿は十歳ながら女性のそれだ。
「全然違う。彗星はシュッとしてるけど箒星はキラキラって感じでしょ?」
「擬音で言われても」
「そこを汲み取るのがイイ男なの」
「……なるほど」
ここは譲るべきだな、と汲み取った僕はたぶん良い兄だ。

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ネオワイズ彗星が気になります((・ω・))ソワソワ

窒息してしまうその前に

窒息してしまうその前に

さようならを告げた時、僕は空気になっていたのだと気がついた。
酸素ではなく二酸化炭素だ。
含有量は多いのに必要とはされない。
当たり前だという思い込みだけで、君はここにいることを求めた。
もうずっと前から無くても生きていられたのに。
最後に君には伝わらない愛の言葉を。
「君は僕の酸素でした」

久しぶりのアルコールにぼやける頭が心地良い。そうだ、いつだって僕は考えすぎる。こんなふうに少しだけ夢見心地でいられたら、きっともう少し楽に生きられた。例えば、幸せで不確かな夢の中でだって。空っぽの右手を握り締めて、ごめんと呟く。あの日握り潰した言葉はまだ、この手の中で泣いていた。