年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映…

年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映画」「アニメ」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。

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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新…

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『井上俊之の作画遊蕩』 : アニメーター目線の問題提起とその限界

書評:井上俊之著・高瀬康司編著『井上俊之の作画遊蕩』(KADOKAWA) 本書は、ベテラン人気アニメーター井上俊之による対談集である。対談相手は、新旧のアニメーターを中…

年間読書人
18時間前
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ロジェ・ヴァディム監督 『素直な悪女』 : 女の魅力 と「ヌーヴェル・ヴァーグ」

映画評:ロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女』(1956年・フランス映画) 先日、レビューを書いた、SFファンタジー映画『バーバレラ』(1962年)を撮ったロジェ・ヴァディ…

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小林秀雄 『戦争について』 : 戦時における「時局迎合と 俗情との結託」

書評:小林秀雄『戦争について』(中公文庫) これまでは「小林秀雄の恥部」として、全集には収められていても、文庫化はされなかった「戦時中の文章」を、セレクトしてま…

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スタンリー・キューブリック監督 『時計じかけのオレンジ』 : 半世紀前の「暴力とエロス」描写

映画評:スタンリー・キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1972年・アメリカ映画) アンソニー・バージェスの近未来ディストピアSF小説を原作として、スタンリー…

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ジョルジュ・シムノン 『証人たち』 : 「裁くなかれ」は、 無欠の神にしか言い得ない。

書評:ジョルジュ・シムノン『証人たち』(河出書房新社) 「メグレ警視」シリーズで知られる、ジョルジュ・シムノンによるノンシリーズの法廷小説である。 ただし、ミス…

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今敏 監督 『妄想代理人』 : 「少年バット」の正体

作品評:今敏監督『妄想代理人』(2004年・TVシリーズ全13話) 『妄想代理人』は、2004年に「WOWOW」で全13話が放送された、今敏監督 唯一のテレビアニメ作品である。 今…

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仲野佑希 『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』 : Amazon が、 まさにこれ!

書評:仲野佑希『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』(翔泳社) 本書は、商用ウェブサイトにおける「欺瞞的手口」の解説書であり、主にウェブサ…

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セルゲイ・エイゼンシュテイン監督 『戦艦ポチョムキン』 : イデオロギーとは、自覚困難な「色メガネ」の一種

映画評:セルゲイ・エイゼンシュテイン監督『戦艦ポチョムキン』(1925年・ソ連映画) 「モンタージュ」理論で知られる、セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督の第2長編…

年間読書人
11日前
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J・D・サリンジャー 『ライ麦畑でつかまえて』 : 優しさと弱さと

書評:J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(白水社) 私が活字本を読み始めた高校生の頃、すでにサリンジャーは人気作家であったし、そのデビュー作にして代表作…

年間読書人
12日前
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犬童一心監督 『ジョゼと虎と魚たち』 : 障害者とハッピーエンド

映画評:犬童一心監督『ジョゼと虎と魚たち』(2003年・日本映画) ここ数年来の話だが、「映画」というものの全体像に興味を持って、古今東西の作品をあれこれピックアッ…

年間読書人
2週間前
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切られ者の小唄

今日は、ずいぶん前の記事の、補足記事をアップさせてもらった。 最近、よく記事を読んでくださり、律儀にイイネまでつけてくださっている方が、その記事の「リンクが切れ…

年間読書人
2週間前
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リンク切れ「論争ログ」の再録

※ 当ページは、「2021年7月12日 00:21」アップの、note記事「非・日本人的な〈議論〉の実践: Amazon「6月問題」をめぐって」を補足するものとして、新たに作成しました…

年間読書人
2週間前
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ジャン=リュック・ゴダール 『ゴダール 映画史』 : 「美的レジスタンス」としてのゴダール

書評:ジャン=リュック・ゴダール『ゴダール 映画史(全)』(ちくま学芸文庫・2012年) ゴダールが亡くなった2022年つまり一昨年の暮れの追悼上映会で、代表作の『勝手…

年間読書人
2週間前
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ショーン・ダーキン監督 『アイアンクロー』 : 「家族愛と強くあること」の呪縛

映画評:ショーン・ダーキン監督『アイアンクロー』(2023年・アメリカ映画) 1960年代から70年にかけて、必殺技「アイアンクロー(鉄の爪)」をひっ提げて、日本において…

年間読書人
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理屈っぽい夢 : 子供の自転車遊び

今朝、寝覚めに見ていた夢なのだろう。あるいは、半覚醒の状態でいろいろ考えていたということなのかもしれない。とにかく、目覚めた後でも、夢の中で考えたことの大半を記…

年間読書人
2週間前
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固定された記事

〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新本格ミステリの仕掛け人」などと呼ばれた名編集者であることについて、ここであらためて説明する必要などないだろう。本書を購読したり、ネットで本書の内容を確認したりするほどの人なら、宇山についてそれなりの予備知識を、あらかじめ持っているはずだからだ。 本書は内容は、次のとおり。 (1)序文(太田克史) (2)編集者・

『井上俊之の作画遊蕩』 : アニメーター目線の問題提起とその限界

書評:井上俊之著・高瀬康司編著『井上俊之の作画遊蕩』(KADOKAWA) 本書は、ベテラン人気アニメーター井上俊之による対談集である。対談相手は、新旧のアニメーターを中心とした、アニメ制作関係者。 「編著」者の高瀬康司は、「アニメ研究家」とでも呼ぶべき人で、「作品論」ではなく「表現(方法)論」の側面からアニメを研究している人のようだ。 つまり、本書では、井上の対談に立ち合い、その対談記録をまとめる(文章化する)とともに、井上と自身の共通認識としての「現在のアニメ制作現場の

ロジェ・ヴァディム監督 『素直な悪女』 : 女の魅力 と「ヌーヴェル・ヴァーグ」

映画評:ロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女』(1956年・フランス映画) 先日、レビューを書いた、SFファンタジー映画『バーバレラ』(1962年)を撮ったロジェ・ヴァディムの、監督デビュー作である。 どうしてこの映画を見たのか、その理由から書いていこう。 私が『バーバレラ』を見たのは、伝説的な「SF映画」としてであり、監督の方にはまったく興味がなかった。だから、『バーバレラ』を見てレビューを書くまでは、私は同作を「アメリカ映画」だとばかり思い込んでもいた。 なにしろ「SF

小林秀雄 『戦争について』 : 戦時における「時局迎合と 俗情との結託」

書評:小林秀雄『戦争について』(中公文庫) これまでは「小林秀雄の恥部」として、全集には収められていても、文庫化はされなかった「戦時中の文章」を、セレクトしてまとめたアンソロジーが本書である。 小林秀雄が、いかに「低レベル」の人間かが、とてもよくわかるので、小林秀雄批判派は無論のこと、擁護派にも必読の一書だ。 それにしても「ひどい」。 一一かく言う「小林秀雄ぎらい」の私でも、わざわざ全集(やその端本)を読むほど小林秀雄批判に熱心ではなかったため、読むのはもっぱら、文庫本に

スタンリー・キューブリック監督 『時計じかけのオレンジ』 : 半世紀前の「暴力とエロス」描写

映画評:スタンリー・キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1972年・アメリカ映画) アンソニー・バージェスの近未来ディストピアSF小説を原作として、スタンリー・キューブリックが映画化した、1972年の作品。 「名作」の誉高い作品だが、いま見ると、いささか「評判だおれ」。 歴史的な価値は認めるものの、私には「いま見ても、古びることなく素晴らしい作品」だなどとは、歯が浮くから、とうてい言えない。 なにしろ、本作は1972年の作品で、日本では、大阪での最初の万国博覧会

ジョルジュ・シムノン 『証人たち』 : 「裁くなかれ」は、 無欠の神にしか言い得ない。

書評:ジョルジュ・シムノン『証人たち』(河出書房新社) 「メグレ警視」シリーズで知られる、ジョルジュ・シムノンによるノンシリーズの法廷小説である。 ただし、ミステリ(推理小説)ではない。 あくまでも「法廷もの」であり、大岡昇平による法廷ものの傑作『事件』よりもさらにミステリ的な要素は薄く、本作の場合は「人間とは、どういうものであるか」ということと、その結果「人間が人間を(誤りなく)裁くことは可能なのか」ということがテーマとなっている。 本作は、重罪裁判所の裁判長である主人

今敏 監督 『妄想代理人』 : 「少年バット」の正体

作品評:今敏監督『妄想代理人』(2004年・TVシリーズ全13話) 『妄想代理人』は、2004年に「WOWOW」で全13話が放送された、今敏監督 唯一のテレビアニメ作品である。 今敏については、最初に『パプリカ』(2006年)を観て惚れ込み、続いて『PERFECT BLUE』(1997年)、『千年女優』(2001年)、『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)と劇場用長編作品を続けざまに見たのだが、正直なところ『パプリカ』以上の作品ではないと感じた。 なにより今敏の作品は、

仲野佑希 『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』 : Amazon が、 まさにこれ!

書評:仲野佑希『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』(翔泳社) 本書は、商用ウェブサイトにおける「欺瞞的手口」の解説書であり、主にウェブサイト制作者に向けてその問題点を解説し、こうしたものを安易に作ってしまうという罠に陥らない(共犯者になってしまうことのない)ようにするための、正しい考え方を指南した本である。 つまり、利用者である顧客目線ではなく、基本的には、そうしたウェブサイトを作ったり運用したりする側に対し、具体例を示して、ありがちな「心得違い」

セルゲイ・エイゼンシュテイン監督 『戦艦ポチョムキン』 : イデオロギーとは、自覚困難な「色メガネ」の一種

映画評:セルゲイ・エイゼンシュテイン監督『戦艦ポチョムキン』(1925年・ソ連映画) 「モンタージュ」理論で知られる、セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督の第2長編にして、映画史を語る上で外せない、古典的な名作である。 ただし、内容的には、「万国の労働者よ、立ち上がれ!」という共産主義イデオロギーを宣伝鼓舞するための映画であり、今の日本で言えば「原子力発電は、日本の未来を支えるクリーンエネルギーです」とか言っている、東京電力や関西電力などの「テレビコマーシャル」の、偉大な先

J・D・サリンジャー 『ライ麦畑でつかまえて』 : 優しさと弱さと

書評:J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(白水社) 私が活字本を読み始めた高校生の頃、すでにサリンジャーは人気作家であったし、そのデビュー作にして代表作である本書『ライ麦畑でつかまえて』も、すでに「現代の古典」としての評価を受けていて、まだ活字本を読まなかった頃の私に耳にも、その特徴的なタイトルだけは入ってきていた。 いまさら『ライ麦畑でつかまえて』(以降、適宜『ライ麦』と略記)を読む気になったのは、先日、NHKのテレビ番組で『ライ麦』を取り上げており、「ベトナ

犬童一心監督 『ジョゼと虎と魚たち』 : 障害者とハッピーエンド

映画評:犬童一心監督『ジョゼと虎と魚たち』(2003年・日本映画) ここ数年来の話だが、「映画」というものの全体像に興味を持って、古今東西の作品をあれこれピックアップして見るようになった。そこで、これまではほとんど見てこなかった「日本の劇映画(実写映画)」の中でも、かつて「気になった作品」くらいを見てみようという気にもなった。 その第1弾が、本作『ジョゼと虎と魚たち』である。 公開当時からこの映画の評判は聞き及んでいたし、その奇妙なタイトルが気になって、ずいぶん前にネット

切られ者の小唄

今日は、ずいぶん前の記事の、補足記事をアップさせてもらった。 最近、よく記事を読んでくださり、律儀にイイネまでつけてくださっている方が、その記事の「リンクが切れていて読めません」という、なんとも有難いご指摘のコメントを寄せてくださったのだ。 まずは、リンク切れになっていた当該記事「非・日本人的な〈議論〉の実践: Amazon「6月問題」をめぐって」と、その補足記事「リンク切れ「論争ログ」の再録」のリンクを張っておこう。 で、「リンク切れ」のご指摘をいただき、「どれどれ、

リンク切れ「論争ログ」の再録

※ 当ページは、「2021年7月12日 00:21」アップの、note記事「非・日本人的な〈議論〉の実践: Amazon「6月問題」をめぐって」を補足するものとして、新たに作成しました。 あくまでもこのページは、「論争のログ」をアップするためのものであり、詳しい経緯については、元ページをご参照ください。 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎ 【Solaris1さんとの、やり

ジャン=リュック・ゴダール 『ゴダール 映画史』 : 「美的レジスタンス」としてのゴダール

書評:ジャン=リュック・ゴダール『ゴダール 映画史(全)』(ちくま学芸文庫・2012年) ゴダールが亡くなった2022年つまり一昨年の暮れの追悼上映会で、代表作の『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』を見て以来、こんな「意味不明な作品」を撮りながら、一部映画マニアからは「天才」「巨匠」と崇められているらしい、この「謎の人物」に興味を持ち、私なりにその理解を深めようとしてきた。 要は、「この作品の、どこがどう面白いんだろう?」というのと、「この人(ゴダール)は、何を考えてこん

ショーン・ダーキン監督 『アイアンクロー』 : 「家族愛と強くあること」の呪縛

映画評:ショーン・ダーキン監督『アイアンクロー』(2023年・アメリカ映画) 1960年代から70年にかけて、必殺技「アイアンクロー(鉄の爪)」をひっ提げて、日本においても、若きジャイアント馬場やアントニオ猪木らと死闘を繰り広げたアメリカ人プロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。 本作は、「呪われた一家」とまで呼ばれた、彼とその家族たちの波瀾の人生を、次男ケビンの視点から描いた、文字どおりの「衝撃作」である。 フリッツは、信仰心厚い妻との間に、6人の息子に恵まれた。ただ

理屈っぽい夢 : 子供の自転車遊び

今朝、寝覚めに見ていた夢なのだろう。あるいは、半覚醒の状態でいろいろ考えていたということなのかもしれない。とにかく、目覚めた後でも、夢の中で考えたことの大半を記憶していたし、これは書かねばならないと思い、「こんな夢を見た」という仮題だけは、スマホにメモっておいた。 タイトルは変更したものの、それをいま書いているのである。 夢で見たのは、今の家から200メートルくらいの場所にあった、小さな商店街である。父が最後に店(寿司店)を出していたのがここだったのだが、今ではそこがどうな