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読んだもの/観たもの/聴いたものなどについてちまちまと。

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記事一覧

映画『ブレードランナー』における「水の主題」

『ブレードランナー』(1982)は、酸性雨が降りしきるロサンゼルスを舞台とし、火星から逃亡して街に潜伏する人造人間を殺す任務を負うデッカードを主人公に据えた映画である…

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1か月前
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映画『BLUE GIANT』の《流れ》の詩学

ジャズの熱、その「青」の温度は、指先や口元から放たれ、金管を溶かすかのように流れ伝い、大きな音となって聴く者を魅了していく。 「青」は若さの象徴でもある。時が流…

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1年前
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『下校オニ』におけるメタ構造

先日、曽山一寿賞の大賞として、せがわひろわき作『下校オニ』がコロコロオンラインで公開された。筆者も先ほど読んだので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮し…

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1年前
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ultra soul 「メマイ…」論:文脈からの考察

先日、QuizKnock CEOの伊沢拓司氏が『伊沢拓司の低倍速プレイリスト』という新連載記事の第一回として、B'z『ultra soul』の歌詞についての考察を投稿した。 筆者も先頃読…

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1年前
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『45510』考察 ~白米とガラスが表すもの~

漫画『【推しの子】』の原作者・赤坂アカによる書き下ろし小説『45510』を読んだので、感じたことなどを少々。小説、漫画、アニメともにネタバレには一切配慮しません。ま…

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1年前
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『RRR』批評:火と水のモチーフから

人生で初めてインド映画を見たので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈…

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1年前
3

Ado 2ndライブ『カムパネルラ』感想 ~銀河鉄道上での変身~

Adoのライブに行ってきたので、その演出について感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、…

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1年前
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映画『ブレードランナー』における「水の主題」

映画『ブレードランナー』における「水の主題」

『ブレードランナー』(1982)は、酸性雨が降りしきるロサンゼルスを舞台とし、火星から逃亡して街に潜伏する人造人間を殺す任務を負うデッカードを主人公に据えた映画である。この映画の原作となった、フィリップ・K・ディックによるSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(1968)では、人造人間はアンドロイドと呼称され、彼らは徹底的に「共感能力」に欠ける存在として描かれているが、一方で映画『ブレードラ

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映画『BLUE GIANT』の《流れ》の詩学

映画『BLUE GIANT』の《流れ》の詩学

ジャズの熱、その「青」の温度は、指先や口元から放たれ、金管を溶かすかのように流れ伝い、大きな音となって聴く者を魅了していく。

「青」は若さの象徴でもある。時が流れれば二度と戻らない、一瞬の輝き。時間芸術である音楽、その中でも即興を醍醐味とするジャズだからこそ、その一回性が十二分に伝わるのだ。

世界一のジャズプレーヤーとは何か。

ライブシーンにおいて、奏者は目が眩まんばかりの輝きを放っている。

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『下校オニ』におけるメタ構造

『下校オニ』におけるメタ構造

先日、曽山一寿賞の大賞として、せがわひろわき作『下校オニ』がコロコロオンラインで公開された。筆者も先ほど読んだので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。

※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。

「下校オニ」という遊びの構造

下校オニの動線

まず、下校オ

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ultra soul 「メマイ…」論:文脈からの考察

ultra soul 「メマイ…」論:文脈からの考察

先日、QuizKnock CEOの伊沢拓司氏が『伊沢拓司の低倍速プレイリスト』という新連載記事の第一回として、B'z『ultra soul』の歌詞についての考察を投稿した。

筆者も先頃読んだので、これに乗っかる形で論考を書いてみたいと思う。
※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記して

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『45510』考察 ~白米とガラスが表すもの~

『45510』考察 ~白米とガラスが表すもの~

漫画『【推しの子】』の原作者・赤坂アカによる書き下ろし小説『45510』を読んだので、感じたことなどを少々。小説、漫画、アニメともにネタバレには一切配慮しません。また、アニメ『【推しの子】』の主題歌『アイドル』にも多少言及します。

※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。

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『RRR』批評:火と水のモチーフから

『RRR』批評:火と水のモチーフから

人生で初めてインド映画を見たので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。
※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。

以下目次。

「火」vs「水」本作では、二項対立のモチーフがあまりにも分かりやすく提示される。「火」と「水」である。これ以上なく分かりやすい。そう

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Ado 2ndライブ『カムパネルラ』感想 ~銀河鉄道上での変身~

Ado 2ndライブ『カムパネルラ』感想 ~銀河鉄道上での変身~

Adoのライブに行ってきたので、その演出について感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。
※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。

セットリスト
以下今回のセットリスト。

1. 夜のピエロ
2. ラッキー・ブルート
3. ラブカ?
4. ドメスティックでバイオレ

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