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『きみはいい子』(中脇初枝 ポプラ社)

『きみはいい子』(中脇初枝 ポプラ社)

「今振り上げたこの手が、一時間前にはあの本を読んでいたのではなかったか。」

子供は天使じゃない。大人も神様じゃない。でも人間だから、支え合い、差し伸べて、抱きしめる手を持っているのではないのか。

どこにでもあるような新興住宅地を舞台に、子供たちとその周囲にいる大人の姿を描いた五篇の連作短篇集。

テーマは、児童虐待。淡々とした筆致で、日常を紡ぐように、悲しい現実に晒される子供、また晒された過去

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『午前4時、東京で会いますか? パリ・東京往復書簡』(シャンサ×リシャール・コラス ポプラ文庫)

『午前4時、東京で会いますか? パリ・東京往復書簡』(シャンサ×リシャール・コラス ポプラ文庫)

いつか午前4時に、会えるといいなと思っている。

北海道に友達がいて、時々本を贈りあったりしている。

これは、彼女からもらった、たぶん最初の一冊じゃないかと思うのだけど、定かではない。

中国人フランス語作家、シャンサと、フランス人日本在住ビジネスマン、コラスが、長い手紙を交わしながら文化について考えを添わせていく。

お互いの持つ歴史は、経験としてかけ離れているように見える。

なのに、二人は

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『i』(西加奈子 ポプラ社)

『i』(西加奈子 ポプラ社)

なんと言ったらいいのかな。

たぶん、誰かにこの本どう?って聞かれたら、自分の中にある愛を受け止められる一冊ですと答えると思う。

アメリカ人の父と日本人の母を持つ、シリアからの養子の女の子が主人公。彼女はずっと自分のいる場所を受け入れることができないでいる。受け入れられないことを恥ずかしく、傲慢に感じながらも違和感を持ち続けている。

そんな主人公・アイが、自分の世界の輪郭を掴む過程を描いた物語

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