知の武装 : 救国のインテリジェンス (手嶋 龍一/佐藤 優)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
手嶋龍一氏と佐藤優氏、面白い取り合わせの著者なので興味を持ちました。
“インテリジェンス”という視点から、近年の日本を取り巻く多種多様な外交問題をテーマにしたお二人の会話が進みます。
数多くの興味深いやりとりがあったのですが、まずは身近な話題として「通訳」について。
私たち素人は、外交官どおしの交渉は英語で進められていると思い込んでいたのですが、実際はそうではないようです。
このあたり、昨今の流行とは相反するものですが、実務経験十分なお二人からのコメントならではのリアリティと説得力がありますね。
もうひとつ、世界に大衝撃を与えた情報漏洩事件であるスノーデン事件に関連したお二人のやり取りです。
スノーデンは、自らの動機において対象としていた世界とは全く別次元の空間にも途方もなく大きな衝撃を与えてしまったようです。
スノーデン事件については、最近、それに関する本(「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」)を読んだので、その内容を踏まえてお二人の話を読むと、また新たな気づきがありました。
さて本書を読んでの感想ですが、流石に“インテリジェンス”の専門家の視点はとても刺激的で興味深いものでした。
その人のもつ知識や経験値の多寡で、ある事象が示すメッセージを読み解く深さが天と地ほど異なってくるようです。他方、「安倍首相は『美しき誤解』で得をした」との指摘にもあるように、相手方の勝手な思い込みにより当事者が意図しない解釈がなされるということも現実には存在しています。
コミュニケーションは相手の存在が前提であり、相手がどう解釈したかが「現実としての真の姿」である以上、最後は「他責」となります。
そういう危うさの中で、いかにして誤解なきよう真意を明らかにし合う関係性を築けるか、“インテリジェンス”はその有益な一手段でもあるのでしょう。
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