シラユキ

日々を丁寧に穏やかに。エッセイとショートストーリーと真夜中の弱音

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  • 双極を生きる

    「自分が自分自身の主治医」になる。双極性障害について学んだこと。

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双極性障害と診断されたら

1.道しるべ 自分が双極の診断を受けた時、どうしていいかわからなかった。 ショックだったし、病気のことをあまりにも知らなさ過ぎた。 当事者会に参加するようになって…

シラユキ
4年前
129

しらふになれない

また穴が開いちまった 必死に塞ごうと手を伸ばす 掴むのは酒か博打か女か さあ、刺激で麻痺させてくれ “しらふ”の状態に耐えられないのさ ◆ 先生は避けろと言うけど…

シラユキ
5日前
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誰かに守って欲しいと思うのは贅沢な願いなのだろうか

シラユキ
9日前
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疲れているのに眠れない、眠りたくない

シラユキ
9日前
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恋人繋ぎ

ビルの谷間に淡く三日月が浮かんでいた。 肌寒い夜だった。 暗い路地で冷えた手を彼の頬にそっと押し当てると、温かい指に絡め取られた。 月が綺麗ですねと言うので微笑…

シラユキ
3週間前
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考え事ばかりして何も手につかない

シラユキ
3週間前
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最小単位が「ふたり」だったらいいのに

シラユキ
1か月前

偏見の眼鏡、想像力の翼——世界双極性障害デーに寄せて

【世界双極性障害デーとは】 “双極性障害に対する理解を深め、社会的スティグマ(社会的に立場の弱い人々に対する差別や偏見)をなくすことを目的とされており、双極性障…

シラユキ
1か月前
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誰かと生きていく準備が、ちゃんと出来ているだろうか。

シラユキ
1か月前
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レッスン

ブレーキの壊れた車に乗っている 脳は衝動を抑えられない 何度衝突しても 理性は大破した体の前で立ち尽くす 沈みゆく船に乗っている バケツでいくら掻き出しても 溢れる…

シラユキ
1か月前
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傷は傷のままに

月曜の朝にエンジンがかからないのは、週末の予定をこなしたものの休息が取れていないから。 今週のタスクが山積みなのを目の当たりにして腰が重くなる。 午前中に用事を…

シラユキ
1か月前
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時々、記憶喪失になればいいのにと思ってしまう。思い出したくないことばかり。失敗しかして来なかった。何よりひとりぼっちで。もう立てないと弱音を吐きたくなる。人にはなぜ仮面が必要なのだろう。子どもみたいに温かい胸で泣きじゃくりたい。

シラユキ
2か月前
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ちょうど下弦の月。夜ふかししないと会えない月。顔を伏せるようにして沈んでゆく。月と地球は元々ひとつだったという話が好き。いつまでも追いかけっこしているみたい。いつか水平線にのぼる月を見てみたい。Fly me to the moon.

シラユキ
2か月前
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キャッチャーミットを構える

幼い頃、両親との関係が私の心に風穴を開けた。 父が突然いなくなったこと、母がアルコールの問題を抱えていたこと。 それを自分のせいだと思い込んでいた。 人には二面…

シラユキ
2か月前
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何していいかわからない夜がある

シラユキ
2か月前

スローなブギにしてくれ

♠️ カウンターでロックグラスを傾けると氷が音を立てて耳を撫でた。 今夜は満月だとお前が言った意味を考えている。 このくらいじゃ酔わないはずなのに頭がクラクラし…

シラユキ
2か月前
1
双極性障害と診断されたら

双極性障害と診断されたら

1.道しるべ

自分が双極の診断を受けた時、どうしていいかわからなかった。

ショックだったし、病気のことをあまりにも知らなさ過ぎた。

当事者会に参加するようになって、同じ思いをしている人にたびたび出会う。

若い頃、子宮内膜症と言われて戸惑った。診察室でパンフレットを渡され、帰宅して何度も目を通した。

当時はインターネットなんて普及していなかったから、情報を集めるのが大変だった。

今は簡単

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しらふになれない

しらふになれない

また穴が開いちまった
必死に塞ごうと手を伸ばす

掴むのは酒か博打か女か
さあ、刺激で麻痺させてくれ

“しらふ”の状態に耐えられないのさ



先生は避けろと言うけど
つい覗き込んでしまうの

穴から手がにゅっと伸びて
引き摺り込まれそうになる

這い出せない場所にふたりぼっち

誰かに守って欲しいと思うのは贅沢な願いなのだろうか

疲れているのに眠れない、眠りたくない

恋人繋ぎ

恋人繋ぎ

ビルの谷間に淡く三日月が浮かんでいた。

肌寒い夜だった。

暗い路地で冷えた手を彼の頬にそっと押し当てると、温かい指に絡め取られた。

月が綺麗ですねと言うので微笑んだら、死んでもいいわと彼が続けた。

そっちの方が好き!と私が興奮すると、顔を見合わせて笑った。

月を見上げたら漱石か二葉亭。二人の共通言語が増えていく。心を開いていく。

駅に着くと私の体は人混みに吸い込まれた。改札をくぐり何と

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考え事ばかりして何も手につかない

最小単位が「ふたり」だったらいいのに

偏見の眼鏡、想像力の翼——世界双極性障害デーに寄せて

偏見の眼鏡、想像力の翼——世界双極性障害デーに寄せて

【世界双極性障害デーとは】

“双極性障害に対する理解を深め、社会的スティグマ(社会的に立場の弱い人々に対する差別や偏見)をなくすことを目的とされており、双極性障害を患っていたとされるファン・ゴッホの誕生日が3月30日だったことにちなんで制定されました”



そもそも偏見とはどういう心の働きでしょう。「好意的ではない先入観」と言い換えることが出来ないでしょうか?

「障害※」と聞くと、いわゆる

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誰かと生きていく準備が、ちゃんと出来ているだろうか。

レッスン

レッスン

ブレーキの壊れた車に乗っている
脳は衝動を抑えられない
何度衝突しても
理性は大破した体の前で立ち尽くす

沈みゆく船に乗っている
バケツでいくら掻き出しても
溢れる水に溺れかける
足のつかない場所で泳げやしないのに

孤独を誰かと分かち合えるはずもない
眠れない夜に出会う眠れない誰かの
力なく放つ蛍のような光は
白んでゆく朝のあわいに溶けてしまう

ストックのポカリスエットを開けた
熱があるみた

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傷は傷のままに

傷は傷のままに

月曜の朝にエンジンがかからないのは、週末の予定をこなしたものの休息が取れていないから。

今週のタスクが山積みなのを目の当たりにして腰が重くなる。

午前中に用事を済ませようと思ったら、最初の予定が早く終わり二軒目のお店が開いていない。

朝食がまだなのでいつものカフェでクロックムッシュと紅茶のモーニングを注文した。

ガラガラかと思いきや店内は混雑している。やさしいBGMと喫煙室から漂う煙と至近

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時々、記憶喪失になればいいのにと思ってしまう。思い出したくないことばかり。失敗しかして来なかった。何よりひとりぼっちで。もう立てないと弱音を吐きたくなる。人にはなぜ仮面が必要なのだろう。子どもみたいに温かい胸で泣きじゃくりたい。

ちょうど下弦の月。夜ふかししないと会えない月。顔を伏せるようにして沈んでゆく。月と地球は元々ひとつだったという話が好き。いつまでも追いかけっこしているみたい。いつか水平線にのぼる月を見てみたい。Fly me to the moon.

キャッチャーミットを構える

キャッチャーミットを構える

幼い頃、両親との関係が私の心に風穴を開けた。

父が突然いなくなったこと、母がアルコールの問題を抱えていたこと。

それを自分のせいだと思い込んでいた。

人には二面性があるということを子どものうちに理解出来るはずもない。

だから見捨てられるのがこわくていい子でいようとした。

大人になるとその穴を何かで埋めようとして承認欲求をこじらせた。

今もそれが消えたわけではない。たださみしさを「認識す

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何していいかわからない夜がある

スローなブギにしてくれ

スローなブギにしてくれ

♠️

カウンターでロックグラスを傾けると氷が音を立てて耳を撫でた。

今夜は満月だとお前が言った意味を考えている。

このくらいじゃ酔わないはずなのに頭がクラクラした。

なあ、終電なんか気にするなよ。

🖤

じゃあ一杯だけと言ってカシスソーダを頼んだ。

あなたの声を聞いていると体がフワフワする。

駆け引きなんて出来ないの。

距離を縮めるにはどうしたらいい?

♠️

シーツの冷たさか

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