チン○ンは、生えてくるか?などの性的諸問題
チン○ンが生えてくる可能性はないのか、期待しながらも、きっと無理だとどこかで分かっていた。
美輪明宏さんと、仮面ライダーと
一緒に住んでいた祖父母が、テレビに出ている美輪明宏を見て、この人は昔男だったんだと言った。チン○ンはどうなったのか聞いたら、いつの間にかなくなったんだと言った。
でも、あるものが無くなることがあっても、無いものが生えてくるとは思えなかった。
だから、改造人間の仮面ライダーは希望の星だった。父とプロレスごっこをする時は、改造人間にしてくれと頼んだ。父はそれっぽいしぐさをしてくれたけれど、物足りなかった。
チン○ン盗まれた、というウソをついた
プールの時間に着替えるとき、Yくんが言った。お前のチン○ンはどうしたんだ、と。仕方なく、父に取られちゃったんだと答えた。
父に、と言ったのは別に深い意味があったわけじゃない。ただ、大人の男なら、それくらいの力がありそうだったから言っただけだった。
Yくんは、運動会だかいつだかのとき、父に向かって「お前が○○(父の名前)か」と言ったそうだ。きっと、チン○ンを盗んだ真犯人だと言いたかったんだろう。
恐怖の絵本
保育園には絵本が置いてあって、その中に「赤ちゃんはどこからくるの的な」絵本があった。
絵本はお腹の中の赤ちゃんの成長を描いていたけれど、それが女の人の腹に丸く穴を開けた図で描いてあったから、子どもが生まれる時はお腹が丸く開くのだと思えた。
痛すぎるだろうに、平然とした顔をしている女の人の顔に恐怖を覚えた。
自分が女である以上、もし子どもを産むとなったらこうなるのかと暗澹たる思いだった。だから、二度とその絵本を開かなかった。
でも、未だに覚えている。はっきり言ってトラウマだ。
時間よとまれ、未来なんてこなくていい
中学生になったら、スカートをはかないといけなくなりそうだし、結婚したら子どもを生むことになりそうだし、その上死ぬのも怖かった。
とにかく将来が怖くて仕方なくなることがよくあった。時間が止まってしまえばいい、子どものままでいいと思った。
単なる変人だと思ってた。
トランスジェンダーという名前が付いた。
腑に落ちた。
でも、未来はやってきた。40歳を過ぎたある日、とある人が言った。「いつからトランスジェンダーって気づいたの?」と。鶴の一声(?)だった。
正直驚いた。
好きになるのは男の子だった。保育園のころから、大きくなったらMくんと結婚するなどと言ったりもしていた。普通に見れば、ませたガキなのかもしれないけれど、自分は女の子であるのが嫌なのに男の子が好きになるっていうこの不思議な感覚が、消化できなかった。
現に男性と結婚している。その上2回目、20代には中絶の経験もある。
「トランスジェンダー」をググった。今まで、自分という人間は単なる変人だと思っていたから、こういう症状というかこういう状態の人は他にもいて、なんと名前まで付いていることに、二度驚いた。
「性自認(Gender Identity)」と「性的指向(Sexual Orientation)」とが、分けて考えられていること、そのことこそが、あのなんとも落ち着かない感覚をすっと溶かして蒸発させた。憑きものが落ちがような気がした。
自分を自分に取り戻した自由な気持ちは、なにものにもかえがたいんだよ
もうすっかり生物学的性(Sex)で生きてきてしまった時間が長くて、本当にトランスジェンダーなのかどうかも定かではないけれど、それでも確実に世界が違って見えた。40年以上自分を覆っていた霧が晴れたように。
トランスジェンダーだと知ったからといって、何か期待するわけではなかった。自由な気持ちになれる。腑に落ちた感じが、とてもとても、ありがたいと感じた。
・・・でも、それで話は終わらなかったんだ。
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