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みんな「借りてきた猫」だった。

今日は語学学校の初日だった。
今までオンラインでいくつかドイツ語のレッスンを受けてきたけれど、学校に行って授業を受けるというのは初めてだ。

以前体調を崩してレベルチェックだけして通うことができなかった時のクラス分けは「A2.1」という、いうなれば入門レベルを卒業して初級レベルに入るあたりのクラスに分けられていた。なので、今回もきっとそのクラスだろうと思いっていたのだけれど、今月はA2.1クラスが開講せず。
アシスタントの方と相談した結果、A1というアルファベットの発音から始まる入門レベルを受けることにした。


A1はすでにオンラインレッスンも受けていたし、A2.1クラスに入ると思っていた私は、この1ヶ月くらい週2で先生についてA1の復習までしていた。
開講直前に言われた事情に正直がっかりしたし、アシスタントの方には「せっかくだからA2.2クラスに入らない?」と言われのだけれど、私は断ってしまった。
下手にスキップして、あとで苦しむのが目に見えているからだ。


というのも、今までも焦って先へ先へと進もうとした結果、基礎がしっかりできていないために、中級あたりで行き詰まるという経験を英語でもそのほか習い事や仕事でも経験してきた。
高校に入った途端に英語の授業がわからなくなったのも、中学英語が身についていないということにほかならない。


重い腰さえ上げてしまえば、大抵の習い事や学習の序盤は簡単だしわかりやすい。そのせいで舐めてかかってしまい、序盤を雑に身に着けた結果、あとで苦労するのが、私のよくある失敗パターンだ。
そして周りよりまったくできない自分に焦り、焦ることに疲れ、結局それを勉強すること自体が嫌いになってしまう。

いいかげんそのループから抜け出したいという気持ちもあって、基礎を固めるために0から始めることにした。



語学学校に割と近いところにある噴水。
ちなみにお向かいにも同じサイズの噴水がある噴水天国エリアでもある。

初めての語学学校への通学。
校舎に入ってすぐのところにアシスタントの方が立っていて、クラスルームの場所を案内してもらう。私が使う教室は、2階の奥にあるクラスだった。

学校独特の木材タイルとビニール床が混在した廊下を歩きながら、自分が割り当てられた教室に向かっていく。
語学学校は結構年齢にばらつきがあると聞いていたけれど、アラフォーの私はきっと年齢としては上の方に違いない。
英語もまともに話せない人間が、クラスメイトと話すことはできるのだろうか。先生の言うことがわかるだろうか。何度か勉強している場所とはいえ、質問のされ方次第ではまったく言われていることがわからないというのは、日々暮らしていてもよくあることだ。

そんなドキドキを抱えながら教室に入るとすでに女性が2人席についていた。2人とバッチリ目が合ってしまったので、とりあえず「Hallo!」と挨拶をしてみる。「Hallo!」と返事が返ってきた。しかしどこ出身かも分からないし、日本語が通じる可能性は0に近いし、話しようが無い私はとりあえず笑顔のまま席に着く。我ながら典型的な日本人の動きだと思った。



空気はとんでもなく重い。
気にし過ぎなのかと思っていたけれど、そのあと15分ほどで11人にまでクラスメイトが増えたのに、誰も話すことなくしんとしていた。
ただただ、苦しいほど空気が重かった。


教室に入る時、クラスを見回してなんとなく微笑んだり挨拶こそするけれど、その後は皆なんとなくそれぞれとの距離を意識しながら、席を選んで座っていく。
そしてノートと筆記用具を引っ張り出すと、あっという間にスマホの画面に視線を落とした。



最初の数人を見ていた時は「なんか日本人みたいだな」と思った。
自動車免許の取得や更新のときの講話や、何かのセミナーに参加したときなどによく見た光景に似ていたからだ。

なんとなくすでにいる人との距離と、登壇者との距離を意識しながら座る場所を決めて、なんとなく準備が整ったらスマートフォンに視線を落とす。時々友人を連れ立って来ている人が話すことはあっても、ほとんどの人が黙っていて、でもリラックスすることなくどこか張り詰めた雰囲気を漂わせながらスマホに向かっている。まさにそんな感じだった。


でもここは日本ではないし、日本人はほとんどいない。
だから、この光景は「日本人みたい」なものではないはずだ。

状況から考えると、
「知らない場所での時間の過ごし方が、世界レベルで似ている」
と考えたほう良さそうだ。


今のクラスの出身国一覧。
かなり多国籍なのと、同じ日本人がいる奇跡。

私のいるクラスは総勢11人で、出身国もバラバラ。
年齢ははっきりとわからないけれど、見た感じではティーンエイジャーから私以上の年齢の方までいて、結構幅があるように見えた。
出身国も世代的な共通性もあまりないことを考えると、世代も国も関係なく似たような動きをしていると言って良さそうだ。


なんとなく海外の学校なら、元気に話しかけてくるムードメーカー的な人や、同じ国出身じゃなくても共通言語がある人同士で話す人が現れたりと、クラスが賑やかになるのかなと勝手に思っていた。

国によってこういう場でのフレンドリーさやマインドのオープンさには結構差がある。だから、さほどオープンマインドではない国・日本出身で英語もままならない私が、そのムードについていけない未来すら想像していたのだ。
なんなら、そんななかで「私は友達を作りに来たんじゃなく、勉強しに来てるんで」みたいな雰囲気を出すことすらも検討していた。



みんなめっちゃ緊張してるじゃん!!
それにドキドキしてるときの佇まい、世界共通じゃん!!



想定とは逆だったけれど、衝撃だった。
こういうときの雰囲気や応対にはもう少し国民性が出るのかと思っていたのだけれど、慣れない場所ではみんなこんな感じになるらしい。
みんな等しく「借りてきた猫」のようだった。

年齢の幅があるというのと、語学学校である以上別の言語で話しかけるのは……みたいなハードルもあって、余計に皆様子を見るだけだったのかもしれない。


今日のところは、友達で一緒に留学してきていると思われるアメリカ出身の2人以外、ほぼ話す人はいなかった。



ちなみに私は、休憩中にインド出身の女性に声を掛けてみたけれど、インドアクセントの英語が1ミリも聞き取れず挫折した。(笑)
ただでさえ英語が話せない人間にとって、慣れない訛りのある英語は致命傷になる。話したいという意志だけは伝わったらしく、優しく相手をしてくれた。

なんとなくわかったことは、彼女が生後3ヶ月の子どものママであることだ。勉強中は旦那さんが見てくれているらしく、「子どもがいて宿題がこなせるかしら…」と心配していた。それ以上の事情は分からなかったけれど、授業が半日とはいえ子どもを産んで3ヶ月で語学学校へ来ているガッツがすごい。言語がままならない人間にできることは少ないけれど、何か協力ができるならしたいくらいだ。


もう1人、トルコ出身の女性も授業の合間に話しかけてくれたけれど、こちらも「3Weeks」すら聞き取れなくて申し訳なくなった。母国語アクセント英語~~!!と思いつつ、自分の英語力を悔やむ。
明日会ったら、もう少しコミュニケーションをとりたい。


今のところ、まったくコミュニケーションになっていないけれど、色々な人を観察できているだけでも楽しいのが正直なところだ。
無理に上のクラスに行っていたらこんな余裕はなかったと思うので、やっぱりこのレベルにしておいてよかったのかもしれない。

宿題も今のところ聞いていたほど多くはないので、時間のあるときに早めに進めて復習の回数を増やしてドイツ語の基礎力をアップしつつ、もう少しクラスメイトとのコミュニケーションが取れるように頑張りたいと思っている。




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