運命という名のもとに第7話

~妄想という短編小説~
第7話 「嫉妬」

ある日の休み時間。いつものように、美咲が居ると思われる保健室に走っていった。ドアを開けた瞬間…飛び込んできた光景に、何故か…心が酷く苦しくなる自分がいた。バカっ。別に、なんでもないようなことじゃん。なのに…。

『もうちょっと…右。そう、そこそこそこ。肩…凝るんだわ。きもちぃ~。昨日、ビール瓶運ばされてさ?たまんねーっつうの。めちゃ…しんどい。』

『いつでも言って?部活で鍛えたこのマッサージ王の指加減、半端ないっしょ!?いつでも、披露するよ。あー、お前じゃなかったら、金もらうのにな。笑』

『はぁ?払え言われても…払わねーし。笑』

自分以外の友だちと楽しそうに笑ってる美咲を見たのは…この時が初めてだった。…美咲が自分の知らない子と仲良くしてても、別に不思議なことではないのに。むしろ、普通じゃん。なのに…、なのに。どうして…こんな苦しいんだろう。そんな想いに…打ちのめされていた。立ち尽くした私のそんな心を他所に…、美咲がこちらに気づいた。

『おぉ!ソラちゃん!待ってたよぉ。居たんだったら、言ってよぉ!』いつもの美咲が、こっちを向いて…笑っていた。

『あ、あ…うん。何となく…。声…かけられなくて。何か、何か、ごめーん!』
目いっぱいの笑顔。必死だった……。

『えっ?えっ?何?ぉお!この女王っぷり?ヤバいよね?ははは。ごめん。ごめん。』

『いや、そんなんじゃなくて…。楽しそうにしてる美咲ちゃんを見てて……、何だか、嬉しくて!』

嘘つき。嘘。そうじゃないくせに。でも、これが精一杯だった。言えないよ。絶対。本当の気持ちなんて。。。

『・・・。ソラ…?こいつさ?』

『ぁん?こいつ呼ばわりすんなよ!』

『妹!笑笑笑』

『・・・えっ?だって…ひとり暮らししてるって』

『あぁ!そう、そうなんだけど…。さすがにこいつ、まだ1年だし、将来有望なスポーツアスリート候補だから。親も情けかけてんじゃない?こいつは、実家に住んでて、まぁ、そう!1歳しか変わらないのに…この扱い。笑   まぁ、こいつは…あたしと違って、部活バカの優等生だからね♡将来が…楽しみな訳なんよ!』

妹?えっ、妹ちゃん?な、何…、バカは私の方だよ。ごめん。ごめん。ごめん。美咲ちゃん…ごめんね。

『び、ビックリしすぎて…語彙力なくしちゃったよ。』
  
美咲は笑って言った。

『こんなんでもさ?可愛い奴でね?ほっとけないんだよね』

『ちょっ!ちょっと、言い過ぎじゃない?お前がダチ出来たとかあまりにも嬉しそうに言うから、どんな奴かと拝みにきたのに!なんだよ!いい奴じゃん!笑』

『えっ?!あ、いや、そんな…こと、ない、ないです!』

『ウケるーーーっ!!』

ふたりの重なる声が、私を見ながら…でも、それでも…優しくて、ありがとうって思った。私…、何を考えてたんだろう?勝手に思い込んで…勝手に凹んで…勝手に嬉しくなって。

いつか…この、幸せが消えてしまうんじゃないか?

ふと…風のように吹き抜けていく。切なくも…哀しい現実。いつまでも…。そう、思いたくても、邪魔する闇が…けして、離してはくれなかった。

誰にも言っていない。私の闇。けして…、消えることはないのだけれど、それでも、いつか…消してくれるかもしれない、と。微かな…希望を抱いてしまう。これもまた、勝手な願い。それでも…、掴みたかった。

キミが…差し伸べてくれた。その手を…。

まだ本当は何もしらないでいる。自分が思っているよりも何も知らない。
"美咲"のこともまだ…知ってはいないのに、込み上げてゆくこの…自分のことばかりをわかってくれるかもしれないという期待。

こんなの…自分勝手すぎるよね、、、

そんな複雑な気持ちが交差しながら…私はそんなさなかでさえ願っていた。

──わかってくれるかもしれない

と、そんな淡い期待と不安を抑えつつ、穏やかな二人を見つめていた。

詩を書いたり、色紙に直筆メッセージ書いたり、メッセージカードを作ったりすることが好きです♡ついつい、音楽の歌詞の意味について、黙々と考え込んで(笑)自分の世界に入り込んでしまうけど、そんな一時も大切な自分時間です。