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もしも自分の娘が障碍児をみて「怖い、こうなるのは嫌だ。」と言ったら?

cakesの有料会員になってもう数年たつのだけれど、入れ替わり立ち代わりの連載の中でも楽しみにしているものがいくつかある。

その中の一つが写真家 幡野さんの連載だ。同年代であり、近い年齢のこどもを持つ父親。そして、僕が父を失った白血病と同じく血液ガンである多発性骨髄腫を患われている。

そんな幡野さんの写真もだけれど文章の切れ味も鋭くて、そして質問の選球眼も毎回唸らされてしまう。今回のは特に色々なことを考えてしまった。

細かい顛末は上記を見て欲しい。たぶん、まだ無料で見られる。いずれは有料に切り替わるだろうけれど、有料でも読む価値はあるだろう。

要するに、障害のあるこどもたちが参加するイベントでボランティアをしていたときに、別のこどもが障害児をみて「なんでこんな風になってるの?わたしはこんな風になるのは怖いし、こうなるのは嫌だ!」と言ってきた。

そのとき、あなたなら何と回答するだろうか?

それが自分の娘や息子だったら?

幼児ならではの純粋さと建前なしの120%本音に対して、なんと答えるのがいいのだろうか?


障害者と触れ合ったことありますか?

さて、僕の場合の回答をする前に一つ質問がある。あなたは、日常的に障害者と触れ合う機会を持っているだろうか?

あると答えるのは親族や兄弟に障害者がいる場合や、福祉系のお仕事をされている場合、職場の障害者雇用の方が同じ部署で身近にいる場合ぐらいか。

最近だと障害者雇用促進法の改正があり、民間企業の場合は従業員比率で2.3%の障害者雇用が義務付けられた。段階的に施行されるので現在は2.2%で、2021年4月以降が2.3%。100人の会社なら3人は障害者を雇うのが義務だぞ、という法律だ。

ちなみにこれは従業員が45.5人以上の民間企業から適用されるので、小規模事業なら適用されない。まぁ、この法律も福祉の現場との絡みなど色々と問題を抱えているのだけれどそれは別の機会に話そう。

何が言いたいかというと、日常的に触れ合ったことのない場合、障害者はステレオタイプのイメージだけで見ている可能性が高いかもよ?ということだ。


フラットな人間とスパイクな人間

実は僕はNPO法人SLOWLABELというアートの力でダイバーシティを推進する活動をするNPOの立ち上げメンバーだ。ダイバーシティ、つまりは性別や人種や障害の有無などの違いをみんなで認め合い共創する社会の実現を目指している。

で、もっとくだけていうと障害者も健常者も関係なくクリエーターとして集まったパフォーマンス集団を立ち上げたり、いろいろな福祉施設さんとデザイナーやアーティストがコラボして新しいもの作りをしたりしている。

そうした活動で障害者施設さんへ何度も行く中で、障害者と呼ばれる彼らは一部の能力が突出しているだけなのではないか?と思い始めた。

たとえば、1日中すさまじい集中力で編み物をする女性。精度もスピードも尋常ではなく、さまざまな色のついた糸を独創的に使い分ける。

とある男性はあらゆる数字を記憶しており、日付をいえば一瞬で曜日が出てくる。僕のことは1983年3月7日 月曜日生まれ 魚座でA型のヤマシタさん、と覚えてくれた。たった1回会っただけで、半年後に会った時も瞬時に言われたので驚いた。

上記は僕が会場構成を担当したときのSLOWLABELのパフォーマンス動画。ダイバーシティなパフォーマンス集団だが、プロも公募で集まったアマチュアも混成だ。メンバーは車椅子のパフォーマーからサーカス団のプロのパフォーマーまでいる。

特に車椅子のダンサーであるかんばらけんたさんの身体能力と表現の幅はすさまじいものがある。僕は彼のパフォーマンスを初めて見たとき、圧倒されて鳥肌が立った。

こうして色々と見ていると、健常者の能力をフラットとしたら、彼ら障害者と呼ばれる人たちの能力はスパイク状なだけだと思う。


また、真っ暗闇を体験するダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントの時、アテンドしてくれた視覚障害者さんは暗闇の中を自在に動き回って誘導してくれた。彼らはイルカのように音の反響で人間がいるかどうかわかるらしい。

僕が声を出せばもちろん場所は伝わるが、彼が声を出して反響のない場所には人がいる気配を感じるらしい。人間の体はほぼ水分なので音が反射しないんだそうだ。

これは障害なのか?環境が違ければ、逆に特殊能力なんじゃないのか?真っ暗闇に怯えて足が全然進まない僕を尻目に、暗闇の中でおそるおそる腰掛けた先で僕の手を握って紙コップにドリンクを注いで手渡してくれた。光を失った彼には、失ったからこそ得た光があるのだ。


かつて世界が奴隷制度などで人種差別をしていたことと、障害者をそっと排除して暮らそうとする態度には、見たことのないものを異質として扱う態度に似たものを感じる。

僕はこれの原因は、端的に上記のような障害者のスパイクな特性を知らないことや、独自のコミュニケーションへの不慣れさが要因だと思っている。


もしも娘に「怖い、こうなるのは嫌だ。」と言われたら?

冒頭に戻ろう。僕がもしも、自分の5歳の娘をSLOWLABELの活動に連れて行ったときに「怖い、こうなるのは嫌だ。」と言われたらどうするか?

今の僕ならこう答える。

「そっか、そう思うんだね。お父さんもそう思っちゃってた時があったよ。」

「でもね、それはきっとよく知らないからかもしれないよ?よくわからないもの、見たことのないもの、いつもと違うものってちょっと怖かったり変だなって思ったりしちゃわない?」

「だから、もしも怖いと思ったら、本当に怖いのかどうか、ちゃんと見てみた方がいいと思うんだ。」

「車椅子に乗っていて足が動かなくてかわいそうと思うかもしれないけれど、でも足が動かないけどすごく腕が丈夫で力持ちだったりする。彼らからすれば、変なのは娘ちゃんの方かもしれない。」

「お父さんと娘ちゃんも違うところはたくさんあるでしょ?娘ちゃんにはヒゲもないし、背の高さもぜんぜん違うし、肌の色だって違う。ちょっとずつみんな違うんだよね。」

「みんな違うから、助け合うと色々なことができるんだと思う。お父さんはお母さんより力持ちだけど、洗濯物を干すのは下手だし、おっぱいも出ない。」

「みんな違うから、みんなでやればできることがたくさんある。どんなところが違うのかをみんなで教えあって、色々できた方が楽しくなるんじゃないかなってお父さんは思ってるんだ。」

みんなそれぞれ違うから、違うところをお互いに教えあって認め合って、色々なことができる世の中が楽しいと思う。

嫌だなって思ったり、怖いなって思ったら、その時はなんでそう思うの?と自分自身に問いかけてみて欲しい。

そして、嫌悪感や恐怖感を感じたものに近づいてみると、実はぜんぜん嫌でも怖くもないことに気づいたりもする。

もしかしたらすごい発見があるかもしれない可能性にフタをしてしまうのは、なんだかもったいないんじゃない?

僕はSLOWLABELの活動を通じて、文字通りのみんなで作る新しくて楽しい未来を夢想している。


ーーーーーお知らせーーーーー

僕も参加しているNPO法人スローレーベルが公開で活動報告会をやります!毎年クローズドでやってたので公開するのは初の試みです。

これはいわゆる年に1度の株主総会のNPO版みたいなやつです。SLOWLABELの理事や委員が勢揃いします。もちろん僕もいるので、ご興味ある方はぜひどうぞ!

ちなみに代表の栗栖さんは僕が尊敬し信頼する最高のディレクターで、彼女は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式4式典総合プランニングチームメンバーに選ばれています。

SLOWLABEL2019活動報告会

日時:2019年6月3日(月曜日) 17:00〜18:15
会場:ちよだプラットフォームスクウェア 東京都千代田区神田錦町3丁目21
費用:無料

→  お申し込みはこちらかどうぞ ←


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