ものは考えよう-技術屋だったら、SF映画で夢見たことを実現してみたいと思うはず

左の写真は1996年にNTT研究所が試作した腕時計電話だ。携帯電話の一つの方式だったPHS(Personal Handy-phone System)を使っていたので「腕P」という愛称になった。1998年の長野オリンピックでも使ってもらった。その頃から毎日のように腕Pをはめて仕事をしていたのだけど、会う人が珍しげに見てくれ、最後の決め台詞は「試作品だから1台500万円だよ!」というとみんな目を丸くした。

子供のころによく見ていた「スーパージェッター」というSFアニメで、主人公が「流星号、応答せよ、流星号」と腕時計型の無線機に呼びかけると、空飛ぶクルマの流星号がやってくる。いつかこんな腕時計を作ってみたいと、子供のころに夢見てたけど、幸運なことに30年後の大人になって実現できた。

ただ、試作品を持って米国をはじめ製造してくれる会社を探したけど、なかなか見つからず、実用化までかなり時間がかかってしまった。2003年にドコモのIさんがリーダーとなり、セイコーインスツルメントが製造会社になってWRISTOMO(リストモ)という商品名で売り出した。37000円だった。グーグルやアップルの発売よりもかなり前に発売したインターネットにつながる世界初の腕時計電話だった。でも、技術の夢は実現したけど、残念ながらあまり売れなかった。

「スーパージェッター」と同じころ、宇宙を舞台にした米国のテレビドラマ「宇宙家族ロビンソン」が放映されていた。そこにフライデーというロボットが登場する。フライデーの透明頭の中で、クルクルと何かが回っていた。そこに今でいうAI(人工知能)を子供心に感じていた。フライデーを短足にしたような「スターウォーズ」のR2-D2は雇い主に従順でとても賢いAIだ。技術屋を卒業しつつある今でも、個人的にR2-D2のようなAIを作りたいと思っている。

宇宙SFといえば「スタートレック」は外せない。中でも好きなのが「転送(beam up)」である。宇宙船(この写真の右にあるのが宇宙船 U.S.S.エンタープライズ。2005年にラスベガスのヒルトンホテルで撮影)の転送装置に入ると、人自身が物理的に移動することなく、人体は何らかの符号に変換され転送ビームに乗せられて瞬時に地上に送られる。地上にいる人もその位置をセンスできれば宇宙船に転送できる。そこで使われているのが、この写真の左にある無線機だ。腕時計型ではないが、カーク船長が無線機に向って「スコッティ、転送してくれ」というと、船長は無事宇宙船に帰還できるのだ。ようやく車の自動運転ができるようになったけど、空飛ぶクルマや転送は技術屋の夢だと思う。

高校生のとき渋谷で見た「2001年宇宙の旅」にガツンと頭を殴られたようなショックを受けたことをよく覚えている。意味はさっぱり分からなかったけど、神秘なる宇宙空間の映像美に感動したのだ。モノリスとかスター・チャイルドとか、大人になってから少しずつ意味が分かってきたが、それよりもHAL9000が興味の対象になった。チェスで人を負かしたり唇を読んだりするAIの光は良しとしても、任務に忠実とはいえコンピュータが人を騙したり殺したりするAIの陰をどのように考えるのか、ということだ。AIが騒がれている現代ではあるが、この映画は50年も前にAIの問題を提示している。悪夢にならないようにするのも技術屋の役目かもしれない。

「2001年宇宙の旅」で登場したテレビ電話は、電話会社ではなくインターネットで簡単にできるようになった。しかし予測できなかったのはハードウェアだ。HALを停止させるためにボーマン船長が潜り込んだHALの心臓部の広さには驚く。1968年といえば大型計算機のIBM360の頃だ。大きな部屋にコンソール、コアメモリ、磁気テープ、磁気ドラム、プリンター、カードリーダ、電源などが所狭しと並んでいた。磁気ドラムの容量は数Mバイト。そんな頃の映画なので無理もないと思う。50年後には100Gバイトのコンピュータをポケットに入れて持ち歩いているとは誰も予想できなかった。

レイ・カーツワイルの著書「シンギュラリティは近い」では、2045年にAIが人間よりも賢くなるとしている。その根拠はハードウェアの指数的な進歩に負うところが大きい。予測といえば、経営でも経済でもよくやるようにリニア(線形)だ。これまでの傾向をそのまま延長して考える。しかし、映画「2001年宇宙の旅」と現実の指数的な進歩の違いは一目瞭然だ。だからカーツワイルの言うシンギュラリティはハードウェアとしてきっと実現すると思う。ただ、ソフトウェアとしてのAIについては別だ。HAL9000が宇宙船の乗員から信用されなかったように、人類の仲間だとAIが認知される意識が、人類のなかで指数的に醸成しないからだ。

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小川克彦

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