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人生は山をも背景とし、山の民は山に焦がれ続ける/『帰れない山』(フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、 シャルロッテ・ファンデルメールシュ)
昨年、パオロ・コニェッティ著「帰れない山」を、浅間山の麓の北軽井沢で暮らす人から借りた。世界的なベストセラーになったというイタリアのその小説が彼女にとってとても大切なものだということは借りた時点でわかったが、読み進めるごとに、町で生まれ山に焦がれたピエトロと、山に生まれ山で生ききったブルーノの子ども時代から別れに至るまでの物語に魅了された。磨かれた文章は森の香りや川の瑞々しさ、人知及ばぬ山の慈悲無慈悲を書いており、個人的にはそれが過去噴火を繰り返し活火山との暮らしが日常となっ